第41話 レオナルドは浮かれていた
この日、自室でレオナルドは王家からの文とにらめっこしていた。
文の内容は友好国であるプロキオンから、毎年催されている武芸大会を今年も開催するので、是非とも未来ある若者たちとの交流を深めたい――と書かれていた。
未来ある若者――それがどこまでを指すのか判断に迷うところではある。
ただ、私とアーサー、それにレーヴェが名指しされているのを見ると、それに近い年の者なら問題ないのだろう。それに加えて他国の王侯貴族の前に出して恥ずかしくない身分となれば、五公爵家が適任なのは明白だ。
レオナルドはここまでを自分の都合の良い解釈で結論付けた。
人数こそ大所帯で二人きりでは無いが、想いを寄せるフレイスリアと国外旅行に行ける。
お互いの立場を考えれば、護衛や使用人などを伴わずに遠出など出来ないだろうから、今後のためにも慣れておかなくてはいけないと、他の同伴者の事は割り切った。
そのためには、何としてもこの案を通さなくてはならない。
早速、レオナルドは周りを説き伏せるために思案を巡らせた。
――思いの外、あっさりと通ったな。
プロキオンへの外遊人選の許しをもらいに国王陛下の執務室を訪ねたが、二つ返事で了承されてしまった。
苦戦するかと思っていただけに拍子抜けもいい所である。
「ともかく、これでフレイと一緒に旅行に行ける!」
レオナルドは周りに誰もいないことを確認してから、小さくガッツポーズしたのだった。
「殿下、公私混同しすぎですよ。必死過ぎて引くレベルです」
外遊候補者たちを集めて説明を終えた私はアーサーを伴い、フレデリカ嬢とお茶をしていた。
説明の際に『未来ある若者たち』の部分を『五公爵家』とすり替えたが、まあ、問題は無い。実際、何の疑問も持たれなかっただけでなく、フレイはとても喜んでくれた。その時を表現するなら、『喜色満面』が最も合っているだろう。
しかし、やはりこの聡い令嬢には通用しなかった。
純粋無垢なフレイとは大違いだ。だが、それだけに隣を任せるのに不足は無い。まさに安心だ。
だから、早く婚約してくれ。
さっさとフレイを諦めさせてくれ。
「……いつもより、随分と浮かれていますわね?」
「それはそうだろう。フレイと旅行だぞ?」
彼女は何を当たり前の事を言っているのか。
私がフレイと旅行に行くのが楽しみではないはずがなかろう。
レオナルドの心の内を読んだのか、フレデリカが溜息を溢した。
その表情は頭が痛いと言わんばかりである。
「殿下、“旅行”ではなく、“外遊”です」
「わかっているさ。それにこれはアーサーにとっても重要な事なのだ」
「えっ?」
「……さようでございますか」
フレデリカの薄い反応に不満げな表情をレオナルドが見せる。
その後ろでいきなり自分の名前が出た事に驚いたアーサーが、視線を彷徨わせていた。
――いや、本当にもう……大丈夫なの? アーサー様にも全然説明していないみたいだし。
普段は決して見せない緩み切った姿に、フレデリカは一抹の不安を覚える。
「本当に皆、フレイが絡むと調子が崩れるわね……私も人の事を言えた立場じゃないけど」
フレイスリアとプロキオンへ行けることが決まり、浮かれ調子のレオナルドにぼそりとフレデリカは呟いた。
結局、アーサーは最後まで置いてけぼりのままだった。
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