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死に戻りの公爵令嬢は、三度目の人生もひた走る!  作者: とり
第一章 武者修行

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23.武者修行へ行くよ 出立

——そう、それは三日前の話だった。筆頭王宮魔術師団長ロズウェルの執務室での会話だ。



「黒鳥一人、十日程だったけ?」

「ええ、ロズウェルお従兄様。十日ずつ教えを受けて今日、無事に終わりました」


「お疲れ、楽しかったかい?」

「ふふっ、楽しかったし、とても面白かったわ」


それぞれの属性の頂点、クセのある特級王宮魔術師『黒鳥』の部員六名に教えを乞い、毎日が面白く驚きに溢れていた。あの日々を思い出すだけで微笑が込み上げてくる。


「どうやら、あの計画を実行するつもりのようだね」


互いの顔を見合わせて悪戯っ子のような笑みで頷きあった。



その計画とは一年の武者修行である。二大目標の一つ目、襲撃者を蹴散らかして、無事に辺境伯領に辿り着く。強くないと蹴散らかせないので、ここで武者修行の出番だ。


必要な知識、技能、精神力の鍛錬も兼ねて冒険者として北連合国へ向かう。色々とかこつけたが、ただ冒険旅行の続きがしたいのは秘密である。


絵図で見るとノーエル王国の北には二つ国がある。北西がくだんのマルネス帝国、北東が北連合国だ。


その北連合国とは十五の部族が寄り集まった国で自然を敬い共存する生活を送くり、四方を囲む山脈からは良質な鉱石も採掘されている。


歴史上、近隣国がその鉱石目当てに侵略を試みた事もあったが、奇怪な面を被った好戦的な山の戦闘部族らに奇襲攻撃されて返り討ちや、危険な魔獣がいる山脈に巧みに追い込まれて連隊を殲滅させられたこともあったらしい。


熾烈な撃退によって死兵となった兵の血だけが濁流のようになって国へ帰還した、と数国の古書に記されているらしい。『命惜しくば近寄る事勿れ』が今の各国の共通認識である。



「よくもまあ、思い切ったものだよね」


「ふふっ、北連合国にも冒険者ギルドはあるし、テリーとクリスもいるから大丈夫よ」


「まあ、ディフラン公爵家が付けている従者なら只者じゃないことは分かるけど、心配なのは変わらないよ」


「そう心配しないで、ロズウェルお従兄様。王国とは違って魔獣が発生する地脈が少ないんですって。貴重な薬草や鉱石。それに古代遺跡もあるらしいのよ。お土産沢山持って帰るわね」


「分かった。怪我に気をつけて行っておいで。何かあったらすぐ戻ってくるように。あっ、学院が休みの期間は転移で戻って、お父君に顔を見せるのを忘れないようにしなよ」


父オーランドには心配かけたくないので、勉学のために学院寮に入る旨を伝えてある。テリーとクリスはその付き添いである。


「ええ、ロズウェルお従兄様。では黒鳥の送別会後に出立で」

「了解」




◇◇◇




雲が海のようにどこまでも広がっている。


「これが雲海ね!」

「ふぅー、この山脈、強敵ですっ!」


国境から険しい山脈が聳え立っているとは聞いていたが予想以上だった。

断崖絶壁、足を少しでも滑らせれば死んでしまう切り立った崖である。



「「「ぴーぷー ぴぷぴぷ、ぴーぷー ぴぷぴぷ」」」


この数ヶ月、護衛騎士見習いとして公爵家騎士団に扱かれたクリスは、異常音に機敏に反応して、あちらこちらから聞こえる発生源の確認を繰り返している。


このぴーぷーは岩壁の隙間からひょっこり顔を出す灰色のモコモコ動物が鳴らしていて、どうやら危険を感じると鳴き声で仲間に知らせ合うらしい。『なんか来たよ!』と言うところだろうか。


