第27話 そうなんです
「ねぇ、ゴーストスパイダーってどこにいるの?」
今、私達は討伐を依頼された魔物を探し、森を探索している。
当てもなく、ゴーストスパイダーを探して歩くこの状況に若干嫌気が差し、後ろを歩くセリナに問いかけてみた。
「…………」
しかしセリナは“特訓”に集中しているせいか、答えが返ってこない。
「はぁ……」
ため息を吐いて歩みを再開する。
特訓に集中するのはいいのだけれど、そればっかりっていうのもなぁ……。まあ魔法に貪欲なセリナらしいとも言えるけど。
(ちょっと、失敗だったかなぁ……)
内心で呟きながら、再びセリナに視線を戻す。
「…………」
セリナは相変わらず、目の前の魔力球に集中している。
魔力球の維持は何とか出来ているものの、時々それが揺らぐ程度には不安定だ。多分集中を切らせば魔力球の維持は出来なくなるだろう。
その集中を遮るのは多少申し訳なくもあるけど、仕方ない。
「はい、そこまで」
「むぐ……」
セリナの後ろに回り込み、首根っこを引っ掴んで無理やり歩みを止める。
「……なにするの」
「前を見てみなよ」
言われてセリナは前を見る。すると、目と鼻の先に木があった。
「集中するのはいいけど、もうちょっと周りに気を付けなよ。その集中力はすごいと思うけどね」
「……あっ」
言いながら、セリナの手の中にある魔力球を手で打ち払う。それだけで魔力球はあっけなく空気中に散った。
「とにかく、特訓は一旦終わり。というか、歩きながらの特訓は禁止」
「……分かった」
自分でも危険なのは察していたのか、セリナは素直に従った。
けどその眼は魔力球が消えた辺りを未練がましく見つめている。
(おもちゃを取り上げられた子供みたいだなぁ)
内心で笑いながら、子供をあやすように頭を撫でる。
「落ち着いた時にまたやろうよ」
「……ん」
少し気落ちした様子で答える。
ほんとに子供みたいでかわいいなぁ……。え、年上? ……そんな設定あったね。
「で、どうする? 適当に歩いてるけど、ゴーストスパイダーっぽいものは見かけないよ?」
かれこれ2,30分ほど森を歩いているが、それらしきものは見かけなかった。それらしきもの、と言っても姿は知らないけど、多分蜘蛛でしょ。
ちなみに他の魔物とは何度かエンカウントしている。……多分セリナは気付いても無かったと思うけど。
「……町で調べてきた。あれは森の東の方にいるらしい」
「あ、ちゃんと調べてたんだ。流石セリナだね。で、東ってどっち?」
瞬間、空気が凍った……気がした。
「…………イロハ、進む方角考えてなかったの?」
「え、考えるものなの?」
私の言葉に、セリナは頭を抱える。
「……当然。森みたいに太陽で方角を判断できないようなところでは、森に入る前から常に方角は意識しておかなくちゃいけない」
「なるほど。意識していなかったら?」
「…………遭難」
「……」
ひゅるるー、と冷たい風が私達の間を吹き抜けていった。
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