悪役令嬢エイダのメイドと静かな誓い 10
クロエが部屋を去ってすぐに私はベッドで横になったが、目が冴えてしまってさっぱり眠れなかった。
全て、このためだったというのか? 何かと人前で私を殴っていたのも、他の子をいじめていたのも、自分が悪役になることで、王家にまつわる、ちょっとしたくだらない悪評がたたないようにするためだと? 王家の求心力が落ちているから? 王家の悪評を立てて国民の忠誠心を失わせようとしている連中に餌を与えないために? お茶会で突然悪役になっては不自然だから、普段から悪役に徹していたとでもいうのか?
王家の盾だからか? 王族を、国を守るためなら、文字通りなんでもやると? 本当にそうだとしたらエイダは本当に馬鹿だ。あれだけ賢いんだ、もっとうまいやり方だっていくらでも思いつくはずだ。自分の保身をしないなんて、そんなの人間じゃない、人間性を失っている。
あんなやり方を続けていては、その先でエイダを待っているのは……
その時突然、何かが私のベッドにもぐりこんできた。
「っ!?」
「いいから、あっちむいてて」
勝手に布団に入って私の背中にしがみついてきた小さな女の子は、平静を取り繕っているが、声の震えを隠しきれていなかった。私は、つられて熱いものがこみあげてくるのを堪えた。
前言を撤回する。エイダは人間性を失ってなどいない。ただ、ひたすらに馬鹿なだけだ。
エイダが鼻をすする。
馬鹿だ。本当に。こんなにプライドが高くて、こんなに傷つきやすいのに、こんな破滅的なやり方しか知らないなんて!
私は寝返りを打って、エイダの方を向くと、その小さな頭を胸に抱きとめた。
胸の中で震える少女の、柔らかい髪を撫でる。
「……」
怒りがこみあげてくる。王子に対してでも、クロエに対してでもない、エイダに対しての怒りだ。怒りは透き通った熱になって、静かに枕を濡らした。
その夜、私は誓った。この馬鹿の破滅は絶対に私が止めて見せる、と。




