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赤聖国で生まれた僕は  作者: 真灯出愼
第5章―裏切り―
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第36話

 拘束で目隠しされている僕は音しか状況判断をする術が無かったが、先ほど聞こえた声は確かに達樹くんの声だった。


神保(ジンボウさん! こんな所にわざわざお越しになられるなんて。この男は一体?」

「何でもいいだろ。お前は下がってろ」


 男が焦った様子で出て行く音がした。


「達樹くん?」

「純くん、久しぶりだね。随分たくましい身体つきになってるじゃないか」

「まあね。達樹くん、この目隠しを外してくれないか?」

「それは無理だ」

「なんで? 久しぶりの再開、顔ぐらい見せてくれよ」

「僕は国の上に立つものだ。君も知っているだろ? だからさっき僕の名前を口にした」

「ああ。官僚になったらしいね。さっきの男の反応を聞いている限り、かなり上に立っているのか?」

「まあね。あまり詳しいことを言うつもりはないけど。さて、感動の再開もここまでだ。使者が伝えたとおり、君のご両親は今、別の場所で拘束している。君に与えられた選択肢は2つ。反乱軍の情報を全て渡して我々の支配下で一生暮らすか、ご両親と共に死ぬか」

「残酷なことを言うね。どちらにしろ僕の今後の自由は無しということか」

「反乱軍に入った時点でそれは覚悟の上だろ?」

「そりゃそうか」


 今ここでNoと言えばすぐ殺されるだろう。

ひとまず情報を小出しにして時間を稼ぐしか方法はない。


「分かった。情報を渡す。しかし、僕も反乱軍に入って間もない新人だ。全てと言ってもそこまで情報は持っていないよ」

「十分だよ。君に反乱軍で動かれることを考えれば、ここで拘束していた方が反乱軍の殲滅は時間の問題だ」


 赤聖国としては任務を確実にこなす僕さえ拘束しておけば、後の反乱軍メンバーは制圧するのに時間はかからないと判断したのだろう。

しかし、反乱軍もそこまで弱くない。

僕なんてほんの一部の力でしかないぐらいの強者揃いだ。

そう簡単に殲滅されるほど甘くないぞと警告した。

達樹くんは笑って僕に言った。


「君は赤聖国の強さを知らないようだね。まあ、2,3日もすれば実感するだろう」


 そう言って牢を出て行った。

重たい鉄の扉の音がして、僕は1人ぽつんと残された。

身体は拘束でほとんど動けない。

壁に触れることすら不可能な状況のため、逃げるという選択肢はなかった。

どれぐらいの時間が経っただろうか。最初に入ってきた男が再び入ってきた。


「さて、尋問を始めようか」


 始めはアジトの場所から問いただされた。

本当は場所を知っているが、僕みたいな新人はアジトに呼ばれたことは無いと嘘を貫いていると、棒のようなもので体中を殴られた。ただの拷問だ。

「支部なら知っている」と小さな声で言うと、男の動きは止まった。


「支部か。やはりアジトは一つじゃなかったか。で、どこだ?」

「全世界に存在する。もちろん赤聖国にも」

「その口ぶりだと、本部は赤聖国じゃないな」

「ああ。本部は別の国だ」


 外から誰かの声が聞こえたが、はっきり聞き取れない。

すると男は牢を出て行った。

あれぐらいの情報でよかったのか?

どちらにしろ、拷問の手が止まって一安心していた。


 僕が拘束されてから丸1日が経った。

ご飯は何も出ず、ただ拷問を受けた1日だった。

次の日、知らない間に眠っていた僕にバケツ1杯分ほどの水をかけてきた。


「起きろ。今日も始めるぞ」


 その言葉を合図に昨日と同じく尋問が始まった。

相変わらず目隠しはつけたままだ。

しばらくすると、1人入ってくる音がした。

髪を引っ張られて顔を上げると、耳元で「反乱軍のリーダー、登美涼がお前を奪い返すために動き出したぞ」とつぶやいた。


 反乱軍のたった1人の隊員のために隊長が動く必要なんて無い。

なぜそこまでしてくれるのか。

いや、母さんが捕まっているのもあるかもしれない。

それにしても隊長が動くべきではない。


 僕の腕についているリングはまだバレていない様だ。

これさえあれば居場所は既に反乱軍側に伝わっている。

後は僕の心拍が止まる前に助けが来るか来ないかだけだった。


「隊長が動いたとなれば僕の役目はここまでですかね」

「どういうことだ?」

「反乱軍の殲滅があんた達の目的だろ? だったら隊長を殺したら目的達成じゃないか」

「確かに。隊長を探すためにお前から情報を抜き取ろうとしていたが、隊長自ら出てきてくれたならお前の役目は終わりだな」

「じゃあ解放か殺すかどっちかしろよ」

「今お前を殺しては意味が無い。ちゃんと、お前の生きている姿を登美に見せてから、目の前で殺すのが一番だ」

「悪趣味な」

「何とでも言え。餓死する前に助けがくるといいな」


 そう言って2人とも出て行った。

確かに飲まず食わずで今にも死にそうなほどの体力だ。

気を失いそうになったとき、身体に電気が走った。


「うっ!!! 何だ?」


 一度は目が覚めたものの、再び気が遠くなると電気が走る。

その電気は腕のリングからのものだった。

そうか。脈が弱くなっていくのを見て電気を使って蘇生しているのか。

裏切りを防止するためのリングだと思っていたものが、今は全て僕を助けるために機能している。

それもこれも計画通りって感じかな。

微力ながらも僕の命を助けようとしてくれているリングの努力もむなしく、僕は気を失った。

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