第61話 試合……開始ッ!
「――いつでも、かかってこーいッ!」
そう叫びながら、剣を抜く。いや、まだ試合開始ではないけどね。
相変わらず歓声の降り注ぐ中で、その叫びはどれほど届いただろうか。何人かはしっかり聞こえたのか、それとも雰囲気で察したのか、明らかな敵意を向けてきている。
場所を決めたのは私でだったようで、会場には17人の参加者達が出揃った。それを認めた観客席の一角にいる司会者らしき人が魔道具を持って音頭を取る。
『さあ! 今ここに第57回ギルド公認闘技大会、その初戦の参加者達が出揃いました! 例年と比べて少々珍しい開戦になりそうですが、そろそろ開始したいと思います!』
少々珍しい、というのは間違いなく、中央に位置する私のことだろう。そりゃあ、闘技場のど真ん中にいるのが13歳の少女とか、普通無いよね。
『果たして参加者140名の頂点に輝くのはいったい誰なのか! 我らが国王様も特別観戦席から見守っておいでです!』
「国王……?」
気になる言葉を聞き取り、観客席を見渡してみる。
すると明らかに一般の観客席から隔離され、屋根付きの特別席といった場所に座している初老の男性と妙齢の女性が目に入る。女性の方は皇后様だろうか。王様と比べて随分若いけど。
他にも、傍に若い人が何人か目に入る。単純に考えるなら王子王女さんだけど、まあ、どうでもいいか。
とか失礼なことを考えていると、その中の1人、私と同い年くらいの女の子と目が合った……と思う。距離は遠いけど。
その子がにこっと笑いながら手を振ってきたのでこちらも振り返す。不敬だろうか。いや、無視する方が失礼だよね。
まぁとにかく、可愛い応援も貰ったことだし、気を引き締めていきましょうか。ただでさえハンデありありの位置取りなんだし。
『では、予選の説明を致します。参加者は17名前後。これは参加人数の都合上、試合ごとに多少変化しますのでご了承ください』
再び司会の声が響く。
そう言えばまだ説明らしい説明を受けてなかったことを思い出した。
『そして肝心のルールですが、厳格なルールは一切ございません! 剣術あり、魔法あり、罠や不意打ち、何でもアリアリであります! 敗北条件は意識を失うか、降参を宣言することのみ!』
無差別バトルって事か。そういうところも実戦形式。楽しめそうだね。
『この予選から本戦に進めるのはたった16名! 各予選試合で最後まで立っていた2名ずつが本戦へと駒を進めることが出来ます!』
「2人?」
普通1人ずつじゃない? と疑問を抱くが、すぐに答えを察する。
(予選で事実上の決勝戦、みたいなことが起きるのを防ぐ為か。仮に同じブロックに優勝候補が固まっても可能な限り本戦に持っていけるように……)
なるほどどうして、エンターテイメント性に結構拘っているらしい。まぁ冒険者の腕試し大会ってだけよりは、面白いに越したことは無いよね。
そんな感情を抱いていると、司会が少し重めに声色を変えながら続ける。
『ただし、対戦相手の殺害は原則禁止となります! 明確にその意思があったかどうかで判断は分かれますが、失格もあります! 悪質な場合は最悪その場で騎士団にとらえられ、投獄されることもありますのでお気を付けください!』
なるほど。一般的な客もいるし、残酷なのは極力避ける、と。
言い方からして、普通の戦いの末に運悪くそうなった場合なんかは失格にはならないのだろうし、良くも悪くもやり過ぎを抑える程度の意味合いなのだろう。
まぁもちろん、私は相手の命を奪うつもりはないし、奪われるつもりもない。誰かが死にかけたら回復魔法をかける。
無闇に人が死ぬのはやっぱり、日本人的に看過できないよね。
『そして戦いの場ですが、皆様もお気づきの通り、広場には様々なギミックを盛り込んでおります! 岩場に林に泥地帯! 各々が戦いを有利に進める場所をいかに確保出来るかが勝利の鍵となります!』
「あー……」
司会さんがそんな事言っちゃうもんだから、明らかに不利な位置にいる私に向けて同情とか哀愁の漂う視線が向けられている……気がする。
別にいいけどね。どうせ、そのまま終わらせるつもりなんてないし。
『説明は以上となります! 大変お待たせしました! それではこれより、予選第1回戦を始めたいと思います! 参加者の皆様、観客の皆様、準備はよろしいですか?!』
ようやくか、と剣をしっかりと握り直す。他の参加者達も、いつでも動ける様に剣や杖を構えた。
『では、予選第1回戦……――始めッ!』
場内に響く、開始宣言。
そしてその直後、私に向けて幾多の攻撃魔法が殺到した。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
活動報告にも記載しましたが、本日帰国しました!
とはいえ年末はプライベートの忙しさもあるので、毎日更新とはいかないかと…。




