第44話 王都のギルドマスター
「うわぁ……!」
その壮大な光景に、目を奪われる。
馬車上から目に入ったのは大きく高い城壁に囲まれた都。そして、その奥にさらに高く聳える王城。
前世での漫画やアニメに劣らない、ファンタジーを体現した光景だ。
あの中に何が待っているのか。どんな出来事や出会いがあるのか。
尽きぬ期待を抱きながら、私達は王都の門をくぐった。
「それでは皆さん、ありがとうございました。道中、想定外な事態もありましたが、おかげさまで何とか王都まで辿り着けました」
「なに、こっちは依頼されたことをこなしただけだ」
エルナーさんが感謝の言葉と共に頭を下げると、バラスさんが何ともテンプレな答えを返す。
これで今回の護衛任務は完了かな。例の一件以外、馬車の上で寝てただけだけど……。
「イロハちゃん達も、ありがとう。また何かあったら、君たちに指名依頼を出すよ」
「あはは……私はまだGランクですよ?」
「君なら直ぐに上のランクにいけるだろう? 僕はこれまで多くの冒険者を見て来たからね、保証するよ」
エルナーさんがなかなか嬉しい言葉を掛けてくれる。
「そうですねぇ、案外近いうちにそうなるかもですよ? だいたい1週間後ぐらいに」
そう、冗談のように返す。
エルナーさんは一瞬首を傾げるが、得心がいった様に頷いた。
「……ああ、なるほど。闘技大会に出るんだね? 確かにギルドにアピールするには絶好の場だね」
あ、やっぱり闘技大会ってそう言う認識なんだ。
じゃあ私と同じ考えの人が結構出場するのかな?
「……優勝準優勝は私達で決まり。直ぐに王都中に名前を売って見せる」
「あはは、それは困るな。そうなったら君たちに依頼を出すのは高くつきそうだ」
そうやって冗談を言い合う。……そう、冗談。エルナーさんにとっては、ね?
私達は、至って本気だけど。
「おい。そろそろいいか? ギルドに向かうぞ?」
笑い合っているとバラスさんが割って入る。
そうだった。あの一件を報告しなくちゃいけないんだった。
「ごめんなさい、すぐ行けます!」
そして私達はエルナーさんと別れ、ギルドに向かった。
「ジジイはいるか?」
ギルドに入るなりバラスさんが受付の人に話しかける。
いきなり過ぎる気もするけど、内容が内容だ。受付さんもそれを察したのか、すぐに答えてくれる。
「いきなりですねバラスさん……。ガルバさんなら仕事中のはずですが、呼びますか? それとも……」
「いや、時間が惜しいから直接行く。それと、幹部連中にも声を掛けて欲しい」
「……それほど、ですか。承知しました。今は自室にいらっしゃるはずです」
「感謝する」
バラスはそれだけ言って、遠慮なくギルドの2階に足を踏み入れる。本来はギルド関係者以外立ち入り禁止のエリアだ。
「いいんですか? 勝手に入って……」
「ああ、バラスはここのギルドマスターと個人的に親しくしてるから。でもホントはダメだからね? 真似しちゃだめよ」
ふと思った疑問に、ライラさんが応えてくれる。
王都のギルドマスターとお知り合いとは……バラスさんは実は偉い人だったりするのだろうか。
そうして黒鬼の2人と私、セリナ、ミシェルの計5人で訪れたのはギルド2階の奥にある一室。
バラスさんが扉のノブに手を伸ばしたところで、後ろから声がかかる。
「やあバラス。南方に遠征してると聞いてたけど、もう帰ってきたのかい?」
それは青年と言っても通じそうなほど、若々しいお兄さんだった。
けれど、纏っている雰囲気はどことなく得体が知れない。或いはわざとそう装っているのか。
「よぉサボり魔。お前がギルドにいるなんて珍しいな? まぁちょうどいい、お前も来い」
言いながら、バラスさんはノブを回した。
「なんじゃい。ノックぐらいせんか」
「悪いなじいさん。緊急だ」
「緊急じゃなくてもノックせんじゃろお主は! ……ったく、それで? 要件はなんじゃい」
部屋の中にいたのは、ハg……坊主頭のおじいさんだった。どこかの仙人様みたく、髭だけはずいぶん立派だ。
机に向かって事務作業していただけみたいだけれど、ただそこにいるだけで妙な迫力がある。
結構なお年寄りみたいだけど生気に溢れていて、生涯現役を体現したような人だ。こないだ見た陰気なおじいさんとは正反対。
「ああ……とまぁその前に、簡単に紹介だけしとこうか。こいつらは俺が受けた護衛クエストで共闘した新米どもだ」
「え? あ……イ、イロハです」
「……セリナ」
「ミシェルです」
突然話を振られた為に少しばかりキョドりながら答える。
「僕はこのギルドのサブマスター、ナルディだよ。よろしくね」
「儂はギルドマスターのガルバじゃ」
ギルドのマスターにサブマスター……王都ギルドのトップ2!
ギルドは各国、各町に支部が点在する機関だけど、首都でのそれは、当然ながらその国で最大級の規模だ。そこのトップ2となれば、それはこの国におけるギルドのトップ2と言って過言ではない。
突然そんな大物と引き合せられ、頬をヒクつかせるのを止められなかった。
「まぁ自己紹介も終わったとこで、本題だ。今回の護衛クエストでヤバい連中とやりあってな……」
こちらの心境をよそに、バラスさんは話を進めるのだった。
拙作をお読みいただき、ありがとうございます。
活動報告に投稿しましたが、『オーバーセンス』の方、1週間ほど休載させていただきます。
楽しみにしていただいている方には申し訳ありません。
次回は来週土曜日に投稿予定です。
おそらく、本作は今のペースで投稿できると思います。




