表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ベビーサタンさっちゃん 七変化 【さっちゃんのミラクル人生!】  作者: 虫松
歯車に刻まれた心⚙魔界貴族アイゼンハワード

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/29

第7話 ザガードの監視の目

魔王城、監視塔。


黒曜石で組まれた回廊に、靴音が響く。

乾いていて、迷いがない。

まるで処刑台へ向かう死刑執行人の足取りだった。


「……やはり来ていたか」


アルは振り返らない。


その背後、闇の中から現れたのは

魔界治安統括監視官、ザガード・メル=ファング。


鋼の牙を持つ狼頭。

黒い軍服に身を包み、背筋は刃のように真っ直ぐ。

魔界の“秩序”を具現化した存在。


かつて

アルが「ティアラ姫暗殺を阻止した」と記録された事件。

その調査官こそ、ザガードだった。


挿絵(By みてみん)


「アイゼンハワード・ヴァル・デ・シュトラウス」


低く、噛み殺すような声。


「貴殿の言動は、再び“裏切りの兆し”を孕んでいる」


アルはゆっくりと振り向く。


「兆し? 言葉遊びが好きだな、ザガード」


「遊びではない。判断だ」


ザガードの黄金色の瞳が、獲物を測るように細められる。


「よって通達する。

本日より、貴様の監視体制を強化する」


「……好きにしろ」


アルは感情のない声で答えた。


その態度こそが、魔界が“信頼”してきた証だった。

冷酷で、従順で、情を捨てた殺戮者。


――そう、誰もが信じていた。


だが、ザガードだけは違った。


彼は見ていた。

戦場での、ギアチルドレンG-04の異常。

無抵抗の民間人に対する、わずかな攻撃遅延。

そして何より――


アルが、少女に向けた“言葉”。


「命令に従うだけがすべてではない……?」


ザガードの声に、明確な怒りが滲む。


「貴様、何を吹き込んだ」


一歩、距離を詰める。

その圧は、尋問ではない。断罪だった。


「その少女型ギアは“武器”だ。

感情など不要。意志など害悪」


鋼の牙が覗く。


「それを揺らがせた責任――取ってもらおう、アル」


そして、はっきりと言い切った。


「貴様の存在そのものが、魔界秩序への反逆だ」


一瞬、空気が凍る。


アルは笑わなかった。

怒りも見せなかった。


「……相変わらずだな、ザガード」


「秩序は変わらん。それが私だ」


「だから嫌われる」


「だから信頼される」


二人の視線が、正面からぶつかる。

どちらも退かない。


その夜、ザガードは即座に動いた。


魔界密偵部隊を編成。

罠は緻密に、冷酷に。


アルが、かつて戦場で助けた人間の少女。

その“生存情報”を匂わせる偽情報。


「居場所を教えよう」


そう囁かせ、人間との共謀という大罪を捏造する。


完璧な手順。

完璧な正義。


だが、ザガードは知らなかった。


アルがすでに次の裏切りを始めていたことを。


夜。


人気のない訓練場。


月明かりの下、さっちゃんが空を見上げるアルに問いかけた。


「アル……どうして最近、ずっと空を見てるの?」


沈黙のあと、彼は答える。


「……お前を、ここから出す方法を考えている」


「え?」


さっちゃんの瞳が、わずかに揺れる。


「お前には、ここにいる資格がない」


アルは淡々と言う。


「“命令を守れないギアチルドレン”は、すぐに廃棄される」


「でも……」


さっちゃんは胸に手を当てた。


「わたし、アルに命令されたから……考えたんだよ」


その言葉に、アルの表情が一瞬だけ歪む。


「……皮肉だな」


彼は、ほんのわずかに微笑んだ。

それは勝者の笑みではない。

罪を引き受ける者の、苦い笑みだった。


「次は、俺の番だ」


その視線は、魔王城の奥

秩序の中心を見据えている。


“裏切り者”

アイゼンハワード・ヴァル・デ・シュトラウスは、再び牙を剥く。


魔界そのものに。

そしてザガード・メル=ファングという、唯一の宿敵に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