第59話 決して舐めプじゃないよ?
『闘技大会参加者の皆さん、まもなく予選が始まりますのでご準備ください。出場者以外の方は退出願います』
会場内に、ややくぐもった大きな声が響き渡る。
日本で言うところのマイクスピーカーを通したアナウンスだが、当然そんな機械はこの世界に無い。
セリナに聞いたところ、声を大きくして響かせる魔法。それを込めた魔道具を使っているそうだ。ご都合主義万歳である。
「さて、じゃあ私は観客席に行って待ってるね」
「はいはーい。私と当たる可哀相な人を応援してあげてね♪」
「冗談にならなさそうで反応に困るわ……」
そのアナウンスを聞いてミシェルと別れる。
今私たちがいるのは闘技場の控え室。室……と言っても数百人入りそうなくらい大きいけど。
闘技場の構造は日本のスタジアムとそう変わらない。中央に広大な広場があってその周囲を観客席が囲む。その下にこの控え室やら医務室やら、その他諸々が入る構造だ。
「さて、まずは予選か。予選の方法は決まってるの?」
「……基本的にこれといって決まっていない。参加人数に応じて毎年の開催者が決める」
「なるほどですわ。今回は参加者150人ほどと聞いてますが、例年に比べて多いのでしょうか」
「……ここ数年は人数も増えてるらしい。去年は確か100人と少しぐらい。ちなみに去年の予選は十数人ずつでの乱戦だったはず」
「まぁ、人数を減らすには手っ取り早いね……」
少々雑な方法だけど、この手の大会では由緒正しい方式だと前世の聖書にも描かれている。何の問題も無い。
『参加者の皆様。入場の際、番号の書かれた札を渡されたと思います。その番号で呼ばれた方は会場へお進みください!』
大会にある程度詳しいセリナに色々聞きながら待っていると、再びアナウンスが流れる。
それを聞いて私たちは自然と自分の札に目をやった。
「……92番」
「私は17番だね」
「わたくしは135番ですわ」
言うまでも無く、私たちが会場に来たタイミングは同時である。それでこれだけ番号が違うということは、完全なランダムで配布したのだろう。
「この番号順で始めるなら、最初は私かな?」
「……たぶんそう。予選で当たらなさそうでなにより」
「そうですわね。イロハさんに負けるつもりは毛頭ありませんが、出来ることなら本戦で剣を交えたいですわ」
三者三様の感想を浮かべる。ただ、セリナだけが気の毒そうな目でアリアを見ていた。
「なんですの?」
「……そっか、知らなかったっけ。なら教えてあげる。イロハは魔術師。あと馬鹿魔力持ち」
……ああ、そう言えばアリアには剣術しか見せてないか。一緒に受けたクエストも、今のとこ家庭教師だけだもんね。
「……マジですの?」
「……マジ」
世界観壊れるような言葉を使うなそこ。……いや教えたの私だけどさ。
剣でリベンジを果たすつもりだったのに、私が本来剣士ですら無いことに落ち込むアリア。慰めでは無いが、一つ、私の意思を伝える。
「ああー……でもまぁ、私今回は魔法使うつもりは無いよ?」
「……? どうして?」
「えっと……」
問いかけられて答えに詰まる。
いや、実際は手加減が面倒とか、やり過ぎる可能性があるとかって理由なんだけど。けどそれを口にしたら嫌味が過ぎるし……。
「ほ、ほら私、剣術の素養は無いでしょ? 身体能力に頼ってるだけで。いい機会だしこの大会で鍛えれたらなぁ~って」
「…………」
セリナからの疑いの眼差しがすごい……。理由自体は尤もだと思うのだけど。アリアも頷いて納得してるし。
どうしようかと考えているところに、助け船のように三度アナウンスが鳴り響く。
『それでは、10分後に予選を開始します。番号札1番から17番の方は会場へとお越しください』
「いきなりかぁ。ていうか随分中途半端な区切りだね」
「本戦に進める人数は決まっているのでしょうし、単純に参加人数を本戦出場人数で割った結果ではないですの? 今回も乱戦だと仮定するなら、ですが」
「……多分そう。まぁどうせ勝つから関係無い」
セリナが挑発的な言葉を放つ。一瞬で周囲の視線が突き刺さるが、見た目で取るに足らないとでも判断したのか、すぐに興味を失ったように視線は散っていった。
セリナを見た目通りと侮ったら痛い目見るよ。なんせこう見えてじゅうななさ……それはいいか。
「さてと……それじゃ、お先に行ってくるね~」
ここまで来て遅刻は笑えない。迷うことは無いだろうけど、早めに出て会場を見ておくのも大事だろう。
「……いてら~」
「応援していますわ。控え室の私たちは見れないのが残念ですわね」
それぞれの感想を戴きながら、他の参加者に紛れて控え室を後にした。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
初戦から引っ張っていきますw
次回こそ、試合が始まる……かな? どうだろう(汗)
『オーバーセンス』の方も執筆中です。もうちょっとチェックを済ませたら投稿するつもりです。




