第43話
僕は達樹くんと共に本部である官僚低で戦況を聞きながら作戦を立てて指示していた。
首都を丸々使ったこの戦争は、事前に国民に知らせており、住民は一時退去している。
そのため、今この地域に居るのは僕たち反乱軍と国軍しかいない。
前線に立つのは達樹くん率いる元国軍の鉄砲隊。
その脇を抜けて反乱軍が突入する。
国軍の前線をまず制圧し、そこから3方向に分かれて正面から攻める部隊、両脇から回り込む部隊に分かれる。
基本、元国軍は銃による援護を重視。
どんどん深部に向かう反乱軍の勢いを止めようと、一斉に銃を放つ国軍。
正面の部隊の半数が命を落とす中、右翼部隊から連絡が入った。
「こちら右翼部隊。国軍本部の位置を確認。映像を送ります」
暫くすると右翼側の映像が送られてきた。
確かに国軍旗も立っている。
しかしダミーの可能性もあるため、様子を見る為に閃光弾を放つよう指示をした。
その状況をリアルタイムで映像確認していると、やはりそこはダミーの本部だった。
周りには国軍が潜んでおり、反乱軍に一斉に襲い掛かる国軍。
それも予想していたため、反乱軍は一斉に銃を発砲。
国軍の奇襲は失敗に終わり、右翼部隊は前進した。
「こちら官僚低前! 国軍の奇襲部隊を発見。増援願います!」
「正面部隊、一時撤退と同時に官僚低前に向かい国軍の奇襲部隊を挟み撃ちにしろ!」
「援護部隊は正面部隊の援護を」
『了解』
僕と達樹くんが居る官僚低は既に国軍に囲まれていた。
官僚低付近の反乱軍はほぼ全滅。
100人に及ぶ国軍が官僚低を包囲し、突入してきた。
「左翼、右翼部隊に通達。本部が奇襲を受けた。この後は作戦Cに基づいて動くように」
『了解』
共に居た補佐たちは突入してきた国軍に射殺され、僕と達樹くんは身柄を拘束された。
そして、そのまま国軍の本部へと連れて行かれた。
驚いたことに、国軍の本部は僕たちが予想していた官僚低の前方ではなく、官僚低の後方に位置していた。
――――そりゃ包囲されるわけだ。
僕たち反乱軍の完敗だった。
「久しぶりだね、達樹くん」
「お久しぶりです」
「純。やはり俺が言ったとおりの未来が待っていただろ?」
「……」
「まだどうにかして反撃しようとしているのかもしれないが、もう諦めろ。希望の右翼、左翼部隊もご覧の通り制圧した」
お父さんの隣にあるスクリーンに映されたのは分隊長達が拘束されている姿だった。
「さて。大人しく父親の言うことを聞く気になったか?」
「……」
「やれ」
お父さんが部下に指示を出すと、その部下は達樹くんの足を撃った。
「何をするんだ!」
「やっと口を開いたか。お前が何も言わないからお友達が痛い目に合うんだ」
「卑怯だぞ」
「スパイに卑怯とは。お前は自分の存在を何だと思っているんだ?」
「僕は、スパイであろうと兵士であろうと、人を無暗に殺めたくない。そうしてここまで来たんだ」
「その結果がこれだろ?」
「……」
返す言葉が無かった。
沢山の死者を出したのは僕の甘い考えのせいだというのも分かっていた。
でも、それでも出来れば人を殺めずに赤聖国を元の姿に戻したかった。
「純。反抗期はここまでだ。俺の指示に従え」
「嫌だ」
「頑固な奴だ」
お父さんは再び部下に目で合図した。
また達樹くんが撃たれると思い、僕の体を抑えていた男たちを振り払って達樹くんの前に立った。
部下は僕の足を撃ち、そのまま僕を払いのけて達樹くんの頭に銃口をつけた。
僕は再び男達に身体を地面に押し付けられ、身動きが取れなくなった。
「純くん、僕のことはいい。元々官僚だった僕は反逆した重罪人だ。ここで殺されるのは当然の事」
「それは僕だって同じだ。官僚まで行かなかったが、元は赤聖国軍。しかも反乱軍の隊長だ。責任は全て僕にある」
「2人とも分かっているじゃないか。純。お前は反乱軍の隊長という重罪人。全ての責任はお前にある。だから楽になれると思うな。仲間が目の前で苦しみ殺される姿を目と心に焼き付けろ。達樹くん。君は反逆者として苦しみ死んでいくのが使命だ」
号国で優太さんが殺される時と同じ状況だった。
目の前で達樹くんがどんどん撃たれていく。
僕は身動き一つとれず、目を瞑ることさえ許されない状況で見ているしか出来なかった。
「あなた止めて!」
突然お母さんの声がした。
銃声が止んで、達樹くんに駆け寄るお母さんの姿。
達樹くんはお母さんの指示で直ぐに運び出された。
そしてこちらに近づいてくるお母さんを僕はただ呆然と見ていた。
「純を離して」というお母さんの言葉に、戸惑いながらも男達は僕を抑える手を緩めた。
僕は身体を起こしてその場に座った。
「母さん、なんで?」
「あれから私も色々調べていたの。お父さんが黒幕ということがどうしても信じられなくて。でも調べれば調べるほど確信に変わっていくの。やっぱり事実なんだって」
お母さんは悲しそうな表情で話していた。
そして急に僕を抱きしめた。
――――シンコウさんとムウさんがこちらに向かっている。もう少しの辛抱よ。
耳元で小さく話すお母さんの声に僕は少し安堵した。
まだ打開策はある。
「真紀、純から離れろ」
お父さんが銃口を向けたままこちらに近づいてきた。
お母さんは僕を庇うように前に立った。
しかし、これ以上人が傷つくのは見たくなかった僕は、お母さんを避けて前に立った。
「父さん、もう終わりにしよう」




