27話 超過電流
玄雄をふもとまで送り届けた巌が小屋に戻るとすぐに異変に気づいた、彩がいない。
「出かけるなら一言言ってくれても……」
この言い方は適切じゃないと自分で突っ込む。テーブルの上に1枚メモが残されていた。
文月彩は預かった。
「……は?」
その時小屋のドアが勢いよく開いた。
「彩さん! クソ、遅かったか……!」
「隼人!? お前どうしたんだよ?」
「彩さんがさらわれたんです! ここの場所がオオトリの連中にばれたんですよ!」
「何!? でもここの場所は誰も知らないはず……」
「……玄雄です。あいつが漏らしたんだ……やっぱりあの時殺すべきだった……!」
突然のことで巌は戸惑っていた。だが今は彩を見つけなければ。
「隼人、彩がどこにいるか分かるか?」
「分かりません、でもひょっとしたら玄雄が知ってるかも……」
「……そうか」
今日はいろいろあったな、早く帰って休もう。また今度巌さんと彩さんのところにみんなと一緒に行こう。ちょっと暇な日聞いとくか。
「……なあ、玄雄」
背後から声を掛けられる。この声……巌さんか?
「彩がさらわれた」
「え……本当ですか!?」
巌さんに胸ぐらをつかまれる。
「とぼけんな……! お前があの場所を漏らしたんだろ……!」
は? 俺が? そんなわけないだろ!
「俺じゃない、巌さん!」
「隼人は嘘を吐くような奴じゃねえ!」
そのまま左の頬を殴られる。隼人が? あいつ……
「彩はどこにいる、答えろ!」
「知らないって言ってるでしょ!!」
「だったら力ずくで吐かせてやる!」
ダメだ、話が通じない。隼人の野郎、こんな卑怯な手使うやつとは思わなかったぜ。巌さんは俺に、お前をのこと信じてやれって言ったんだぞ? それなのにお前は……
巌さんの羽根がこめかみをかすめる。
「ボーっとすんなよ、俺は本気だぜ。隼人のことを信じる」
「……そういうことかよ。だったらとことんまで付き合ってやりますよ!」
雷撃が、5発! 飛んでくる。回避を試みるが一発はかわし切れずに翼にかすってしまう。軌道は直線だ、発射前の羽根を注意深く観察すれば……来た! 今度は12発!
「はぁっ…ふう、ギリギリ……」
「……やるな。ならこれはどうだ!」
また雷撃、8発! 右左右上正面左左斜め前真上右……
雷撃が互いに干渉しあって軌道を変えている。ヤベっ!
「うぐ……っ……痺れるなぁ……」
「もういいか? いい加減喋ってもらって?」
「だから知らないって…言ってんでしょ……」
「……彩に手出したのは許せない。何も知らないなら、引導を渡すしかない」
「……やってみろよ。ぐ……うぅ……」
首根っこを持ち上げられて電流を流し込まれる。……意識が……ここまで…か。
「じゃあな、玄雄」
悲しげな表情で別れを告げる。それから少しすると隼人がやってきた。
「巌さん! それ……玄雄……」
「隼人か。何も知らないみたいだったからな。……始末したよ」
「……そうですか。あ、それより!彩さんの居場所が分かったんです!」
「……! 本当か!? どこだ!?」
「鳳雛の家です!」
「鳳雛の家? どうしてそんなところに……」
「地下に実験場があるんです。きっとそこに……」
「分かった。鳳雛の家の地下の実験場だな」
「早速行きましょう!」
「ああ、その前にちょっと待ってくれ」
巌が仰向けに倒れている玄雄の方に歩み寄る。羽根を1枚とって胸の上に乗せた。
「弔い、ですか?」
「ま、そんなところだ。行こう」
実験場がそんなところにあったとは。灯台下暗しとはこのことか。巌は心の中でつぶやいた。鳳雛の家にたどり着くと子どもたちが嬉しそうに駆け寄ってくる。
「いわお! あそびにきてくれたの?」
