13.セントラルとクラン《ソロソロ》
首都“セントラル”、この大陸の最大の都市である。この大陸には自治権が認められた集落がいくつかあり、セントラルはその集落の中心になっている。
そんなセントラルに僕らはやってきた。中央の名を冠するだけにファーストと比べてもとんでもなく広く、お店も多種多様である。
僕らは少し落ち着きたかったので、セントラルの中央広場にやってきた。ヴィーゼルが進化したのでステータスの確認だ。
相変わらず、筋力と器用の数値が高く、遠距離物理アタッカーの適性がある。スキルに関しては《魔導砲・速射》というスキルを獲得していた。これは《魔導砲》ほどの威力は出ないが、チャージを必要とせずMPの消費だけで撃つことができるスキルらしい。《魔導砲》はためがある分当てづらそうだったけど、《魔導砲・速射》は素早い相手にも対応できるだろうな。
ヴィーゼルの確認も終わったし、何をしようか考えているとウオタクさんからメッセージが来た。それは、セントラルまで来ていたならば紹介したい人がいるので、中央広場より東にある《ソロソロ》というクランの拠点に来てくれというものだった。
クランというのは大規模なプレイヤーたちの集まりのことで、このゲームでは最低3人、最高100人で結成することができる。そしてクランごとの拠点を持つことも可能である。
セントラルの東には大きな三階建ての屋敷がありすべてのクランの拠点になっている。そう、すべてである。というのも拠点の入り口でどのクランに用があるか選べるようになっていて、選んだクラン専用の隔離空間に飛ばされるようになっている。もちろん許可した者しか入れないようにすることができる。
僕たちはクランハウスの前に来た。そうすると選択画面が表示され、そこに《ソロソロ》の文字があったので選択して、屋敷の中に入っていった。
屋敷の中は見た目通りのでかさではあるが派手さはなく機能的という感じで、広間には階段、左右の廊下には扉が並んでいるだけで、調度品やシャンデリアみたいなものはなかった。
「キッド殿。」
階段の上から名前を呼ばれたので見上げると、僕を呼んでいたのはウオタクさんだった。
「どーも、ウオタクさん。」
「こんにちはキッド殿、階段を上がってきてくだされ。」
言われた通りに階段を上っていく。階段を上っていくと三階に両開きの扉の大きそうな部屋があった。
「こちらですぞ。」
ウオタクさんに両開きの扉まで案内された。扉が開くと3人掛けのソファーが2つあり、そのうちの1つにきれいな金髪の女性が腰掛けていた。女性は重そうな鎧を着ていて、剣を装備しているのでウォリアー系のJOBだと思われる。女性に声をかけられた。
「やあ!君が噂のテイマーくんかい!」
「う、噂?」
「テイマーの間で人型のモンスターを連れているテイマーいると話題になってな。テイマー連中が騒いでいたよ。」
「まあまあ、まずは座って自己紹介でも。」
「そうだな、失礼した。」
ウオタクさんに促されてソファーに腰を掛けた。
「私は“ロゼッタ”クラン、《ソロソロ》のリーダーだ。」
「僕はキッドです。それで噂ってタコちゃんのことですか?」
「そうだ、テイマー達は結構騒いでいたよ。直接聞こうとする連中が出る前にウオタクが聴きに行ったのさ。そうしたら、孤児院が係わっているというから、一部の者は嘆いていたな。」
「嘆いていた?」
「このゲームはVRだからな、ああいった施設に下心をもって近くことができないようになっている。子供に危害を加えようとするものはもちろん、女性型のモンスターに欲情しているものも例外ではないのさ。」
「なるほど…。」
「わたしが魅力的過ぎたか~。」
タコちゃんが得意げに言った。なんにせよ子供たちの安全が確保されていてよかった。
「それでも純粋にモンスターとコミュニケーションをとりたい人たちがいましてな、その方々は孤児院などに入ることができるので、キッド殿が孤児院に行ったとき見かけるかもしれませんな。」
「なるほどそうなんですね。」
ウオタクさんと会話をしていると、ロゼッタさんが咳払いをした。
「雑談はこれくらいにして本題に入りたいんだがいいかね。」
「はい!いいですよ。」
「わざわざ来てもらったのは、このクランに勧誘するためなんだ。」
「勧誘ですか?なんで僕なんですか?」
