第63話 覚悟を魅せる場所
あけましておめでとうございます(おせぇっ!)
――有り得ない。
なんだあいつは! なんなんだあいつはッ!?
「っ! は、颯よ駆けろ! ビットブルームッ!」
俺の正面の空気が形を成し、いくつかの風の弾丸となって次々と目標に向けて空を駆けていく。
俺が放った魔法は風の弾丸で相手を穿つ単純な魔法だ。
だが俺は修行の末、少ない消費でそれを連発できるようになり、詠唱も随分短縮させた。俺の得意魔法、必殺魔法と言ってもいい。
幾多の風弾は避けるには難しく、弱い魔物相手になら十分致命的になり得る威力を併せ持つ。
今まで数多の魔物をこの魔法で屠り、屠れずとも多くの隙を作ることが出来た。後は仲間か、俺がもっと威力のある魔法でトドメを刺せば終わるのだ。
仲間も頼りになると言ってくれ、俺自身頼ることも多く、目立った弱点も無い必殺魔法。そのはず、だった。
『おおっ!? 少女剣士、迫る魔法の全てを剣で斬る! 斬るッ! 斬り払ううぅう!! 迎撃をものともせず、真っ直ぐに魔術師に向かって行きます!』
「くそっ……!」
司会と、その現実に思わず悪態をつく。
そう、あのガキは俺のビットブルームを見て怯むどころか、自分に当たりそうな風弾だけを見事に斬り払い、真っ直ぐにこっちに向かってくる。
無色透明の弾丸を見切るだけに飽き足らず、それを真っ向から打ち破り、更に少しも減速する様子さえ見せない。
(人間業じゃねぇっ!)
最初にあのガキを狙ったのは、ただ単に少しムカついたから。
仲間に頼りにされつつも、俺の経験はまだ浅く、ランクは低い。そんな俺に仲間達はよく気を遣ってくれる。このクエストは俺にはまだ早いだとか、相性が悪いだとか……!
気遣いなんて、俺は望んじゃいなかった。ただ、対等に、一緒に居たかった。
だからこそ、俺はこの大会に参加した。俺は守られるほど弱くはないと、肩を並べて戦えると、示す為に。
そんな意気込みで参加した俺に、あのガキは酷く癪に障った。
まだ何も背負っても無さそうなガキが、ふざけた場所に位置取り、ふざけた宣言をブチかます。ふざけんなとしか言いようがない。
甘やかされて育ったのか、多少才能があって増長したのか。そんなガキの事情に興味はない。
ただ教えてやろうと思った。ここは遊戯の場所じゃなく、真剣な、それぞれの覚悟を魅せる場所なのだと。
もちろん手加減はした。まぁ俺の他にもあんなに集中攻撃されるとは思わなかったが。けどそれは自業自得だと思って、せめて死なないことを祈った。
次の瞬間までは。
「ぐうっ! 空に住まう雷龍よ! その権能の一端を顕現させろ! ボルテクスッ!」
構えた両の手から、雷電が迸る。
俺の切り札とも言うべき、雷魔法。実際の威力と比べると些か大げさな詠唱だが、いずれそれだけの威力を出して見せるという意思表示のようなもの。
だが、現時点でも威力は折り紙つきだ。Dランクの魔物相手にも通用するこの魔法は本来、人に向けるものではない。
ましてや相手は幼い少女……とは、もう思わない!
「食らえっ!」
雷龍の権能、もとい、雷魔法を解き放つ。
それは雷速をもって、少女に迫る。
最悪、避けられるだろうと思っていた。先ほど彼女は別の魔術師から雷魔法を撃たれた際も、相対している人間をぶん投げて盾にするという離れ業をやってのけたのだ。
動きを阻害できれば上等。そこにビットブルームの連打を叩き込んでやろうと思っていた。
しかしどうして、少女は意外な行動に出た。
「――ッ!? 何を!?」
少女は足を止め、雷撃に向けて腕を交差させる。
まるで雷撃を防ごうとしているように見える。だが、そんなことは不可能だ。雷撃を防ぐなんて、出来る訳が無い。
そう、心の中で叫ぶ。だがそれと同時に、心のどこかが訴えていた。少女は……アレは、普通ではないと。
俺は次の魔法の準備も忘れ、ただ呆然と雷撃の行く先を見守った。
かくして、雷撃は少女へと至り、周囲に雷鳴と稲光が轟いた。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
……うむ、なんといえばいいか……。永く放置して本当にごめんなさいm(__)m
久方ぶりのゲームやアニメ漫画ラノベ他に溺れ、いつの間にかひと月……うん、マジですいません(汗
あれですよ、うたわれ最高っすよ(反省なし)
ともあれ、そろそろ復帰していく所存です。
本作は以前同様に数日ごとの不定期更新予定です。
では、読者に迷惑をかける問題作(というより作者が問題児)ですが、今後もよろしくお願いいたします。




