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死に戻りの公爵令嬢は、三度目の人生もひた走る!  作者: とり
第一章 武者修行

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3.筋肉鍛錬と過去の話

公爵邸に戻り、自室の飾り棚にポイっと賢者の本を置いた。


衝撃の死に戻りから、まだたったの数日。王宮で一時的に楽しくは過ごしても、所詮はカラ元気で一人になると鬱々としてしまう。


生き残りに全身全霊で取り組んでも、テリーや護衛騎士達を巻き込んでの死は避けられなかった。不甲斐ないわで奥歯を噛み締めながら絶賛大挫折中である。


「ふぅ‥‥。人はどん底からどうやって這い上がるのかしら?」


参考になる本はないかと本棚に目をやる。背表紙を指で辿っていると気になる題名を見つけたので、取り出してパラパラと目を通す。


”大挫折、燃え尽き症候群かも” 症状が無気力、一人で居たい、肩こり、とある。


「まあ、肩こり。あるような、ないような? でも他は当てはまるわ。何も考えたくないし、一人で居たい。ふんふん、ここに十分な休息とストレス解消が大事ってあるわね」


左右へうろうろ歩きながら考えを巡らす。


「そうね‥‥ストレス解消‥‥ストレス解消といえば、やっぱり筋肉鍛錬よ!」



二度目の人生では己の身は己で守ると涙ぐましい柔軟と筋肉鍛錬。それから護身術、馬術、体術、剣術をも修得した。


そう、その時に身をもって知ったのである。筋肉鍛錬はストレス発散にもってこい。それに達成感と筋肉鍛錬仲間との熱い語らい。いい事尽くめである。


早速、飾り棚にある複数の魔石から丁度良い重量のもの選び、筋肉鍛錬に励む事にした。


付け加えて、テリーの協力のもとに、早朝には目立たないように一走りする。もちろん淑女たる者、走り込みは御法度である。


外に出ると護衛騎士に見つかる恐れがあるので、公爵邸内の長廊下を代用することにした。


目立たないように裾の長い暗黒色のドレスを着て、淑女礼儀作法の綺麗な姿勢と手の位置を保ちながら、足だけ高速回転での走り込みである。さらに階段の上り下りを繰り返す。


何日か過ぎた午後、侍女のテリーが紅茶の用意をしながら肩を揺らして笑いを堪えている。


「どうかしたの?」


「お嬢さま、先程耳にしたのですが、ぶふぅ、早朝に幽霊が出るらしいですよっ」


「まあ、怖いわね」


「なんでも、黒のドレスを着て滑るように屋敷内を歩くそうですっ」


「あら‥‥?」




◇◇◇




ストレス発散に筋肉鍛錬を始めてから、夜は疲れてぐっすりと眠れ、気持ちも落ち着いてきた。筋肉鍛錬さまさまである。


例えるなら竜巻のように荒れていた心が自然と旋風ぐらいになったような気がする。時薬とはよく言ったもので、時とともに癒されていく。


そこで、そろそろ重い腰を上げて気合を入れる事にした。

そう、あれである。前に進むためにも過去と向き合う。



元々の原因、端を発するのは王令による政略結婚なのだ。あの政治的結びつきの為のディフラン公爵家長女リリアナとウィルソン辺境伯家当主ヴィアスとの婚姻。


王都からウィルソン辺境伯領地へと花嫁として向かい、その道すがら何者らに襲撃されて死を迎えた。


二度もである。


また二年後にテリーや護衛騎士達を巻き込んで命を落とす三度目はさすがに勘弁させてもらいたい。


ため息を零しながらも本棚から白紙の手帳を取り出し、書斎椅子に座ってペンを取った。まずは忘れないうちに書き留めることにする。


「さてと、死に戻りの話でも綴りましょうか」



_________________

_______



『 人生一回目


 15歳 初夏に王立高等学院入学 専攻:淑女科二年

 17歳 初夏に王立高等学院卒業 そして、ウィルソン辺境伯領地へと向かうも、

     道すがら何者らに襲撃されて崖から馬車ごとの転落死


学問は既に領地の家庭教師からみっちりと学んでいたので、学院には未来の辺境伯夫人として主に人脈作りの為に通った。


そして17歳の初夏、嫁入りの際には公爵邸からウィルソン辺境伯邸へ馬車5台、護衛騎士に付人50人ほどで向かう。


一月半の旅程の後半、ウィルソン辺境伯領地近くの渓谷で何者らに襲撃された。


耳に残っているのは馬車の外から聞こえる怒鳴り声に叫び声、剣戟の音、そして最後に馬のいななきと渓谷から転落するときの風を切る音 』


_________________



『 人生二回目


 15歳 初夏に王立高等学院入学 専攻:文官科三年

 17歳 晩夏に飛び級で王立高等学院卒業 そして、ウィルソン辺境伯領地へと向かうも、

     道すがら組織だった三、四十人に襲撃されて剣で貫かれ刺殺


己の身は己で守る。柔軟と筋肉鍛錬から始まって、護身術、馬術、体術、剣術も修得。

隠れて冒険者として活動し、魔獣討伐の経験も得る。


敵の糸口に繋がる情報調査から、王都と辺境伯領地を繋ぐ街道の治安調査まで力を入れた。調査から推測はできるが確証まで至らず。


17歳の晩夏、公爵邸からウィルソン辺境伯領地へ少数精鋭隊十名と共に馬で移動中、全身黒ずくめの剣士に剣で射抜かれ刺殺。襲撃者は魔術師含む三、四十人前後と判明 』


_________________



ここまで書いて、一旦筆を置き読み返す。


「一回目は五歳の時に儚くなられたけど、いつも笑顔で幸せに暮らしていたお母様のように、結婚して幸せな家庭を築く事が女性としての幸せだと思っていた人生だったわ。


二回目は襲撃された背後関係を少しでも理解できれば敵を知る糸口になる。死なずに済むのではないかと突き詰めて考えてハゲそうだったわね」



ペンを再び握り、さらさらと走らせる。


「それと、付け加えで祝福ね」


『 一回目の祝福 指輪

  ニ回目の祝福 外套


一回目の祝福は古代文字の羅列が目を引く鈍色の指輪。

文字は古代文字学者の尽力で判明。


この指輪こそが問題の指輪で死に戻りに深く関係があると思われる。


 ”時の力を汝へ授け、世に祝福を” 』


「分からんし、いらんわ!」


書き綴りながら思わず声を上げてしまったのだった。


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