第44話
僕はズボンの内側に潜めていたナイフを抜いて、お父さんのお腹を刺した。
それを見て慌てた部下達は僕を撃ったが、僕は銃弾を避けるようにお父さんを押し倒した。
背後から男達がナイフで僕の脇腹や足を刺してきたが、急所は外している。
お父さんも僕にお腹を刺されながら、同じように僕のお腹を刺してきた。
3人にナイフを刺された状況で動けなくなった僕の首元に、お父さんの部下が注射を打ってきた。
僕は一気に気を失った。
目が覚めると柵で囲われた檻の中にポツンと放置されていた。
特に拘束されているわけでもないが、檻は頑丈だ。
雨が降ればずぶ濡れになるグラウンドのような屋外に放置状態。
すると、遠くから歩いてくる人影が見えた。
よく見るとお父さんとお母さんだ。
会話が聞こえるぐらいまで近づいてきた頃、向こうも僕が起きていることに気付いた。
「目が覚めたか」
「父さん、これはなんのつもり?」
「ああ、これからお前を公開処刑することになってな。もう直ぐ観客があつまるよ」
公開処刑だと?
本気なのかと疑ったが、お父さんの目は全く迷いが無かった。
お母さんは不安な表情をしている。
すると、後ろから大勢の人影が見えてきた。
大半は国軍で、少人数だが一般市民も集まっていた。
僕の死がそんなに見たいのか。
銃を構えた国軍に周囲を固められた僕は、完全に逃げ場が無い。
お父さんが合図をした時が僕の最後だ。
「最後に何か言い残すことはあるか?」
「達樹くんはどうなった?」
「一命は取りとめたよ。でも命を救ったところでこの先どうなるかは分からんが」
「達樹くんの命だけは救ってくれ。あと、やっぱりあの計画は無謀だよ父さん」
「無謀じゃないさ。もう7割は支配している。もう少しだよ」
「世界を支配したところで、それを引き継ぐのは誰なんだ?」
「後釜は既に決まっている。お前もよく知る人物だ」
「僕も知っている?」
「どうせ死ぬんだ。冥土の土産に教えてやろう。利賀雪斗。彼だよ」
「利賀先輩が…」
すると、人混みを掻き分けて利賀先輩が出てきた。
「久しぶり、純くん。随分立派になったね。と言ってももう死ぬのか」
「利賀先輩が、この計画の後任者ってことですか?」
「そういうことだね。本当は息子である純くんがするはずだったんだけど、やっぱり反乱軍に行っちゃったから」
「そうですか。じゃあ利賀先輩も殺さなくちゃいけない訳ですか」
「何を言ってるんだい? 僕は殺されないよ。君が殺されるんだ」
話が終わったかのように利賀先輩は僕に背を向けてお父さんの横へ行った。
お父さんが腕を振り上げ、僕に向かって振り下ろした瞬間、銃声が鳴り響いた。
目を瞑って死を待っていたが、一向に銃弾が当たらない。
恐る恐る目を開けると、檻にシールドが張ってあるかのように銃弾は檻の外で弾き返されていた。
「どういうことだ?」とお父さんが周りをキョロキョロと見渡している。
すると、観客にまぎれていた反乱軍が一斉に僕に向かって発砲した。
もちろん僕に銃弾は当たらず、檻の周りを囲んでいた国軍が一斉に撃たれた。
殆どの国軍が撃ち殺された頃、檻の鍵を開けてくれた人物がいた。
シンコウさんだった。
「遅くなった。無事で何より」
「シンコウさん、どうして?」
「君のお母さんからの依頼だよ。この檻のシールドもお母さんの細工。今頃ムウさんが君のお父さんと跡継ぎの利賀を拘束しているだろう」
檻から出てお母さんのもとへ行くと、ムウが透国の兵士を従えてお父さんと利賀先輩を拘束していた。
「ムウさん」
「やあ、松田。遅くなって悪い」
「いや、助かったよ」
「純。これで勝ったつもりか?」
「いや、父さんを殺すまで勝ったと思ってないよ」
「今俺を殺しても赤聖国は崩壊の道を歩むだけだぞ。お前に再建出来るのか?」
「やってみせるさ。沢山の人から託されているからね。赤聖国を救えと」
「お前は本当に甘いな。いいだろう。お前がこの先どうやって赤聖国を救うのか、空の上から見ててやる」
僕はお父さんに銃口を向けた。
お母さんはずっと黙って見ているだけで、もう僕を止めようとはしなかった。
僕は引き金を引いて、銃弾はお父さんの頭に命中した。
隣で利賀先輩も覚悟を決めた顔をしている。
「先輩。初めて小学校で会ったあの日から随分変わってしまいましたね」
「そうだね。でもそれはお互い様だよ、純くん」
「すみません」
僕は同じく引き金を引いて、銃弾は利賀先輩の頭に命中した。
呆気ない最後だった。
指揮官を失った国軍は降伏し、反乱軍の勝利となった。
この戦争は全世界で報道され、赤聖国が行ってきた裏での計画が明るみに出た。
僕は赤聖国の長となり、信頼の回復と国の再建に励んだ。




