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転生古龍の遊者道  作者: 茜雲
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第18話 仲睦まじく



「……つまり、イロハの魔法技術が高いのはそういう一族の生まれだから? 無詠唱の魔法も?」


「そう、私の一族は魔法や魔力の扱いに長けているの。無詠唱も当然だったから、詠唱の事はミシェルから初めて聞いたくらい」


 ふむ、と私の話を聞いてセリナは考え込む。


「それで、イロハはずっとその集落で暮らしてきたの? だから常識ないの?」


 『だから常識ないの?』という言葉が胸に突き刺さる。


 “常識”はあるんだよ! “知識”がないだけで!


「しゅ、集落じゃないよ。私達の一族は極端に数が少ないし、バラバラに暮らしてるから。実際、一緒に暮らしてたのは母様だけだしね。生まれてから最近までは、ずっとそこで暮らしてたよ」


「ふぅん……。そこから出てきたのは…………ごめん、なんでもない」


 ミシェルが途中で言葉を切る。


 しまった、という表情を浮かべてるあたり、深読みして誤解しちゃったかな。


「ふふ、大丈夫。母様は元気に生きてるよ」


 誤解を解いてあげれば、ほっと安堵を浮かべていた。


「そう、よかった。でも、それならなんで? ……お母さん1人にしちゃってよかったの?」


「まぁあの人は1人だからどうなるって人でもないし。たまには帰るつもりだし、大丈夫だよ」


 勘当を言い渡されてるけどね。まぁ親の言うことを聞かないのが反抗期ってもんだし。


 それにきっと、私に気を遣わせないために勘当を言い渡しただけ……だと思う。多分、きっと……めいびー。


「……カースドの呪いを抑え込んだのは?」


「実際近くで見て分かったんだけど、呪いの元になってるのは持ち主の魔力だったの。それで、もっと強い魔力でなら相殺できるし、呪いごと押し潰せるかなって思って……」


「……無茶する」


 セリナが心配そうな、怒っているような微妙な表情を浮かべる。


 確かに傍から見たらそうかも。私は圧倒的な魔力を有してる自負があったから、呪いに負けるなんて思いもしなかったけど、もうちょっとセリナに気を遣った方がよかったかな……。


 そう思い、右腕にしがみ付いているセリナに、こつん、とおでこを当てる。


「ごめんね? 心配かけて」


「……だから心配なんてしてない」


 そう言えばあの時もそんな風に強がっていたなと思いだす。気付けば、ふふ、と笑い合っていた。


「…………」


「な、なんでしょうミシェルさん……?」


 反対方向からの無言のプレッシャーに堪らず問いかける。


「仲良いよね。2人」


 へ? と我ながら間抜けな顔を浮かべていると、私を挟んでセリナが応える。


「……当然。共に死線を潜り抜けた仲。もう大親友」


「むぎゅ」


 腕だけじゃ飽き足らず、セリナは私の頭ごと抱きしめてきた。


「……むかっ」


 ……それを口で言っちゃうあたり、やっぱり可愛いよね、ミシェルって。


「私だって、一緒に盗賊の砦を抜け出して来たんだから。死線ぐらい潜ってるわよ、死ぬかと思ったんだから」


 ミシェルが死の危険を感じたのは私の飛翔魔術な気がする。あえて言うつもりもないけど。


「一緒のお風呂にも入ったし、私の方が付き合いも長いし!」


 言いながら、ミシェルが体に抱き付いてくる。……本格的に身動きが取れなくなってきたよ。


「はぁ……2人とも、さっき喧嘩しないように言ったでしょ?」


「「……う」」


 そう嗜めるように言えば、2人は黙り込む。


 理由はよく分からないけど、なんでこうもいがみ合うかな。本気で嫌いあってる訳じゃないみたいだけど……。


 考えても答えの出ない疑問を浮かべながら、パチン、と手を叩いて取り仕切る。


「もう本当に夜遅いし、寝るよ」


 もういいか、と引っ付き虫みたいになっている2人を力技で剥がし、ぺいっ、と捨てる。


 『うにゃ』とか可愛い声が聞こえたけど今は無視だ。


 そのまま私はベッドに身を委ね、眠たいアピールをする。こうすればいい加減お開きになるでしょ。


「……んしょ」


「……なんで潜り込んで来るのかなぁセリナ?」


 確かセリナは自分の部屋を割り当てられたはずだけれど……。


「……眠い。自分の部屋までもたない」


 なんて適当な嘘を。自分の部屋は隣でしょうよ。


「よいしょ……っと」


「ミシェルまで……」


「文句あるの?」


 なんでベッドに潜り込んできておいて喧嘩腰なのっ!?


「はぁ……いいよもう」


「うう、落ちそう……もうちょっとそっち寄ってよセリナ」


「……だめ、これ以上は私が潰れる」


 私の言葉なんて誰も聞いてない。私の意見はもう関係ないんだね……。


 ていうかセリナが思いっきり抱きついてきて私が潰れそうなんだけど。とか思っていたら反対側からもミシェルに抱きつかれた。


「し、仕方ないの、落ちないようにはこうしないと……」


 言い訳の様に呟いてるけど、自分の部屋に戻ればいいだけじゃないのかなぁ。


「はぁ……火消すよ?」


「……ん」


「うん」


 2人の了承を得られたところで、魔法で小さな風を起こし、燭台の火を消した。


「……便利」


「ほんとにね。……ねぇイロハ。さっきので、全部?」


 ミシェルが耳元で呟く様に問いかけてくる。


 しっかり聞こえているのだろう、セリナも私の反応を待っていた。


「……ううん。まだ、あるよ」


 ミシェルが言ってるのは私の秘密のこと。


 もちろん、ついさっき話した内容は全て真実だ。大事なところはぼかしてあるが、嘘は言っていない。


 けれど、私の正体、古龍の事については何も言っていない。言う気も、まだない。


 だからせめて、嘘を言わないのが、隠していることを隠さないのが、私なりの誠意だ。


「……ごめんね」


 謝罪を口にする。2人なら、私の意を汲んでくれるだろう。


「……ん。イロハが本当に言いたくない事を聞く気はない」


「同じく。……でも、いつか話せるようになったら、話してね?」


「――うん」


 両手でそれぞれと手を繋ぐ。なんとなく、そうしたくなったんだ。


 3人で抱き合って正直寝苦しい夜になるかなと思ったけど、この夜は意外とすんなりと眠りについた。









 朝起きるとアリアスさんがベッドの傍でにっこりほっこり微笑んでいたのは気にしないことにした。



ご愛読、誠にありがとうございます。

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