第37話
――――――――源くん――――――源くん――――源くん。
誰かが呼んでいる。
「源くん!!」
「大地さん?」
「よかった、まだ生きてた」
「ここは?」
「赤聖国官僚宿舎の地下牢だよ。ちょっと待ってね、今拘束を解くから」
久しぶりに目を開けた気がした。
鎖や手錠、足枷を外してもらい、僕は立とうとしたが全く力が入らない。
「無理をするな。今仲間が建物内の敵と戦っている。とにかくここを出よう」
「すみません」
「誤る必要はないよ。君は反乱軍……いや、赤聖国にとって重要な人物なんだから」
まだことの時は大地さんの言っている意味を理解出来ていなかった。
大地さんに肩を貸してもらいながら牢を出た。
廊下を歩いていると反乱軍と国軍が銃やナイフで争っている。
僕のせいで犠牲者が出るのか。
「源くん、もし俺が居なくなったら後は君に託すからね」
「そんな不吉なこと言わないでくださいよ」
「俺は真剣だよ。反乱軍という形だけど、実際赤聖国を守るのは俺たちだ。だから、俺が死んだくらいで諦めないで欲しいんだ」
「だったら他にも託せる人は沢山居るじゃないですか」
「いや、この反乱軍は君のために作ったようなものだ。いずれ君が隊長になるべきなんだ」
「どういうことですか?」
「それはここを出てからゆっくり話そう。まずは脱出が先だ」
大地さんの歩くスピードが早くなった。
目の前を銃弾が走ったり、血まみれの人が倒れていたり。
官僚宿舎は戦場だった。
出口が近づいた時、目の前に達樹くんが立っていた。
「達樹くん?」
「やあ。今度は顔を見て再開出来たね」
「達樹くん、そこを避けてくれ」
「いくら旧友とは言え、それは無理なお願いだね」
大地さんが僕から離れて達樹くんに向かっていった。
僕は力が入らない為、その場に崩れ落ちた。
ナイフで攻防しているようだ。
後ろから足音が聞こえたため、振り向くと男が僕に銃口を向けて立っていた。
僕は丸腰だ。逃げる体力も無い。
するとそれを察知したのか、銃口を達樹くんと攻防している大地さんに向けた。
「大地さん!」
思わず叫んだ僕の声に反応して振り向いた瞬間、男が放った銃弾は大地さんの右肩をかすめ、達樹くんのナイフは大地さんの脇腹を刺した。
大地さんは一瞬止まったが、すぐさまナイフを達樹くんの太ももに刺した。
2人とも距離を取って警戒している。
しかし大地さんは後ろから銃口を向けられている。
大地さんの絶対絶命のピンチに、見ていることしか出来ない僕は号国での光輝さんのことを思い出した。
――――また目の前で仲間が殺されるのを見ていることしか出来ないのか。
そう思った瞬間、身体を支えるために床についていた右手にナイフが当たった。
他の反乱軍と国軍が戦っていた時に落としたものだろうか。
僕は力いっぱいそのナイフを男に向かって投げた。
僕が攻撃してくると思わず、男の視線と銃口は大地さんに向いたままだった。
僕が投げたナイフは銃口を持った腕に刺さり、男は銃を落とした。
その隙に大地さんが銃を奪って男に一発発砲した。
急所を的確に撃ったのか、男は動かなくなった。
大地さんは銃口を達樹くんに向けたまま僕を抱きかかえて出口に向かった。
達樹くんは何もせずただ僕たちが逃げるのを見ていた。
「純くん、僕たちは後に戦うことになるだろう。その時はまたあの頃のように全力でやり合おう。その時の僕は神保 龍之介だ」
「ああ。かならず国軍を倒しに行く。その時は覚悟しておけ。僕は吉本源だ」
外に出ると数人の反乱軍の仲間が待っていた。
急いで車に乗り込んで赤聖国支部に向かった。
報告によれば、僕の両親は国軍に捕まっていなかったそうだ。
ガセネタだった。
しかし両親は実家には居らず、殺害予告が来たので国が保護すると言われて国の施設で1週間ほど過ごしていたそうだ。
大地さんの応急処置が行われていた。
刺された後も止血する暇も無く僕を抱えて歩いた為、かなりの出血量だった。
僕は点滴を受け、隣では大地さんの手術が行われていた。
暫くすると、手術が終わったようだ。
「隊長……」
「成功したんですか?」
「いや、間に合わなかった」
「大地さん……」
大地さんは出血が止まらず亡くなった。
僕のせいだ。また僕のせいで仲間が死んだ。
しかも、反乱軍にとって最も頼り甲斐のある大事な人を。
「すみません。僕のせいで」
「源くん、泣いている暇はないよ。大地さんは君に伝えているはずだ。この後どうすべきかを」
「僕が隊長……」
「そう。君が大地さんの代わりに反乱軍を率いる隊長になるんだ。俺から話そう」
星田さんが反乱軍について話し出した。
反乱軍はもちろん赤聖国の暴走を止める為に結成された。
しかし、調べていく間に重大な事実が明らかになった。
黒幕を見つけたのだ。
しかし、黒幕を知られた事で赤聖国が更に暴走を加速させる可能性があったので、反乱軍が黒幕に気付いたことを国軍に気付かれないように、隊長と支部長にしか黒幕の事実は伝えられなかった。




