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死神だった俺、暗黒魔法の転生者として平和な時代で再び戦いに巻き込まれる  作者: バッチョ
魔導大会五日目

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葛藤する両者

「なんて事をしたんだ……!」

(ようやく心を開いてくれたと思っていたのに……)


 レイゼンは整った顔立ちが僅かに歪む。


「それでどこまで覗き見たんだ?」


 無意識のうちに鋭い金色の眼光がリベルを刺すように睨みつけた。


「ッ……今日の深夜頃に、付き添いの女の人が寝ていたのでコッソリ入って、本当は見るつもりなんて無かったんですけど魔が差して……」

「――――私はあの人の記憶をどこまで見たんだと聞いているんだっ!」


 戸惑いが表情に浮かび、言葉がうまく続かない彼に初めて怒声を上げる。


「すみません……!」


 リベルは跪き、深々と頭を下げることしかできなかった。


「フゥ――――……声を荒げて済まなかった、どこまで見たか教えてくれ」


「すみません、アルムさんが五歳の時まで、です……」


 リベルの瞳から涙がポロポロとこぼれ落ちる。


「なんで彼の記憶を見たんだ?」


「初めて目にした時に違和感がどうしても忘れられなくて……」


「リベル、お前の力は知的好奇心を満たすために使っていい代物ではない。大義を成し遂げるため、悪を断罪するために使って欲しい」


 レイゼンも椅子から降り、彼と同じ目線に立つ。


「その約束は覚えているね?」「はい……」「なら、もう二度とするな」


 悪さをした子供を諭すとリベルは鼻をすすりながら深く頷いた。


「……では私はベルモンド王国に戻る。長旅で疲れただろう、今日は早く寝なさい」


「はい……ありがとうございました」


 レイゼンは再び長距離転移で大会会場の一室に姿を現す。

 会場内に人は居らず、昼時の喧騒とは対照的に深い静寂に満ちていた。


「五歳までなら問題は無いだろう。そもそもどうして五歳までしか……いやこれ以上の追求は良くないな」


(彼には申し訳ないがこの事実は伏せておくことにしよう。

 私との関係、そして()()()にすら軋轢(あつれき)を生みかねない……でも……!)


 レイゼンは床に座り込み、拳を強く握り締める。


「そういう事なのか、全てを忘れてしまったから貴方は変わってしまったのか!」


 彼の瞳からも一滴の涙が頬を伝う。


「それなら話していいのか……打ち明けて良いのか⁉」

 

 しかし不安や恐怖から零れたリベルとは違い、彼の涙は言うなれば『葛藤』。


「……私は、どうすれば良いんですか――――――――『父様』……!」


 悩んでも、尋ねても返ってくるのは静寂のみ。


 学園理事長、裏社会幹部、稀代の魔法師という地位も名誉も兼ね備えたレイゼン

 

 しかしそんな彼でも悩みひとつ相談できない、実の両親でさえ。


 500年以上懐き続けた願いを叶えられる日は彼にしか分からない。


 ***


「ふぅ……」


 晩餐会が始まって一時間が経過、俺は壁に寄り掛かり疲労含んだ溜め息を吐く。

 肉体を酷使する事は何もしていないのに心身ともに大きな疲れを感じる。


「まあ色々あったからな……」


 死神教の内情、レイゼンとの向き合い方、王国に潜む裏社会……。

 衝撃的な真実やその場で導き出した選択の数々、病み上がりの身体には堪える。


 それに一位を獲り逃した俺はカルティアの契約に従わなければならない。

 だが貴族制を廃止した国の中枢に立つなんて幾ら命令だとしても流石に無理だ。

 しかし家族や学園の連中を守るために裏社会打倒は避けることもできない。


 俺は表彰式終了後、カルティアを呼び出したことを思い出す。


『つまり今すぐ命令を確定すべきではないと?』


『はい。カルティア先輩が国の中枢に立て、と命じるのであれば《《よろこんで》》従わせていただきます。しかし今後貴方が困ったときや手頃な駒が欲しいときの事態に備えて命令権を所有したほうが良いと思いまして』


『……確かにあなたの言うことは一理あります。分かりました、ここは可愛い後輩を信じてみようと思います』


『ありがとうございます』「……はぁ」


 果たしてこれが最善の対応だったのか、それが分かるのは命令が下された時だな。


「――――ム、大丈夫?」


 裏社会のことならレイゼンに、って彼女に言われるまで存在する知らなかったんだった。


「――――ルム君、大丈夫そ?」 


 レイゼンの監視を搔い潜って秘密裏に行動しているとは考えられない。

 王国に潜む裏社会がレイゼンの仲間なのか、はたまた本部と不仲というのはその場限りの嘘だったか……。


 信じてみようと思い立ったのは本当に正しかったのだろうか?


 柔らかな香りが鼻先をくすぐり、俯いていた視線をそっと横に動かすと同じように壁に寄り掛かるラビスがいた。


「……何か用?」


 驚きはしたが疲労と両腕の拘束で予想以上に鈍い反応しか出来ない。


「結構疲れてる?」「まあ、それなりにかな……」


 気が立っているというよりは沈んでいるという表現のほうが近い。


「アルムと行きたいところあるんだけど止めとく?」「いや、連れてってよ」


 とはいえ動けない程ではない、それに彼女がどこに行きたいのか少し気になる。


 俺はラビスの後ろを追いかける形で晩餐会の席を離れた。

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