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合わせ鏡の旅烏ー別世界の俺は「ちょうじん」だった。  作者: ハイマン
第1章「青空の飼配者」ー実験施設
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29話 命がけで守るもの

 「ちょっと! あんた大丈夫?」

 「ん……ああ、あなた確か、天雲ヒバリさん、だっけ?」


 「何で私の名前知ってんの? そういうあんたは……えっと……」

 「波里翠。銀子のためにちょっと調べさせてもらっただけよ」


ヒバリは瞬間何かを察してひきつった表情を浮かべる。翠がけだるげに立ち上がった。


 「それよりあいつらどうする?」

 「敵なら倒さなきゃでしょ。倒して早く彩さん助けなきゃ」

 「そうね、早く銀子のとこ行かないとね」


 「ん?」

 「ん?」


微妙に気持ちの通じてない会話をしながら目の間の二人組を見据える。


 「ふぅ、千切め。相変わらず乱暴な配送だな。樹、大丈夫か?」

 「お前が下敷きになってくれて助かったぜ! うちらの相手はお前らか! ヒバリに……誰だ?」

 「そういえば。自分から改造を志願したイカれた女がいたと聞く。お前がそうだな?」


多喜治が翠を指さしながら尋ねる。ヒバリと樹が驚いて翠を振り返る。


 「……あんた、それ本当なの?」

 「それが何か? 銀子を守るためよ」

 「多喜治! あたしこんな頭おかしい奴の相手嫌だよ!」


樹が翠を指さしながら悲鳴を上げるが、波里翠は容赦しない。全力の激流で二人を丸ごと呑み込もうとする。


 「んだよ、いきなりぃ!」

 「樹、俺から離れるなよ」


樹の腕を引き寄せながら自身の羽根を頭上にかざす。大量の水が二人に覆いかぶさる。


 「うわ、すっご……」

 「あっけなかったね。……あら?」


球形の透明な壁が水流を遮断している。


 「俺が守っている限り、俺の仲間はやらせない」

 「は、俺が守っ……」


 俺のそばに居ろよ。でっ、でも……あたし……。お前は俺が守る。


樹の目には何が映っているのか、恥ずかしそうに目をそらしている。


 「樹?」

 「へ……? あ、何でもねえ!」

 「いや……早く攻めてくれ。俺はこれしかできないからさ」


自分のバリアを指さしながら指摘する。樹もあわてて突撃体制に入る。


 「その前に、これを持っておけ」

 「これお前の羽根か?」

 「ああ、文字通りのお守りだ」

 「分かった! よっしゃ行くぜ!」


バリアをきりもみ回転で突き破りながらヒバリたちに突っ込んでいく。


 「ヒバリちゃん、あれどうにかできる?」

 「……やってみる。ニンバスマン!」


ヒバリが羽根を投げつけると、雲の巨人が体を丸めて出現する。


 「そんなハリボテぶち抜いてやるよ!」


羽根を槍状に変化させて入道雲に突き刺す。ニンバスマンがあえなく霧散する。


 「ヤバッ……」

 「何とかなるかな……」


水流で樹を押し流そうとするが、槍が水のど真ん中を貫いて樹に道を作る。


 「はー、やっぱりダメか……ヒバリちゃん!」

 「へっ!? ちょっとあんた……」


翠がヒバリを突き飛ばす。樹が翠の真正面向かって飛んでくる。


 「正面がダメなら……」


羽根を樹の真下に滑りこませて真上に噴射する。


 「えばばばばばば!」

 「バカで助かったわ」


押し上げられた樹が天井に叩きつけられる。


 「あんた、さっき私をかばって……」

 「銀子の大事な仲間だからね」


樹は天井にめり込んで身動き取れなくなっている。好機と感じた翠は天井に向けて激流を噴射する。


 「……ほんっと、面倒くさい」

 「何があっても、俺が守る」


