Episode 12: 火星人
カイとルシアは、訓練場から少し離れた休憩所に腰を下ろし、これから始まる第二試合を見守ろうとしていた。
「あと、どれくらいで終わるかな?」
ルシアはすでに退屈そうな表情を浮かべ、カイに問いかける。
「ん〜……」
カイは少し考えた後、肩をすくめて答えた。
「5分もかからないんじゃない?――あのリアムの戦い方で、地球人が勝てるとは思えないよ。」
その口調は、どこか哀れみを含んでいた。
「どうなるかな~」
カイは少し笑みを浮かべながら、呟いた。
***
「第二試合、開始!」
ロアの声が訓練場に響いた。私は、号令と同時にリアムに向かって全力で駆け出す。
(さあ、どう来るか…)
その時だった。
――ゴゴゴゴゴッッ!!
突然、地響きのような轟音とともに、地面が揺れ始めた。
(地震……!?)
震度5、いや6はあるかと思うほどの揺れ。
瞬時に訓練中止と避難を考えたが、周囲の様子を見て、違和感に気づいた。
私と朋佳だけが、激しく揺れるその中心にいた。
「……ここだけ……?」
その瞬間、私が立っていた中央の地面が盛り上がり、砂煙が舞い上がった。
ゴゴゴ……!
土が膨れ上がり、そこから10メートルはあろうかという巨大な土の人形が出現した。
「う、うそでしょ……!」
ドシン、ドシン――と足音を響かせて迫る土人形。
その一歩ごとに地面が揺れ、私はまともに立つことさえできず、膝をついてしまう。
土煙の向こう、リアムが片手を前に伸ばし、淡々と私たちの位置を確認していた。
(これが……“継承者”の土魔法……!?)
「どうする!? 足場が安定しない、動けないよ!」
朋佳が焦りながら叫ぶ。
(ここで……終わりたくない!!)
私は朋佳の肩に手を置いて、短く告げた。
「私の戦い方で……!」
すぐには意味を理解できなかったようだが、朋佳はすぐに目を見開き、力強く頷いた。
私は震える脚に力を込めて、もう一度立ち上がる。
土人形がこちらに手を伸ばした、その瞬間――
「ギア、展開!」
***
「おぉ〜!? あれ、マジ?」
休憩所で見ていたカイが、驚き混じりに声を上げた。
火星人の土魔法は、本来、土木作業や地形操作に向いているとされていた。しかしリアムはそれを完全に戦闘用に昇華させ、“土を操る”というよりも“土で造る”という域に達していた。
あの巨大な兵器に近づくことすら難しい。それを今、あの小柄な地球人が――
「なにあれ……空飛んでるの?」
観客席からも、驚きの声が上がった。
「まさか、浮遊魔法……!?」
セレナが身を乗り出して叫ぶ。
浮遊魔法――それは、惑星人も地球人も長年求めてきた未確認の魔法。だが、藤原が双眼鏡を覗きながら冷静に言った。
「……違う。よく足元を見てください。小さな足場――ギアで空間に踏み台を作っているんです。」
リアムも、瞳を見開いて美空の動きに注目していた。
ギアによって展開された空中足場を使い、私は一気に土人形の"頂上”まで登り詰める。
(ようやく……対等に戦える場所に来た!)
ギアの剣を構え、私は真正面から、リアムの創り出した怪物と対峙した。




