第43話 不穏な影
13日の投稿に間に合わなかった……。
0時投稿だからセーフ?
「黒ずくめの老人か……」
「おそらく、あの老人が魔物達を指揮していたんだと思います。どうやったのかはわかりませんけど……」
夜、街道脇に馬車を停めて野営の準備を整えた後、商人達も含めた全員で昼間の出来事について話し合っていた。
「イロハちゃんが追おうとしたらスケルトンナイトが立ち塞がったって話だし、魔物と組んでいるのは間違いないでしょうね」
「でも、そんなの今まで聞いた事もありませんよ? ただの人間が、魔物を操るなんて……」
各々で意見を出し合う。
魔物を操るかどうかの真偽はともかくとして、とりあえずはあの老人の脅威はある程度、理解してくれたと思う。
「……危険な連中」
「そうね。私もイロハちゃんに庇って貰えなかったらどうなってたか……」
「なんにせよ。これはもう俺達だけの問題じゃない。王都に着いたらギルドに報告して、警戒態勢をとるべきだ」
バラスさんがそう言って纏める。当然、それに対して反対意見はない。
私も、それに頷いて賛意を示した。
「……それともう一つ、重要なことがあるわ」
話は落ち着いたかと思われたが、深刻そうなライラさんの声で、再び空気が張り詰める。
まだ何かあるのか、と周囲からの視線を一身に受け、ライラさんはビッと指差した。
……私を。
「イロハちゃん! 一瞬しか見えなかったけど、あの光の壁は何! 魔法よね? 魔法でしょ!?」
「ふぇっ!?」
あんまりな不意打ちに変な声が出た……いや、それは置いといて。
「な、なんのことだか……私はあの黒い魔法を身体で受け止めただけ、ですよ……?」
そう、私は魔法を受け止めただけ……魔力の壁も幸か不幸か一瞬で破られたし、確証を持てるほど視認出来なかったはず。
「あれを生身で受けられる訳ないでしょ! 感知が得意じゃない私でさえとんでもない魔力を感じ取れたほどなんだから!」
「ぐぅ」
正論です。ぐうの音も出ないほど正論です。出たけど。
私が言葉に詰まっていると、もう1人の鬼からも追い打ちが掛かる。
「……そういやあの時、オークを一瞬で両断してたよな? 片手で」
「えぅ……」
黒鬼2人からの訝しげな視線が突き刺さる。
……どうしたものか。いっそ逃げるか。
「さぁ、吐きなさい? しかも無詠唱で発動したわよね? どうやったのかしら?」
ライラさんがじりじりと寄って来る。
その表情は昼間と同じ……よし、逃げよう。
「……そこまで。他人の技術に探りを入れるのはマナー違反」
「ライラさん、これ以上はダメ」
本気で逃げようかと思い始めたところで、セリナとミシェルの助けが入る。
ありがとう2人とも……けどセリナ、あんたが言うな。
「ふふっ。冗談よ」
ライラさんがくすくすを笑いながらそんなことをのたまう。
いやー嘘だね。眼がマジだったね。色んな意味でマジだったね。別に怒りはしないけどさ。
「まぁ冗談は置いといてだ。明日からの行程だ。明日から馬の速度を少し上げる。急いでギルドに報告しないと、被害が出る可能性があるからな。文句がなけりゃ、これで今日は解散だ」
バラスさんがそう言って締める。それにも反対意見は出ない。
やっぱりこういう時、経験豊富な人は頼りになるね。ライラさんも……まぁ、一応。
そして明くる日、私は最後尾の馬車から、遙か後ろを見つめながら思い耽っていた。
『焦らずともその答えはじきに知ることになる。嬢ちゃんはその時の、よい目撃者になってくれるじゃろう。儂の勘は、よう当たるでな?』
老人とのやり取りを思い出す。
それだけで全身が総毛立つほど、禍々しい魔力を携えた老人だった。
(“その時”、か。何をする気なのか知らないけど、どーせ良からぬことだろうなぁ)
内心でため息を吐く。
どうして私の周りには、こうも厄介事がついてまわるのだろうか。前世にそう悪いことしたつもりもないのだけれど……。
それも、無視出来ないのばっかりってのが、なおのこと厄介だ。
(あいつの言う通り、“その時”に私も居合わせるなら……覚悟をしないといけないかも)
“イロハ”のままでは、守れないかもしれない。
けれど、だとしても、迷うつもりは無い。
大切な人達を守る為なら、文字通り、全てを曝け出しても構わない。
そう、改めて決意を固めながら、私は馬車の揺れに身を任せた。
馬車隊は一路、順調に王都への道を突き進む。
どうせ王都でも厄介事に巻き込まれるんだろうなと、内心でもう一度ため息を吐いた。
***
「…………」
どこかの森、木々に遮られて太陽の光が届かない鬱蒼とした場所に、それは居た。
「ここにいましたか」
「……ベギラか」
黒いローブに身を包んだ老人の背後に、同じく黒い鎧を着込んだ男が立つ。
老人はそれを解かっていたかのように男の名を呼んだ。
「どうしたのですか、このような所で。見たところ、創っている訳でもなさそうですが……」
「ふむ、少しばかり思い出しておっての。昨日、気になる女子を見かけたものでな」
「……その御歳で、随分な好色家ぶりですね」
男が老人に呆れた眼を向ける。老人はそれを笑って受け流した。
「ひっひっひ。まぁそうじゃのう。いくつになっても、綺麗なモノには惹かれるわい」
あっさりと肯定を示した老人に、男は意外そうに眼を細める。
「ほぅ? そこまで言うとは……それほど綺麗な女性だったのですか?」
その表情に興味を浮かべ、老人に問いかける。
老人はニィと口元を歪めて告げた。
「ああ。大層綺麗な、銀の魔力じゃったよ」
「――ッ!? それは、まさか……! その者はどこに!?」
明らかに狼狽する男。
そんな男を制する様に老人は続けた。
「ひっひっひ。さぁのう? 王都に向かう街道じゃったか。確証はないがの」
「……まさか、逃がしたのですか?」
男が責めるように老人に言い募る。
だが、それでも老人はどこ吹く風と受け流した。
「そう焦らずとも良い。もし、本当にそうなら、いずれまた相見えよう」
老人が愉快そうに告げる。
対してベギラという男はその眼を剣呑に光らせる。
「……王都」
ベギラはそれだけ呟き、老人にも何も告げず、森の闇へと姿を消した。
「……最近の若いのは、せっかちじゃの。――じゃがまぁ、面白くなりそうじゃ」
老人は再び口元を歪め、掠れた笑い声を森に響かせた。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
さて、次回からは王都です。
章編成はしてないですが、言ってみれば”王都編”ですかね。
次話以降も、どうかよろしくです^^ノ