またしても透明な壁が水流を遮る。多喜治の渡した羽根からバリアが発生しているのだ。


 「先にあれ何とかしないとね……」

 「できるの?」

 「一直線ガールの方は頼んだわよ!」


翠が多喜治に向かっていく。天井にたたきつけられた樹も目を覚ました。


 「はっ! 多喜治!」

 「あんたの相手は私!」


羊雲の群れが樹に襲い掛かる。


 「無駄無駄ぁ!」

 「めぇ~!」


樹が四方に飛ばした羽根に貫かれて羊たちは断末魔とともに消滅する。


 「ぶち抜いてやるぜぇ!」

 「くっ……喧騒雲!」


眼前に薄い雲が広がる。樹はヒバリを見失うが構わず突っ込んでいく。


 「そんな小細工通じねぇええええああばっはああああ!」


自ら床に突っ込んで情けない声を上げた。


 「樹! 何やってんだ、あいつ……」

 「自分の心配したら?ヒバリちゃん!」


くちばしが床に突き刺さって抜けなくなっている樹に襲い掛かる。同時に翠も多喜治に水流を発射する。


 「同時攻撃か……仕方ない!」


バリアが樹を包み込む。多喜治は水流に押しつぶされた。


 「同時に複数は出せないのね」

 「ちっ……ばれちまったか……」

 「多喜治!」

 「俺にはこれしかできないからな。気にせずガンガン攻めろ!」

 「ご立派ね」

 「当然だ。仲間のことは命を懸けても守りたい」

 「その気持ちは分からなくもないけどね…ヒバリちゃん! いける?」

 「何が!?」


困惑するヒバリをよそに、翠が自身の羽根の空中に巻き上げる。


 「……そういうこと。濫遭(らんそう)(うん)!」


灰色の雲が天井を覆う。翠の羽根は雲の中に入り込んでいく。


 「樹! すぐ戻って来い!」

 「これだけ離れてちゃ、相合傘は無理よね」

 「翠さん、降らすわよ!」


灰色の雲から勢いよく水滴が射出される。


 「間に合わんか……樹だけでも……!」


雨粒が多喜治の体を貫く。しかし樹を守るバリアだけは死守している。


 「多喜治! どうして……」

 「本当に立派。でも自己犠牲じゃ誰も守れない」


雨粒を回転させてバリアを貫通させる。


 「そんな……樹……!」


多喜治の中翼が引っこ抜かれてバリアも消滅する。殺人豪雨が樹に襲い掛かる。


 「ぎにゃあああああぅわあああああっはあああ!」

 「ちょっとあんた、やりすぎじゃ……」

 「命までは取らないわよ。さっ、行きましょう」


樹の中翼を引っこ抜きながらあっけらかんと言い放つ。


 「……それにしても、あんた、私と初対面なのによく信頼してくれたよね」

 「銀子ならこうするって思ったことをしただけよ。あなたがちゃんと銀子の仲間なら合わせてくれるはずだからね」


 「……もし合わせられてなかったら?」

 「悪い虫と判断してた。かもね」


張り付いたような笑顔で告げる翠を見てまたしてもヒバリの顔が引きつった。


 「さっ、こんなところでおしゃべりしてる暇ないわ」

 「そうね、早く行きましょう!」

 「彩さ「銀子」んのところへ!」


 「ん?」

 「ん?」


最後まで微妙に通じ合っていない二人だった。しかしそこには確かな絆が生まれていた、……はず。


筒木(つつき)(いつき)

キツツキの遺伝子を持つバードロイド。ハバタキは「ウッドペッカー」何でも貫通しちゃうぞ。勝気な言動してるけど頭の中は結構メルヘンヒロインなんだよね、要するにお花畑。


吉備野(きびの)多喜治(たきじ)

キジの遺伝子を持つバードロイド。ハバタキは「焼野の雉」透明なバリアを張る。彼は自分にできることをやっているだけなんだけど、能力柄どうしても姫を守るナイトみたいな言動になってしまう。そんな彼と頭メルヘンヒロインな少女が共闘したらどうなるかは言うまでもないだろう。

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