「うむ、うちのクランの名前は《ソロソロ》というんだが、まあみんなソロでゲームをプレイしている者たちの集まりなんだ。故に、まずソロであることが理由の1つだ。そして私たちがなぜクランに属しているかというと、ソロでは手に入る情報に限界がある。よってみんなで情報を持ち寄っているわけだ。そこで君の情報も持ち寄ってほしくて声をかけさせてもらったわけさ!」
僕をクランに入れるメリットがよくわからないなぁ。
「はあ…。どんな情報が欲しいんですか?」
「君にはタコちゃんという人型モンスターへの進化の前例がある。君は人型モンスターのパイオニア的存在なんだよ。《ソロソロ》にも8人ほどテイマーがいてね、君の人型モンスターの情報が欲しいのさ。」
「そんなに重要な情報ですかね?」
「テイマーにとっては垂涎の情報さ。実際に今回は、テイマーたちのクランからの提案もあって、声をかけさせてもらったのさ。」
ウオタクさんが話に入ってくる。
「テイマークランに関しては自分から。はじめはテイマークランに招こうという案が出ていたのですが、テイマークランは上限の100人を迎えたこともあって、実質的な同盟である《ソロソロ》さんに話をもっていったんですな。」
「そういうことで、うちのクランに入ってもらえないかい?もちろん君の活動を縛るつもりはないし、知りたいことがあればできる範囲で応えよう。」
僕は考えてみた。別に隠したい情報があるわけでもないし、今まで通りにゲームを遊べるなら何もデメリットはないかな?むしろ情報がもらえるなら得をしているのでは?
「今まで通りにゲームできるならいいですよ。」
「そうか!入ってくれるか。《ソロソロ》は君を歓迎する。まずはフレンド登録からだ!」
ロゼッタさんとフレンド登録をした。そしてクランに招かれたので承認した。このゲームを始めた時はクランに入ることになるとは思わなかったなぁ。
クランに入るとクランメンバーのリストを見ることができた。リストをざっと見ると20人ぐらいの人数がいることが分かった。あれ、ウオタクさんがいないな。
「ウオタクさんは《ソロソロ》じゃないんですか?」
「自分は先ほど話題に出たテイマークラン《モンスターの翼》に所属していますな。」
なるほど僕とロゼッタさんの橋渡しのために来てたのか。
「早速だが何か聞きたいことはあるかい?」
「うーん、じゃあセントラル周辺について聞いてもいいですか?」
「ファーストからの道以外は軒並みレベル40オーバーだから今気にしてもあまり関係ないと思うが、北には《狼王平原》が広がっていて強い狼型の魔物が群れで出てくるな。東は《霧の森》が広がっていて探索は全く進んでいない。南は海が広がっているが、船を手に入れたものがいないから港はあっても探索はできていないな。」
「なるほど…。」
「《東の森》を抜けたばかりなら、レベル的には《西の山脈》だな。ファーストの西にあるから行ってみるといい。」
「わかりました。」
「ほかに質問あるかい?」
「今はないですね。」
聞きたいことは聞けたので今日は解散する運びとなった。
「では、また何かあればメッセージをくれたまえ。」
「はい!ロゼッタさん今日はありがとうございました。」
「な~に、お礼を言いたいのはこちらのほうさ。」
お互いにお礼を言い合って解散した。
僕はファーストの街に飛んで孤児院に向かった。孤児院では従魔を預けるのだが、ヴィーゼルを初めて預けることに思い立ち様子を見ることにした。
「「「このゴーレムかっこいい~!」」」
ヴィーゼルは男の子達には好評で、肩に子供たちを乗せて歩き回っていた。僕もやってもらおうかな。
イザベラさんの部屋まで行って、食材の納品をしていると、ふと疑問に思ったことがあった。それはヴィーゼルが干し肉を食べるのかということである。なのでイザベラさんに聞いてみた
「イザベラさん、実は機械系のモンスターを《テイム》したんですが干し肉食べますかね?」
「干し肉じゃだめだね。機械系には鉱物なんかが安上りさ。」
「なるほど、ありがとうございます。」
ヴィーゼルのために鉱物が採掘できるところ探さないとな。
孤児院での用事を終え、従魔を回収したのでログアウトすることにした。
次回は《西の山脈》に挑むぞ!
読了ありがとうございました。
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