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死に戻りの公爵令嬢は、三度目の人生もひた走る!  作者: とり
第一章 武者修行

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21.魔術を学ぼう 黒鳥とキノコ

翌朝は元気ハツラツでロズウェルの執務室を訪れた。

人間、気分転換は大事である。


「おはよう、リリアナ。よく休めたようだね。ブライアンが妹と手合わせしたって嬉しそうに言ってたよ」


承諾なしに勝手に挑んで、負けて帰っただけである。でも、そう言われると少しくすぐったいような、照れくさい。次兄ブライアンとの距離が少し縮まったようで顔が緩んでしまう。


ニマニマしているとロズウェルが話題変えにパンッと手を叩いた。

「はいはい。それじゃ、説明するから、そこ座ってね」


そう、今日から学院の単位の代わりに例の特殊部隊『黒鳥』で学ぶことになっている。黒鳥隊員から現代魔術を習う期間は二月だ。


ロズウェルからは、その後は祝福の古代魔法に現代魔術を取り入れたり、自由に研究するように言われている。



「少し説明から始めるよ。知っての通り、私は筆頭王宮魔術師団長、兼任 特殊部隊『黒鳥』の隊長の任についている」


今日のロズウェルはビシッとした団長服で、襟に飾られた筆頭王宮魔術師団長の地位を表す金の記章が眩しい。


「リリアナは特別枠だから組織構成とか端折ってと、公にはなってないけどノーエル王国の王宮魔術師の頂点に三人の老師がいる。それとは別に若手の頂点が『黒鳥』部員達。


紹介するのはその『黒鳥』だよ。それぞれの属性の頂点にいる六人の天才魔術師達。信頼たり得る顔触れだけど、クセ強いんだよね。ホント」


特権として自由がかなり認められていて、召集がない限り、研究したり、冒険者として働いていたり、野菜を育てたりとしているらしい。


何でも最近、隊員内で自主的に取り組んでいるのは杖や手を使わずに目から繰り出す魔術だそう。突然、目から水が噴き出したりするので注意するようにと言われたが、どう注意したら良いのか分からない。


「クセ強くて纏めるの大変なんだよ」


ふぅやれやれ、と心の疲労のような独り言をもらすロズウェルであった。



ふと王宮魔術師団員と黒鳥隊員の実力の差が気になったので聞いてみた。


「そうだね‥‥冒険者ランクで言うと、上級魔術師のA、特級魔術師がS、そして超級魔術師がSS.。それぞれのランクの間には深い隔たりがあるよ。


上級魔術師のAが王宮魔術師団員だね。特級魔術師のSが『黒鳥』で六名。更に上の超級魔術師のSSが私一人だよ」


御伽噺に出てくるもう一つ上を神級というらしい。



「早速だけど、皆に紹介するね。ついておいで」との事で、ロズウェルの後に続き、執務室を出る。向かう先は王宮裏にあるキノコの森だと言う。


伝承によるとキノコが好きな王がキノコ栽培に熱中し過ぎた結果、キノコの森ができたそうだ。


「適度に涼しくて、湿り気があるからキノコにとっては最高の環境だよね、この森」


「うーん、人にとってはどうなのかしら?」


揶揄うように言い、二人で笑いながら歩いていると、驚くことにキノコ型の建物が現れた。円形の二階建。その上にキノコの笠のような丸みが出っぱって三階建てのようにも見える。


「一階がホール兼食堂、二階が会議室、三階がそれぞれの研究室と寝室」


隊員の一人が土魔術を使って冗談で造った建物だが、気に入ってそのままキノコ本部として使用しているそうだ。


「キノコの笠の部分、目が覚めるような紫色に白玉模様がいいよね」

「‥‥‥‥」


まるで、この部隊を表すような‥‥毒キノコである。


玄関から中に入ると、紫色ではなく、清潔感のある白い土壁で少しほっとした。不思議な事に本部内では物音一つしない静けさに包まれている。


ロズウェルが指でパッチンと音を鳴らすと、ガタガタと音がして人が集まるような気配がする。


「さあ、会議室に行こう。すでに集まっていると思う」


二階の会議室には建物の円形に合わせた円形のテーブルに6人が既に座っていた。銘々、私服の上に王宮で支給された黒のローブを羽織っている。


ローブの襟元に階級章と所属を表す羽を大きく広げた黒鳥の記章が輝く。



「はい、注目。こっちが特殊枠のリリアナで皆の指導を受けにきた。因みに全属性で魔力量最大。おまけに僕の従妹だ。色んな意味で手を出したら即死刑ね」


さらっと物騒な言葉が入ったような?


「リリアナ、右からラナ、ロン。二人一組で主に冒険者として動いてもらっていて、冒険者ギルドにも所属している。僕からの指示で調査から魔獣討伐までの担当だ」


—— ラナは火魔術師、赤毛でスレンダー、きりっとした美人さん。二十代半ぐらい。

—— ロンは水魔術師、落ち着いた焦茶の髪と瞳で冒険者らしい風貌。精悍な顔立ちで無精髭の二十代後半。


これから長い付き合いになるかもしれない黒鳥部員をしっかりと頭に叩き込む。



「その隣がヴィ、彼には主に連絡、諜報、他色々ね」


—— ヴィは風魔術師、薄い灰色髪で眼鏡、鋭い視線で少し神経質そうな男性。彼も二十代後半くらい。



「次がルークとナシだ。彼らも二人一組。主に諜報や捕縛に、その、お話? を聞くのが仕事」


—— ルークは闇と光魔術師。十代半ばの美少年で金色の髪にくりくりの目。見た目に反して、苛烈らしい。


—— ナシは無と空間術師。フードを深く被り、顔も性別も分からない。名は名無しからのナシ。 



「最後にポール。彼には特殊な地形と地質の調査と分析、採掘目的の鉱物調査等を担当してもらっているよ」


—— ポールは土魔術師。栗色の髪と瞳。穏やかな十代後半。そこら辺に畑を作るので踏まないように要注意だそうだ。



黒鳥は王宮魔術師団の手に余る案件だけを引き受けるので、基本暇だと言う。


「さて、リリアナ、いや、リリーで行こう。リリーは僕と同じで全属性なので、まずは火属性のラナに付いて意欲的に取り組み学んでもらう。その次は水属性のロン‥‥といった感じで、次々とね」


「はい、よろしくお願いいたします」


そして最後の注意事項として、ロズウェルが数種類のキノコをテーブルに並べた。この森に自生している毒キノコの見分け方についての説明を受ける。


なんでも触れるだけで、顔が倍以上腫れる猛毒キノコや七転八倒キノコもあるそうなのだ。


「ほら、リリーよく見て。似ているけどヒダの色が白色じゃなくて、白黄色だよ」

「こ、これは‥‥とても微妙な違いー‥‥」



黒鳥隊員はロズウェルがキノコの説明をしている様子をぽかんと眺めていた。


王族の先祖返りとも言われる純銀の髪色で少し幼さが残る美女。何とも表現できない神秘的な雰囲気を漂わせ、そして特別枠で王国一である我々に教えを乞うという。


しかもあれよあれよ、と目を白黒させているうちに、色々が決まってしまったのだった。

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