北風と太陽と青空と旅人と
鳳雛の家時代の玄雄のお話
ほうすうの家とかいうところに来て1か月くらいたったが、ここの連中はどうも仲間意しきが強すぎて苦手だ。さっきも俺がいつも一人でいるからって文句を言われた。放っておいてほしい。
「カリンさん! ヒバリちゃんが泣いちゃった!」
「えぇ!? また?」
「くろおに泣かされてたー」
ちょっと言いかえしたくらいで泣くほうが悪い。仲間なんてものにたよってるからそうなるんだ。いざというときに信じられるのは自分の力のみ。ここにはせわになっているがぬるま湯につかるつもりはない。いつひとりにされても困らないように……
「痛っ!」
「玄雄、ダメじゃないか、女の子を泣かせたら」
脳天にチョップを食らわされる。この人は「おおとりすかい」俺がここでゆういつ信頼している男だ。ひとりぼっちだった俺に名前と愛をくれた、ちょっと変なやつだけどいいやつだ。
「じゃあ男なら泣かせていいのか?」
「屁理屈言うなよ。まだ皆と仲良くなってないのか?」
「……必要ない。ぅでっ!」
おでこをひとさし指ではじかれた。痛がる俺を見て楽しそうに笑っている。
「お前はカッコいいなぁ。でも一人で生きられるなんて思いあがっちゃダメだぞ」
「別にそこまでは……お前は別だ」
「はっはっは、嬉しいなぁ。でも僕しばらくここに来れなくなっちゃうぞ」
「え? なんでだよ?」
「友達が入院することになっちゃってさ。毎日お見舞い行ってあげるんだ」
「そっか……友だち、元気になるといいな」
「ありがとう。じゃ、そろそろ行くよ、ちゃんと皆と仲良くしろよ~?」
俺の頭に二回、ポンポンと手を置いて笑いながら立ち去っていく。実はこれがちょっと楽しみだったりする。もし兄ちゃんが居たらこんな感じだったのかなぁ、って。ま、まあ、俺にはそんなの必要ないけどな!
「……おい、くろお。またヒバリ泣かせたのか?」
せっかくいい気分だったのにめんどくさいのが来た。こいついつも突っかかってくるんだよなぁ。確か「はやと」とか言ったっけ?
「あれくらいで泣くほうが悪い」
「あやまれよ」
「なんで俺が……ていうかなんでお前がそんなこと言うんだよ」
「さっきのは俺もムカついた、ヒバリに、みんなにあやまって来い」
これだからこいつきらいなんだよ。しょうがない、いつもどおり、相手してやるか。
「じゃあお前が勝ったら謝ってやってもいいぜ」
「なら今日は……かけっこで勝負だ」
……負けた。おかしい、ほかの勝負ならいつも勝ってるのに。こいつがこんなにすばしっこいなんて。このままではあの泣き虫に謝らなければいけなくなる。俺は間違ってないのに……
「ふっ、まあすばしっこいしかとりえのないやつだからな。今回は勝ちをゆずっておいてやるか。ほかの勝負なら俺が勝つけど、結果は結果だ。しかたない」
「……おい、待てよ。いまのは一回戦だ」
あっさりつられてくれて助かる。そのあとはけっきょく俺の一人勝ちだった。
「……なんかだまされた気がする……」
「ふっ、またあそんでやるよ」
ふふん、ちょろいもんだぜ。ぬるま湯につかってるからこうなるんだ。
「玄雄くん、みんなと仲良くするの、いや?」
「うん、いや」
「うーん、そっかぁ……」
今日もけっきょく一人だ。最近すかいも来ないし。やっぱり俺にはこっちがあってる、気楽でいい。
「くろおくん、今日も一人?」
……それなのに。今日はお前か「ゆうひ」かわいらしい顔でのぞきこまれると正直少しドキッとするが。そのまま俺の横にチョコンと座った。何なんだよこいつら。
「みんな楽しそうだね」
「じゃあお前も遊んできたら?」
「くろおくんも一緒に遊ぼうよ」
「やだ」
「そう……」
そんな顔されると、ちょっと悪いような気がしてくるけど、でも俺はなれあったりしない。
「くろおくんは大人だね」
「別に、そんなこと……」
「だからさ、ちょっとわたしたちのレベルに合わせてよ」
「……そんな挑発にのるか」
「ふふっ、やっぱり大人だね」
なんかすっごい下に見られてる気がする。腹立つ、かわいいのがよけい腹立つ。まげてもつらぬいてもこいつの手の上な気がする。
「……悪かったよ」
「へ?」
こいつヒバリだったか。せっかくはじをしのんで謝ったんだからもっとマシなリアクションしろよ。
「どういう風のふきまわしだ……」
「よかったね、ヒバリ」
……まあ、あいつらのおかげかな。本意じゃないけどな! しかたなくだけどな!
「クロオの奴……やっと素直になったか」
「あら、空飼くん、来てたの?」
「ええ、ちょっと彼らのことが気になって」
「そうなの。ごめんね、私がしっかりしてれば……」
「いえいえ!それより頼みがあるんですけど……」
「ええ、私にできることなら」




