第15話 その技術は女の子の遺伝子に刻まれているとかなんとか
「着いた~!」
セリナを連れて歩くこと約3時間。
途中、休憩ついでにちょっと探検したり、私をトロール呼ばわりしたセリナと雌雄を決したり、……その他色々あって少し時間をロスしてしまったが、何とか夕刻、晩御飯前にはティラネルに辿り着けた。
「……イロハが馬鹿なことするから時間が掛かった」
「セリナがでしょ? 休憩中、ちょっと目を離した隙にどっか行っちゃうし」
「……目の前を可愛い狐に横切られたらそれも致し方ない」
何その可愛い理由! 許しちゃいそうになるじゃない! ていうか私も見たかった!
「……むしろイロハが変な冒険者の男に引っかかるから悪い」
「引っかかってないし!? ただ道教えてあげただけだし!」
別に初めてのナンパかと思ってドキワクなんてしてないし!?
「ていうかセリナもやり過ぎなんだよ。子供扱いされたからって殺そうとするなんて……」
実際子供なんだし、という突っ込みは控えた。
「……殺そうとなんてしてないし」
ソル・イーダムを使おうとしてたのによく言うね。あの男の人半泣きで逃げてったよ。
「まぁ細かいことはさておいて、これでようやく休めるね。流石に疲れたぁ~」
言いながらグッっと伸びをする。
体力的にはまだまだ余裕だけど。精神的な意味でいろいろね。
「……うん。イロハの宿はどこ? 私も同じとこに泊まる」
「あー……私のは宿じゃなくて……」
しまった、そこを考えていなかった。
私はミシェルの家に下宿している。私としても、このままセリナとさよならなんて本意じゃないけど、世話になっている身で下宿人を増やすのはちょっとあれだし。
ここはミシェルの家だけ教えておいてまた明日、が無難だろうか。
「私は今、フィレット商会ってところで下宿させて貰ってるんだ。だから――」
「……私もそこに泊まる」
即答な上に強引ですね……。けど私にそんな権限は……
いや、家族の様に接してって言ってくれたし、いいのか? いや、あの言葉は好き勝手しろって意味では決して……
私が頭を悩ませていると、服の裾が引かれた。犯人は言うまでもなくセリナだ。
「……だめ?」
「よし、アリアスさんに掛け合ってみる」
涙目の上目使いでか細く呟かれた言葉に、反射的に答えてしまった。
今、私の何が反応した? 母性本能か? 庇護欲かッ!? チクショウッ! 私の負けだよッ! ていうかどこで覚えたのその技術!
「……ありがとーイロハ♪」
あざと……可愛い笑みを浮かべながら抱きついてくる。
「はいはい」
セリナの頭をとんがり帽子ごと、ぽふぽふと撫でる。
お姉さんの完敗だよ。もう私に見えないところであくどい笑みを浮かべてても許すよ。
多分浮かべてるんだろうなぁと内心で呟きつつ、アリアスさんと、ラスボスのミシェルに対する言い訳を考えていた。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
タイの蚊って、耳元通り過ぎても気付かないほど羽音小さいんですねぇ。咬まれて痒い……。
全蚊が無音殺人術習得済みとは恐ろしい国だ。




