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ソラノヒメゴト  作者: ひつじのポスト。
9/10

別れは朝焼けとともに

あれから奏楽は少年とうまく話せないままだった。




 だが、あの問いかけを口にしないままほんの数分時間を置くと


次第に少年は何事もなかったかのように初めのころと変わらない


はしゃぐような笑顔を見せ始めた。



 しかし、以前のはしゃぎとは少し違ってあの一瞬に見せた哀し


そうな寂しさはまだその瞳に残っているような気がした。




『さて…と そろそろかな…』


「え…?」


黙り込んだままずっと隣り合っていた奏楽と空だったが、なに


かを察した様に突然、彼は奏楽の隣を立った。



『奏楽 どうしても…、伝えておきたいことがあるんだ』


「え?」




 哀しそうだけど、何処か真っ直ぐで。


真剣な目はなんだかくすぐたっくて視線を逸らしたかったが、何


かを伝えようとしている空にそんなことをしてはいけない気が


して。


 奏楽も、まっすぐに空を見つめ返した。


決意を固めるようにひとつ、大きな深呼吸をして


空はゆっくり語り始めた。



『ここは…奏楽のたった一夜の夢にすぎないんだ』


「………」



意味など、理解はしていなかった。


奏楽はただ、懸命に続きを綴ろうとする空の言葉を待った。


『奏楽…さ、オレがもしこの姿が本物じゃないって言ったら…

ほんとのオレ、なんだと思う…?』




    人間である 空 の姿は、本当の姿じゃない。




跳ねるような黒髪も、はしゃぐように笑って見せた顔も


本物じゃないとして…


自分に似た寂しそうな声。


ひとりは   ひとつぼっちは嫌だと泣いていた声は…





         まるでーーー…




「…………”そら”、かなぁ」




 陽射しの差し込む空を見上げて、ふと浮かんだ答えが口をつく。


その問いの答えだけはなぜか手に取るように迷わず答えた。


『な、なんで………』


 奏楽の答えが予想外だったのか、空は驚きを隠せないといった様子で――……………いや、違った。


驚いたというより、泣き出しそうな顔に近かった。


そしてそれは、悲しいという感情からの涙ではない気がした。





「分からない。分からないけど、解る気がするんだよ…似ている気がするから」


『似てるって……同じなのは名前だけなのに?』


「そうじゃないよ」




 涙目できょとんとして首をかしげる空は、なんだか少し可笑しく思えて、奏楽はくすりと苦笑いをした。




「 僕らは、独りが怖いことを誰より知ってる。

そして独りじゃないことのしあわせを誰より解ったじゃないか」


『あ……』




 自然な声をこぼす、空。


 その姿がぼやけ始め、突然、視界がぐらつきだす。


景色がゆがむように霞んで揺れるような感覚になる。






朝の訪れ。




夢は  ……覚める。











          ―――…サヨナラも、交わせないままで。

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