「クリス、あの出っ張った岩の上で休憩しましょうか」

「了解です」



テリーとクリスは魔術の適性はないが、魔力による身体強化には舌を巻く。二人とも感覚、嗅覚、視力強化などの五感も底上げする事ができるのだ。


そう、武者修行の一環として魔術や魔法を一切使わず、共に身体強化だけで登ってきた。標高が上がって、空気は薄いわ、耳がツンとするわ、武者修行とは大変なのである。



どっこらしょ、と岩に腰掛けてひと休憩する。火照った体にひんやりとした涼しい風が通り抜け、見上げるとスコンと抜けるような青空がどこまでも続いている。


天敵のいない山岳地帯の崖で、のんびりと草を喰む栗毛の鹿っぽい動物や、器用に寝そべって日光浴をしているモコモコの小動物を眺めていると心がほんわりと和む。


「手付かずの大自然、最高ですっ!」

「ふふ、動物も可愛いわね」


日常から解き放たれた解放感は格別だ。少し前まで徹夜で北連合国語を学び、げっそりしていたテリーとクリスも表情が明るく生き生きとしている。


夕刻前には今日の目標である崖上まで登り切り、野営の準備も終わらせることができた。テリーお手製の簡易型の布天幕に、クリスが蚤の市で見つけたらしい焚き火台。そして予め用意していた野菜ごろごろスープや葡萄酒が並ぶ。



ここには鹿っぽいのとモコモコしかいない。危険はないと判断して、まずはと三人で温めた葡萄酒でほっと一息つく。


疲れた身体の内側からじんわりぽかぽか温まり、気を抜くとすぐにでも眠ってしまいそうである。現にクリスでさえ眠気でまぶたが重いらしく眼がもう少しで一本の線になりそうだ。


今夜は早めに休むとしよう。その前に今後の予定を相談する。


「この連なる山脈を越えた盆地に北連合国の首都シャーレがあるそうなの。取り敢えず、シャーレを目的地にしてのんびりと向かう予定よ。


二人とも知っての通り、北連合国は他国と貿易や外交も殆どしていないから、情報があまりないのよね。古い書物には少数部族間ではお金のやり取りではなく、物々交換をするとあったわ」


「それで、北連合国で売れそうな物を買ってくるようにおしゃったのですね」


「そうなの。クリスの言う通りで、売れそうなものなら物々交換もしやすいし、必要に応じて売れば良いしね」


「ごほんっ、お嬢さまに渡されたお金で、色とりどりの布とリボン、ベルトや鞄の革製品、大衆酒とつまみを中心に買ってきましたっ! それにクリスが蚤の市で買ったランタンやらもありますっ」


空間収納が付与された肩掛け鞄を指差しながら、テリーがしたり顔で説明してくれた。


「ふふっ、二人に頼んでよかったわ」


自身で用意したのは貴人を想定した贈り物で、装飾細工が美しい髪飾りや首飾り、それに短剣と長剣。念の為に高級菓子や酒も。付け加えて公爵家の名産品もあり、まるで商人である。



「この北連合国では幾つかの掟があって、動物は襲われたり、食べる分以外は狩猟禁止。薬草や山果実の取り尽くしや、許可のない大量の鉱石の持ち帰りも禁止」


「それは公爵家の騎士団長から聞きました。他国から来た冒険者達が掟を守らずに好き勝手をしたせいで、他所者に対して非常に警戒心が強いと」


「それ、聞いたことがありますっ! 掟を破った冒険者集団は一人を残して消されるそうですよ。その残った一人は警告としてフルボッコにしてから、国に帰すそうですっ」


「「‥‥‥っ」」


テリーによると冒険者ギルドでは北連合国への自粛勧告中だそうだ。しかも北連合国の冒険者ギルドは閉鎖されたと言う。


「‥‥や、野菜ごろごろスープ、食べましょう」

「「はい(っ)!」」



その夜は満点の星空を眺めながら、心地良い疲労と共に眠りについた。

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