第20話 レオナルドは愉快だった
毎度ありがとうございます。
ご覧頂けている方々に愛想を尽かされないように頑張ります!
それと、今回は別視点なので短めです。
レオナルドは憂鬱だった。
この日、隣国プロキオンの王女が外遊のために来訪するとの報せを受け、王城に参内すると王女の案内役を任命されたのだ。
しかも、王や王妃をはじめ、彼女の親類縁者は一切同行せず、使用人や護衛のみで訪れるらしい。
そんなことでいいのか……と、思いつつも言葉には出さずに案内役を拝すると、王城を後にして準備を整える。
こちらが用意する護衛の人数を算出し、細かい人選はアーサーに一任した。
護衛の人選が終わるまでの間に、王都巡りの予定を考えていると、諜報員からの定時連絡が届いたので、別室に移動して報告を受ける。
「フレイスリア様は本日も冒険者活動に出発されました」
「そうか」
少し前から彼女が冒険者として活動を始めたことを、レオナルドは諜報機関『暗月』から報告を受けていた。
あまり危険なことはしてほしくないが、下手に抑えつけてしまうと爆発するかも知れない。それなら、本人の意思で適度にガス抜きさせた方が、誰にとっても良いはずだと判断して目を瞑ることにした。
それに彼女の実力があれば、この近辺の魔獣や魔物が相手なら遅れを取る可能性は低いし、万が一、危険が及ぶ場合は助けるよう暗月に命じてある。
彼女の動向偵察を暗月に命じてしているのは、こういったことを視野に入れての事である。
何やら満足げな顔をしているレオナルドを見て諜報員は表には出さないように呆れていた。
「……報告を続けてもよろしいでしょうか?」
「すまない。続けてくれ」
「プロキオン王女の旅程はこれまで順調だったのですが、現在は予定していた道を外れています」
「どういうことだ?」
「どうやら、痺れを切らしたようです」
その言葉にレオナルドは頭を抱えた。
プロキオンの王女は甘やかされて育ったためか忍耐力が足りていない。
アスタリオを代表する令嬢たちと比較すると、精神年齢が幼いのだ。
――お転婆というべきか、じゃじゃ馬というべきか……
頭の痛い報告内容に思考が思わず現実逃避をしていた。
気を取り直して顔を上げたレオナルドに報告が続けられる。
「ちなみに王女が進む道中に、フレイスリア様の討伐対象がいます」
「そうか……都合がいいかも知れないな」
それと言うのもここ最近、近くの森に野盗が出るとの報告が上がっている。
そのことが少し前までは気がかりだったが、その近くに彼女がいることがわかって心配事が減った。
――お人好しなフレイのことだから、野盗に襲われている人を見かけたら放っておかないだろうし、いざとなれば暗月に対処するよう命令してある。
彼の予想は的中し、アナスタシア王女の危機をフレイスリアが扮する冒険者フィリアが救うことになる。
ただ、まさか護衛を頼まれて一緒に来るとは思っていなかったが。
私の前に現れた彼女は見ていて実に面白かった。
バレないよう必死な姿が可愛く思えてついつい意地悪をしてしまった。
フレイは正体を隠せていると思っているのだろうな。
実際、アーサーは感づいてもいないようだし。
だけど、私は違うよ。
「行ってしまったわ……」
フィリアとライザの駆けていく背中を見ながら、アナスタシアがしょんぼりとうなだれる。
これはフォローを入れないといけない。
それに道中での彼女の面白い話が聞けるかも知れないと彼は思った。
「アナスタシア王女殿下、本日は災難でしたね」
「そんなことはありません!あのフィリアとか言う冒険者はすごかったのですよ!まさに『テンペスト』と呼ぶに相応しいわ!」
「テンペストですか……」
「はい!」
彼女のことを瞳を輝かせて語る様子を見て、思ったほど堪えていないようであり、レオナルドは内心ほっとした。
ただ、この話題を続けてはまた気落ちするかも知れないので、話題を変えることにした。
この国にはちょうど同年代で高位貴族の令嬢がいる。
これを利用しない手はないと、心の中のレオナルドに悪魔の角と尻尾が生える。
「王女殿下、我が国には殿下と同じ年頃の公爵令嬢が5人いまして――」
「そうなの!?ぜひ、お会いしたいわ!」
勧める前に自分が望んだ答えをくれるとはなんとありがたい事かと、彼は心の中でニンマリしていた。
手筈を整えることを約束して彼女をエスコートする。
――しかし、テンペストか……嵐……暴風。ふっ、言い得て妙だな。
レオナルドはアナスタシアの言葉を思い返して軽く笑ったのだった。
今回のサブタイトルはちょっと悩みました。
ホントにこれで良かったのかな……(汗)




