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16羽 作り物

 「ねえ、隼人……」

 「……何だあれ」


 玄雄は朝早くにどこかに出かけてしまい、夕陽と二人残された。今日は雨が降るので小屋の中で大人しくしていたのだが、傘もささずに立ち尽くしている奇妙な三人組がいた。……危ねえな。お節介かもしれないけど、見過ごせねえよな。


 「おーい! 何してんすかー?」


窓から顔を出して声を掛けると、三人組のうち一番背の高い男が振り向いた。そして俺の姿を見て瞳を輝かせた。


 「……兄さん!?」

 「は?」


何言ってんだこいつ。俺に弟なんかいないし、もし百歩譲っていたとしてもあんたの方が100%年上だろ。しかし、三人組は俺が脳を整理する暇も与えず小屋の窓に駆け寄ってくる。


 「コン兄! この人私たちのお兄ちゃんなの!?」

 「コンドルお兄さんの兄貴ってことは……何だ!?」

 「トギちゃん、モッピー、落ち着いて! 兄さんが困ってるだろ!」


……やれやれ、俺は考えるのをやめた。




 「わぁ、お姉ちゃんまでいる……」

 「何なのこの人達……」


 流れで何となく小屋の中に入れることになった。まず状況を整理しよう、させて下さい。見た目だけで判断するなら、成人男性と、俺と同い年ぐらいの男と女の3人組。だがこいつらは俺のことを兄と言った。もちろん天涯孤独の身の俺に弟や妹は存在しない。


 「……整理できるかぁ!」

 「お兄ちゃん!?」

 「まずそのお兄ちゃんってのやめろ!」


怒鳴りつけると3人一斉にシュンと小さくなった。何で俺が悪いみたいになってんだよ!?


 「……お前ら、名前は?」

 「俺はコンドルお兄さん。それ以上でもそれ以下でもない」

 「私はトギ!」

 「俺はモッピー!」


何だその名前。外国の方? それも気になるけど本題はそこじゃない。コンドルお兄さんって奴が比較的しっかりしてそうだ。


 「えー、じゃあ、コンドルお兄さん? 何で俺がお前の兄なんだ?」

 「だって製造元が同じじゃん!」

 「……製造元?」

 「うん、オオトリだよ!」


オオトリ? 確かにあいつらに改造はされたが……ん? じゃあこいつらは一体? 鳳雛の家の出身なら最初からそう言えばいい。


 「お前ら……何者だ?」






 「……人工生命体?」

 「うん、作ってみたんだけど……吸収してくれないんだ。失敗だったみたい」


 白牢の使者が鏡界の外に留まれる時間は長くない。八田玄雄の存在も気がかりだが、一番大事なのは鳳空飼の動向だ。彼の気が変わるようなことは、無いと思うが、運命の執行人として観察しておく必要がある。


 「……で? そいつらはどうした?」

 「兄さんと姉さんを探しに行くって言ってたよ?」

 「……兄さんと姉さん?」

 「改造した子どもたちのことでしょ」

 「……ああ、そういうことか」


それにしても……冷凍装置の中で眠る天道昇瀬の方に目をやる。彼女はまだ目覚めないのか? 命はもう十分すぎるほど集まっているはずだ……。まだその時ではない、ということか? 八田玄雄の介入で運命が歪みつつあるとでもいうのか?


 「あ、そうだ。白牢さん、夕食食べてく? 君にはお世話になってるし!」

 「ん? やめておくよ。食欲がなくてな」


俺には休んでいる時間などない。この身に代えても天道昇瀬は生き返らせる。それですべて終わりだ、鳳空飼も俺も救われる。邪魔するものは排除するのみだ、どんな手を使ってでも……






 「……つまり、お前らは作られた命だってことか?」

 「うん! そういうこと」


 驚いたな……。空飼の奴、そんなもんまで作っていやがったとは。そういう意味で製造元が同じってことか。……まあ、俺達はちょっと違うけどな。


 「それで、お前ら何であんなところで突っ立ってたんだ?」

 「お兄ちゃんは優しいものだから、雨の日にああしてれば話しかけてくれる、ってコン兄が!」


トギが元気よく答えた。つまり俺はまんまと引っ掛かったってことじゃねえか!


 「トギ、言わない方がよかったんじゃ……?」

 「そうなの!? ごめんねコン兄……」

 「気にしなくていいよ! 隼人兄さんはそんなことで怒る器じゃないって!」


先手を取ってキレづらい空気を作られてしまった。こいつら実年齢0歳の癖に小賢しいな!


 「ふぅー……。それで、お前らこれからどうするつもりだ?」


3人で顔を見合わせると勢いよく立ち上がった。



 「「「お世話になります!」」」

 「出てけぇ!!」




 何で俺がこいつらの住処を探してやらないといけないんだ。いや、まあ、ちょっと可哀想だけどさ、俺無関係じゃん。あそこなら受け入れてもらえるだろうか……


 「ほら! 休んでないで! ハリーアップ!」

 「ちょっと……オジサンには……キツイ……」


ガキどもが楽しそうにはしゃぐ声が聞こえてくる。……何だかんだ仲良さそうにやってんじゃん。


 「情けないわね……。あれ? 隼人じゃん」

 「よっ、ヒバリ。ちょっと相談があるんだけど……」


コンドルお兄さんたちはガキどもの遊ぶ姿を羨ましそうに見つめている。見た目は大人でも精神は生まれたてなのだ、仕方あるまい。


 「その3人組を受け入れろってこと?」

 「頼む! こいつら可哀想なんだよ……」

 「可哀想、って。捨てられたから?」

 「あ……そういうわけじゃ……」


地雷踏んじまったか。でも決してヒバリのことを言っているわけでは……


 「いいよ」

 「え?」


ヒバリの言葉を聞いてコン兄たちが瞳を輝かせながら振り返った。


 「えっ!本当かよ!?」

 「ヒバリお姉ちゃん!」

 「二人とも落ち着い……やったー!」

 「ちょっと! 離れなさい! た・だ・し! 子どもたちの遊び相手になること! いいわね!」

 「もちろん! なるなる!」


……まあ、あいつらも何だかんだ上手くやっていけそうだな。


 「ちょっと隼人! 帰るならこいつら落ち着けてから……ギャー!」





 小屋に戻ると玄雄もすでに帰ってきていた。どこに行っていたのかはやはり教えてくれなかった。


 「隼人なんか疲れてんな」

 「……今日は色々あったからな」

 「夕陽から大体聞いてるよ」


 「そうかよ。白い天井もそうだけどさ……鳳空飼は何のためにあんな……」

 「恋人を生き返らせるためだろ」


そうか、恋人を……ん? 何で玄雄がそんなこと知ってんだよ。しかし俺が聞き返す暇もなく、しかめ面のまま続けた。


 「……この身に代えても、天道昇瀬は生き返らせない」


どこか遠くを見つめて湿り気のある声で言い放った。俺は何も言えなかった。


1章登場回

コン兄:25,28,32,36,37,38話

モッピー:27,28,30,38話

トギちゃん:37,38話

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