第40話
黒幕がお父さんだという事実を知らされ、僕は居ても立っても居られずその場から走り出した。
足に傷を負っていることなど忘れて全力で走っていた。
僕の突然の行動に、反乱軍も国軍も誰も追いかけてこなかった。
走って着いた先は実家だった。
ドアを開けると休日で会社が休みだったお父さんがリビングでテレビを見ていた。
突然帰ってきた息子に、キッチンで驚いたような顔をしているお母さんを無視してお父さんの前に立った。
「おお、純。帰ってたのか」
「父さん……」
「……。その様子じゃ、もう聞いたんだな」
「何で! 父さんはスパイの仕事はしてないって言ってたじゃないか! 現に会社勤めしていてそんな時間はどこにも無いはず!」
僕が息を切らしながら怒鳴るようにお父さんに問いただしている姿を見てお母さんがキッチンから出てきた。
「純、何をそんなに怒っているの? お父さんが何をしたっていうの」
「母さんは赤聖国が何をしようとしているか知ってるかい?」
「もちろん知ってるわ。だからスパイをやめて今は専業主婦をしてるんじゃない」
「その計画を指示している黒幕は知ってるかい?」
「それは……」
お母さんは知らない様子だった。
「その黒幕は……」
「俺だ」
僕が言おうとした時、お父さんが被せてきた。
お母さんは唖然としている。
「な、何を言ってるの? お父さんは私をその計画から救ってくれたのよ? もしお父さんが黒幕なら、私みたいな実績のあるスパイは使わなければ損だと判断するはず。冗談はやめて」
お母さんはあり得ないと僕やお父さんの話を聞かない。
しかし何も言わず、ただ真剣にお母さんを見る僕たちの目を見たお母さんは事実だと悟った。
「あなた、本当なの?」
「ああ。俺が計画して全て指示を出していた。初めから今までずっとな」
「どうして……」
お父さんはそれ以上話してくれなかった。
僕は黒幕であるお父さんを殺す決意を持っていた。
胸元から銃を取り出し、お父さんに銃口を向けた。
お母さんは慌ててお父さんの前に立った。
「純! あなた何をしているか分かっているの? 例え黒幕であろうともあなたの父親よ!? 違う方法があるでしょ!」
「母さんは分かってない。ここに辿り着くまでどれ程多くの人が亡くなったと思う? 僕は今、反乱軍の隊長だ。亡くなった涼さんに託されて後を継いだんだ。だから僕は息子ではなく、反乱軍の隊長として父さんを殺さなくてはいけないんだ! 母さん、そこを退けて」
「出来ない。お父さんを撃つなら私も一緒に撃ちなさい」
「母さんは関係ないだろ。父さんと一緒に死ぬ必要なんてない!」
頑なにお父さんの前から動こうとしないお母さん。
僕はここで撃つのは止めて、改めて決着を付けにくると言い残して家を出た。
先ほどまで達樹くんと戦っていた国会議事堂前に向かってとぼとぼ歩きながら僕はこの先どうすればいいのか悩んでいた。
「純くん、難しい選択を迫られるのは分かっていたが、これは君にしか出来ない選択だ」
声がして振り返ると、涼さんが立っていた。
「涼さん? どうして」
「心残りがあって成仏出来なかったんだろうな。でもそう長く居られない」
「純くん、こういう時にそばに居てやれなくてごめんな」
「優太さん!」
「つい最近まで敵として戦っていたが、純くんが黒幕を知ってしまうのを阻止しようという思いもあったんだ」
「卓さん……」
親しかった3人が霊として現れた。
3人は優しい空気で僕を包み込んでくれた。
涼「純くん。俺は赤聖国を守れと言って死んだ。しかしそれは実の父を殺せという意味でもあった。分かっていてその言葉を言ったのは純くんなら乗り越えることが出来ると思ったからだ」
優「号国で君の兄として働いた時、俺は本当の弟のように思っていた。こんな過酷な選択を迫られるなんて知っていたら、もっと生きて近くで守ってやりたかった」
卓「陽国に攻め入った時に立派に反乱軍を従えている純くんを見て俺は確信したよ。君ならこの壁を乗り越えることが出来ると」
涼「僕たちからは言葉でしか伝えることが出来ないが」
『君なら出来る! 赤聖国は任せたぞ!』
そう言うと3人は微笑みながら消えていった。
僕は夢でも見ていたのか?
いや、心が温かい気持ちでいっぱいだ。
尊敬する3人に赤聖国の未来を託された。
僕はもう迷わない。
やるべきことは唯一つ!
決意して僕は達樹くんたちが待つ国会議事堂前へと急いだ。