「ごめんな、カリンさんいるかな? ……そんな顔するなって、用事が済んだら遊んでやるよ」
「ほんとう!? でもかりんさん、さいきんずっときてないの」
「来てない? ずっと? 分かった、ありがとな。おい、隼人ー……」
隼人が子供たちに両腕を引っ張られている。
「やめろ、引っ張るなぁ!」
「コラ、離してあげな」
「えー」
「隼人兄ちゃんはな、ウンコを我慢してるんだ、離してやんな。ここで漏らされたらイヤだろ?」
「ヤダー! きたなーい!」
巌の機転で隼人も危機を脱することができた。しかし隼人は複雑そうな顔をしている。
「……ああするしかなかった」
「別にいいですよ。……入口こっちです」
扉を開けるとたくさんの羽根が飾られた部屋。しかしここは地下ではない。
「ここ羽根の部屋じゃん。地下室って言ったよな?」
「隠し階段があるんです。えーっと……ここだ」
部屋の隅のロッカーをどかすとそこに扉があった。扉を開けると本当に地下に階段が続いていた。
「ロッカーの裏にこんなもんがあるとはな」
「行きましょう」
薄暗い急勾配の階段を転びそうになりながら下っていく。下りきった先に光が見えた。とうとう辿りついた、地下室だ。しかしまだいくつも扉があるどこが実験室だろう。
「どの部屋に彩がいるんだ?」
「それは俺にも……むぐっ!?」
巌が慌てて振り返るがそこに隼人の姿はなかった。
「隼人? おい、隼人!」
「隼人はここにはいないよ」
実験室の中にいたのは5人の男女、全員鳳雛の家の同朋だ。罠を張って待ち構えていたということだ。
「モッピーから聞いたよ。彩のために玄雄を殺したんだろ?」
少女が問いかけるのと同時に隣にいる少年が手をヒラヒラさせる。その態度が余計に巌をイラつかせた。
「だから何だ。彩を返せ」
「それはダメだ。奥で空飼さんが実験中だ」
「……! 彩をどうするつもりだ!」
巌は激怒した。答えを聞く間もなく雷撃を飛ばす。
「直情的だな……。多喜治」
「言われなくても」
少女の指示を受け、多喜治と呼ばれた少年が透明なバリアのようなものを張り、雷撃をはじき返す。
「ちっ……面倒くせえな……」
「面倒くさいですむかな? 紗希、樹」
「うん」
「よし来た!」
今度は大人しそうな少女と元気のいい少女が指示を受ける。強烈な閃光が部屋を包む。目がくらんだ隙に槍のようなもので体を貫かれる。中翼は死守したがかなりの痛手だ。
「彩のことなら心配しなくていい。殺しはしないから」
「そういう問題じゃ……ねえんだよ……」
血を吐きながら飛びかかり雷撃を20発撃ち込む。
「無駄なことを……。さっき俺のバリアに防がれたのを忘れたか?」
雷撃が再び防御される。
「忘れてないよ」
巌の羽根が回転しながらバリアを突き破って5人に突き刺さる。
「やっぱりな、貫通力のある攻撃なら通じるってことか」
「……もう見抜いたか」
「さっさと彩を返せ」
「この程度でいきがるなよ? 1対5だ。お前に勝ち目はない」
「1対5、ね……へっ……どうかな……」
「千切、見てらんないぜ。トドメ、刺してやってもいいか?」
「いいよ樹。殺さない程度なら」
「りょーかい!」
槍のように変化した羽根が巌を貫こうとする。
ここまでか。でも後の準備はしておいた、彩を助けてくれよ。
心の中で受取人不在のメッセージを発信した。槍が巌の体を貫いた。
巌を襲った5人組
押鳥千切:偉そうに指示とか出してるし多分リーダー格の女の子。
吉備野多喜治:バリア張ってた男の子。すぐ突破されてたけど大丈夫?
筒木樹:巌を貫通させた女の子。
青尾紗希:消去法で多分この女の子が閃光とか出してた。
モッピー:こいつ何してたの?巌煽っただけじゃん。そうか、名前的にマスコットに違いない。




