第14話 いつか、きっと
「……なるほど。貴方が本当は100年生きた大魔導士で、その姿は研鑽の果てに得た魔法の効果による仮の姿、と。だからそれだけ圧倒的な力があるのね?」
「そう! だから、このことは秘密にしてね!」
私が説明した私の真実。それに対しての確認に、全力で頷いた。
(ふ……、前世で様々な書物を読み漁った私なら、この程度の作り話は朝飯前ッ!)
目の前には私の作り話を聞き、感慨深そうにするセリナ。そしてセリナはふっ、と私に微笑みかけながら、その杖を大きく掲げ――
パコンッ
「すごく痛いッ!?」
「……貴方、あほなの?」
制裁と共に辛辣な言葉を頂いた。どうやら私の賢者の書で得た知識は功を奏さなかったようだ。
「うぐぅ……、痛いぃ……」
私の身体は頑丈なはずなんだけど……。覇気か愛情でも込めてるんですかね。
「……阿呆な嘘は良いから。本当の事、教えて」
大魔導士云々を除けば、概ね真実に近いんだけどね。
でも、実は人間ですらないと告白するのは……。少なくとも今の私にそんな勇気はない……かな。
「……それとも、私には本当の事は言えない?」
「…………!」
私を見るセリナの視線。
私はそれほど空気を読める方じゃないけど、それでもセリナが僅かにでも悲しんでいることは察せられた。
その視線を受けてまで、適当な嘘を吐く度胸もないし、セリナの気持ちを蔑ろにはしたくない。
――けど、それでも。
「……ごめん。本当の事は言えない。……今は、まだ」
「……そう」
残念そうな表情を、セリナは浮かべる。浮かべてくれる。
それに応えたい、報いたいと思う気持ちは確かにある。だけど、それでも、本当のことを言って嫌われたくないと思ってしまう。
「……いつか、話して欲しい。……待ってるから」
「――うん」
話して欲しいと、待ってると言ってくれた。私には勿体ない言葉だ。
いつか、いつか本当に、本当のことを、一切の遠慮も嘘偽りも無く、話せる日が来たらいいなと。そう、思った。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
……はい、言いたいことはわかります。短いですよね。
もうちょっと文字数を安定させろって話ですが、不定期更新作品ということでどうかご容赦を……。




