知れないキモチ
『な 奏楽!音楽ってすき?』
「ああ すごく好き」
『じゃあさじゃあさ! 詩とかってすき?』
「もちろん!」
同じ名前。
ただそれだけが、二人を強く結びつけるかのように互いが互いのことを知りたがった。
話せば話すほど… 知れば知るほど…
似た者同士の、二人のソラ。
『すきな言葉は??あ、じゃあこれいっせーのせな』
「いいよ。いくよー…」
話の止まらない空に、少しだけくすりと可笑しそうに笑いながらも奏楽自身、
そんな時間を楽しんでいた。
『「いっせのーせ… ソラ!!」』
『おお やっぱり同じ!』
ただ、これだけのことに喜ぶ空。
柔らかな陽射し。
優しく吹き抜ける風。
そして、隣で笑ってくれる人のいる穏やかで…、幸せな時間。
ここにきて初めて、そんなことを考えていたそのときだった。
急に黙りこんだ奏楽に気づいたのか、少年ははしゃぎたてる声をやめ、
さっきまでとは違って呟くのような小さな声で奏楽に問いかける。
『……奏楽』
名を呼ばれてようやく、空がはしゃぐのをやめたことに気づく。
『ここ来るの、初めて?』
「え? あ、ああ…。そういえば、ここはいったいどこなの?」
『……………。』
途端に、あれほどはしゃいでいた空が目を伏せる。
「空…?」
真下ではなく、少し横目に伏せられた目を合わせようと、
ひょっこり顔を下から覗きこもうとして気付いた。
愁いを帯びた瞳。
霧に差し込む陽射しが、空の大きな瞳にも反射してそれはとても綺麗だというのに、
とても、儚げに見えた。
どんな励ましの言葉もきっと、
今の空の瞳を晴らすことはできない。
どんな綺麗な言葉もきっと、
今の空の心より儚く映るものはない。
「そ、そういえばなんだかおなかがすいてきたねー」
ありきたりな、見え透いた話題作り。
見えない、知れない空のキモチ。
その姿にどう声をかけたらいいか分からなくなって奏楽は、
ただこの問いをなかったかのように忘れようとすることぐらいしか思いつかなかった。




