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24羽 鏡開き

 早く戻らないと。あっちの世界で俺がやるべきことが分かった。


 ……とはいえ、まだ鏡は閉じている。やはり俺は警戒されている。どうやってこじ開けてやろうか。


 「クロオくん。どうしましたか?」

 「あ……あんたは……」


……どこにでも現れるなこの人は。日本語も少し上手くなっている気がする。この状況ならこれ以上ないくらい頼もしい人だ。


 「ジョナサン、この鏡の中に入りたい」

 「なるほど……OK!」


この人、ジョナサン=オーシャンのハバタキは瞬間移動。空の果てだろうと異世界だろうと過去や未来だろうと、行きたい場所へ思いのままだ。


 「ですが、私が連れていってもクロオ君には意味がないのでは?」

 「どういうことですか?」

 「私が連れていった場合、クロオ君にも私と同じ制約が課されます」


ジョナサンの言う制約。つまり異世界や別の時間軸には干渉できないという制約だ。言われてみれば俺が生まれた時間に連れていかれたときもそうだった。……確かにそれじゃあ意味がないな。


 「でも何とかできるんですよね?」

 「もちろんです(Of course)。クロオ君、私の力で鏡を開きます。その隙に飛び込んでください」

 「分かった」


ジョナサンが鏡に両手を付ける。やっぱり頼もしいぜ。……でもどうして俺なんかに協力してくれるんだろう。


 「なあ、ジョナサン、何で俺に協力してくれるの?」

 「……君しかいないと思ったから、ですかね」

 「俺しか……? それって、どういう……」

 「クロオ君。君がすべてを救おうとした場合、カギになるのはハヤト君です」

 「……隼人が?」

 「これだけは言っておきます。君たちが力を合わせればできないことなど有りません」

 「……何か変だぜ。まるでそんな遺言みたい……な……」




 『さらばだ。ジョナサン=オーシャン……』


白牢の使者の左腕が、ジョナサンの背中から胸を貫いていた。奴が腕を引き抜くとジョナサンはズルリと倒れ込んだ。


 「あ……ジョナサン……どうして……」

 『……運命の歪みに同調するならこいつも同罪だ』


運命の歪み? 俺が運命を捻じ曲げようとしてるって言うのか? ……だったら勘違いもいいところだぜ。


 「……手間が省けて助かった。鏡を開かせたら俺がそうするつもりだったからな」

 『何だと?』

 「俺、考えが変わったんだよ。昇瀬さんを助けたい」

 『……面白いことを言う』

 「協力しよう。利害が一致してる、だろ?」


提案すると白牢の使者は高笑いしながらこちらに歩み寄ってきた。


 『だが信用に足らないな……“保険”を掛けさせてもらう』


何、保険だと? ……マズい! だが気づいた時にはもう遅かった。白牢の使者の右手が、俺の胸に突き刺さっていた。


 『お前の心臓に鏡界因子ミラージュファクターを埋め込んだ。これでお前が俺を裏切ることはできない』

 「信用ないなぁ……まあ、しょうがないか。これで契約成立ってことで!」






 「じゃあ、俺と彩は誰かに操られてた、ってことか……」


 巌さんが不可解そうな顔をしながらつぶやいた。そりゃわけ分かんねえよな。彩さんはまだ気絶したままだ。公園のベンチに座った巌さんの膝の上に頭を乗せられている。


 「でもお前が助けてくれたんだよな? ありがとな」

 「あ……うっす……」


素直に感謝されるとなんか照れくさいな……照れくさいけどちょっと嬉しいや。

 「照れるなよ、可愛い奴め! ……へぶっ!」

飛び起きた彩さんの頭が巌さんの顎を勢いよく突き上げた。目が覚めたか。


 「……ここはどこ? ていうか何で私、巌に膝枕されてんの……」


片目を押さえてうつむきながら巌さんを睨み付ける。彩さんにも事情を説明しないと。


 「……あんた頭大丈夫? ちゃんと本当のこと話して」


姿勢を正して可哀想なものを見る目で問いただしてくる。……全く信じていない。仕方ないけどさぁ……仕方ないけどさぁ!


 「いや……本当なんですけど……」

 「強情ね……じゃあそういうことにしておいてあげるわ」


事実なんだけどなぁ。彩さんは「大丈夫、分かってるから」とでも言いたげにうなずいている。思春期の少年の行き過ぎた妄想と思われているようだ。……クソッ!


 「……で、千切は何でここに?」

 「え? ああ……」

 「パパ……ママ……」


巌さんと彩さんを見つめながらうわごとのようにつぶやいている。2人とも少しひきつって顔をしている。


 「お前は一旦落ち着け」

 「隼人、この二人は育つよ」

 「何言ってんだお前」


言っている意味は全く理解できないが、このままでは巌さんと彩さんが危険だ。俺が守護まもらなくては。


 「千切、ちょっと向こうでお話しようか。巌さんと彩さんも、お元気で!」

 「あぁっ……」


そんな切なそうな顔したって無駄だぞ。……あ、そうだ。


 「この鏡、持っててください」

 「お、ありがとう……何だこれ」

 「私にも?」


 「お揃いアクセ良い……」

 「お前マジでいい加減にしろよ」

千切に釘を刺しつつ、二人の背中を見送った。……巌さん、何の躊躇もなく膝枕してたけどあの二人どういう関係なんだろう……



 「人前で膝枕とかありえないし……どういう神経してんのよ?」

 「お前が気絶してたからだろ?」

 「そういうところよ。恥を知りなさい、恥を」

 「黙ってれば可愛いのになぁ……」

 「何か言った?」

 「まあ、そういうところも好きだけどな」

 「は!? あんたってホントに卑怯……」



 「良い……良い……」



クソッ、見失った! 千切の奴あの二人を追いかけていきやがった……。


ジョナサン1章登場回:33,34,35、39,41,42話

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