もう一人のソラ
柔らかに降り注ぐ陽射しに目も慣れ始めると、
こちらを見下ろす少年の顔が少しわかるようになってきた。
白いTシャツに右と左にポケットが一つずつついたような、
とてもシンプルな半パンを組み合わせた格好。
ところどころ跳ねている黒髪の、同い年くらいの男の子のようだった。
『どうしたの?もしかして…、立てない?』
今まで聞いたようなどの声とも違う。
とても優しそうで、子供らしい少年の声。
そんなことばかりに気をとられていて、奏楽は少年の問いに答えることができずに少年は奏楽が口を開こ
うとする前に、先に手を差し出した。
「あ え…、ごめん。その…、ありがとう」
一人でも立てたが、気を遣ってもらった少年に対し、
奏楽は照れくささのようなものを感じながらも小さく礼をいった。
『どういたしまして。ねぇ君、名前は?』
すると、少年もはにかむように頭の後ろに両腕を組んで、笑って見せた。
「あ…、僕は奏楽。
『奏でる』に、『楽しい』って書いて奏楽。君は?」
書いて見せるように左手のひらのうえを指でなぞるようにして答えながら、
奏楽も少年と同じ問いを返した。
「そら!!そらっていうんだ!?」
「え…?」
奏楽の答えを聞いた途端目を輝かせて、
少年は何がなんだかよくわからない奏楽の両肩を強く掴んだまま、こう答えた。
「オレ…、オレもだよ!!
そのまま一文字で、空!!」
「……!!」
驚きを隠せない奏楽に、目の前の空はただひたすらに眩しい笑顔を振りまいて笑った。
そら…。
そらって名前なんだ…。
同じ名前の少年に出逢った。
ただそれだけの偶然。
いや、ただそれだけの”できごと”が奏楽にはどこか”とくべつ
”な名前に聞こえる響きだった――…。




