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死に戻りの公爵令嬢は、三度目の人生もひた走る!  作者: とり
第一章 武者修行

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15.そうだ冒険に行こう ウィル2

ツンデレ猫ちゃん先生は、実のところ超スパルタだった。


「ついでに剣も教えてやる」に甘えて、教えてもらう事になり、

剣は四角四面の騎士道剣術で騎士同士しか通用しないと酷評された。


「礼儀、誇り、名誉やらより、ゲロ吐いても生き残れ!」


体を鍛え直すことから始まって、正しい型での千本素振り。ある程度様になると小型魔獣の群れやらに飛び込め、と発破をかけられるのである。



魔術はというと唐突に木の家造りに勤しんでいる。


「現代魔術に古代魔術?‥‥どれも全属性の魔術陣を記憶していて、詠唱もなしか‥‥。もうさあ、理解すんの止めた。そうだな、まずは危険の少ない現代魔術の調整と制御から始めるぞ」


そこで格好よく言うとツリーハウス、木の家造りである。細心の調整と制御の風魔術で木を切り倒し、枝を払い、運ぶ。それから歪みなく同じ厚さに加工して、満遍なく火魔術で乾燥させてと‥‥かなりの重労働だ。


魔術発動の速さも重要だと、四六時中後ろから早くしろと言い続けるウィルとワーワー喧嘩し続けている。数日後には見事とは言えないが、大樹の幹の上に木の家が仕上がった。


木の家は一部屋造り、ただ寝るだけの部屋。でも片面にはテラスがあって、寝そべりながら、絵みたいに美しい風景を眺めることができる。


森の香りに爽やかな風、輝く若葉の美しい春の森に心が洗われるようだ。



ウィルの「別に急ぐ旅でもねーし。ある程度様になるまで付き合ってやる」に甘えて、もうすぐ二月。


この頃は余計な力みもなしに臨機応変に剣を振れるようになった。今日は狼魔獣の群れに飛び込む。


「「「グルグルグル! グワッ!!」」」


飛びかかってくる魔獣の群れを相手に、身を躍らせ、疾風のように駆け巡る。

祝福の外套+祝福の魔術+身体強化の相乗効果恐るべしである。


————ヒュッ!!


最後にボスである魔獣を真っ二つに真っ向斬りで終わらせた。


「よし、身体強化にキレのある剣捌き、上達したな」


「風魔術もよ。もっと褒めてもいいわよ」


「だ、誰が褒めるかよ。まだまだだ、まったくっ」



いつものように軽口を叩くも、明日はデルネス神聖国へ向けて出発する。予定していた冒険旅行の二月、時間切れで旅立ちとなる。楽しかった日々が終わるからだろうか、少し胸がきゅーっと寂しくなった。


「ウィル、今日の夕食はどんと豪華にいきましょう」


「ああ、そうだな。豪華版スープ仕込んどくから、なんか狩って来てくれ」


「了解」


返事をすると同時に何度も通った湖に転移した。


この湖面は陽の光を受けて青く輝く神秘的な湖だ。しかも一度として同じ色になることはなく、今日は瑠璃色。


清浄な空気で包まれていて、魔獣はおらず、動物だけがいる。

さっと弓で二匹のウサギを狩って下処理をする。


最初はえづいて大変だったが、今では慣れたもの。サクッと下処理を終わらせた。

次は魔術で湖に氷を投げ入れて、浮かんできた魚を寄せ集める。


「ほっほっほ—、大量大量」


満足げに魚の下処理をしていると、遠くに魔獣ではなく、ここに来て初めて人の気配を感じた。


(‥‥背後に三人ね。それよりも夕食、夕食)


少し警戒しながら、魚の下処理を続ける。


「ん?」


「まあ、ビックリ! こんなところに女の子ぉ!」


「まさか、迷子か?」


黙々と作業を続けていると後から驚いたような声が上がった。


自分でもこんな辺鄙な所で魚を大量に捌く人は明らかに怪しいと思う。怪しまれないように振り返りって笑顔を向けた。


「こんにちは、迷子ではないですよ」


そこには冒険者の服装をした筋肉むきむきの二十代の男性二人と女性一人がいた。三人はギルドから派遣された冒険者で、定期的に行われる森の調査で奥の奥、つまりここまで辿り着いたそうだ。


「魔獣の分布や個体数調査もしているんだが、この辺は異常に数が少ないな」


「数が少ないというか、いないじゃん」


「ここまで来て、とんだ無駄骨よねぇ」


このトッドと名乗る筋肉むきむきの男性は女言葉を使い、首元に可愛らしい花柄のスカーフを巻いている。


「えっーと、そう、なんですね‥‥」


魔獣がいないのはこの二月、ウィルの指導のもとに狩り尽くしたからだと思う。これ以上は聞かれたくないので慌てて話を逸らす。


「その花柄スカーフ、素敵ですね」


「まあ、ありがと。やぼったい冒険者服着ているんですもの。少し華やかさを添えないとねぇ」


褒められて嬉しそうにしているトッドがおしゃれなスカーフの巻き方を教えてくれた。またかと言う感じで肩をすぼめる他二人との対称が面白い。


ここまで来て無駄骨だったとがっかりしている三人に下処理を終えた魚を分けてあげることにした。


「ここの魚は美味しいですよ。食べて元気を出してくださいね」

「あら〜、ありがと。お礼にこれあげるわ」


手渡された可愛い花柄袋には焼き菓子が入っていた。趣味がお菓子作りだそうだ。


ウィルが待っているので、区切りの良いところで笑顔で別れた。



茜色に染まり始めた夕焼けを眺めながら、ツリーハウスで焼き魚にウィル特製ほろほろうさぎ肉のスープとパンに舌鼓を打つ。


何もかもを一生心に留め置きたいほどの素晴らしい森の日々だった。



そして丑三つ時にむくりっと起き上がる。二人とも瞼を擦り、不機嫌な寝ぼけ声を交わしながら、予め纏めて置いた荷物を手に取る。


さあ、デルネス神聖国へ出発だ。


例によって、ウィルを後から抱えて、予定では朝の明るみが広がる頃に到着だ。


「‥‥いくわよ」

「‥‥ああ」


(『飛行』)



あくびをかみ殺しながらの旅立ちである。シューっと弓で射った矢のように高速飛行していたら余韻もへったくれもなく、気付いたらデルネス神聖国近くである。


「あら? 寝起きでぼーっとしていたら到着したって感じね」


「だな。お前、目が半分閉じてたぞ。白目だったしな」


「まあ、ウィルこそ、口がポカーンと開いてたわよ」


滑らかに近くの林に降り立つと、飛行魔術は合格とのお墨付きをもらえた。


ひんやりとした朝靄に包まれながら、お別れの時間だ。


「本当にここでいいの? また攫われない?」


「攫われねーよ、国境の障壁がすぐそこだって。兵士も見えるだろう」


ここでお別れだと思うと鼻がツーンとする。たった二月、されど二月だ。ウィルのくるくる髪を撫でて、つむじにちゅっと軽く口づけを落とす。


「ウィル、幸多からんことを」


いつもの様に子供扱いすんな、と憎まれ口を叩くかと思いきや、決まり悪そうに真っ赤になってただ俯いている。


「ふふっ、ウィルが門をくぐり抜けるまでここにいるわ」


「‥‥あのさ、お前の、本名を教えてくれ」


「リリアナ ディフランよ」


「リリアナ ディフラン。また会おう」


大人びた物言いになったと思ったら、バタバタと駆け去ていく。転ばないかしらとひやひやしている内に門に辿り着いた。


「ウィル、また会おうね」


隠蔽魔術で見えない筈だけど、大きく手を振った。

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