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赤聖国で生まれた僕は  作者: 真灯出愼
第5章―裏切り―
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第35話

 反乱軍のアジトは陽国にあった。

赤聖国のあの場所は支部のようなもの。

反乱軍の支部は各国に存在する。

その各支部に長が居て、赤聖国で会った武さんは赤聖国支部長だった。

アジトに戻っていた涼さん。いや、大地さんは僕に見せたいものがあると言って部屋に呼ばれた。


「源くん久しぶり。今回の任務はご苦労様。素晴らしい援護だったと褒めていたよ」

「いえ、ただ情報を流していただけですよ」


 そう。あの時、反乱軍を射殺する為に芦川が別のルートへ入ったことを知り、反乱軍の1人が芦川を追うことが出来たのは、僕がメッセージで情報を送ったからだ。

そして射程範囲を把握し、家の前で待機していた反乱軍の2人は芦川が殺されるまで待っていたのだ。

苛立っていた芦川が静かになったのは殺されたという事を、僕はあの時既に分かっていた。


「今回呼んだのはこれを見て欲しいからなんだ」


 そう言って1枚の紙を机の上に置いた。

何やら名前がずらっと並んでいる。

良く見ると見覚えのある名前がちらほらとあった。

紀伊崎に卓さん、そして達樹くんの名前も入っていた。


「これは何のリストですか?」

「それは赤聖国の官僚たちだよ」

「官僚?」

「すり替わりの任務を指示しているトップ陣」


 まさか、達樹くんが赤聖国の官僚になっているなんて思いもしなかった。

僕たち反乱軍が止めようとしているすり替わり計画を指示している人物ということは、いつかは戦わなければならないということか。

人を殺したくない気持ちは変わらないが、やらなければスパイを乗っ取られた国の国民が危険に晒される場合もある。

反乱軍に入って指名手配された以上、後戻りも出来ない。


「このリストの中の人物をすべて排除する。それが我々反乱軍の最大の目標だ」

「全員殺すということですか?」

「そういうことだ」

「分かりました。それにしても、よくこんな情報を入手出来ましたね」

「まあな。赤聖国内部に情報を流してくれる人が居るんだよ。これは長年の付き合いで出来たルートだ」


 反乱軍とはいえ、元は赤聖国のスパイ。

人望が厚かった大地さんは指名手配後も複数名の赤聖国スパイと繋がっていた。

僕はその後も反乱軍として赤聖国のすり替わりスパイを排除するために行動していた。

初めて人を殺したのは候国での任務中だった。

僕が実行する側になり、仲間の援護を受けてターゲットの急所をナイフで一突き。

手に伝わる人を刺した感覚は今でも忘れることが出来ない。

しかし、どうせ人を殺すなら銃よりナイフの方が良いと思った。


 「殺した感覚が味わえるから」と言えば誤解を生むかもしれないが、快感の方ではない。

自分の手で人を殺してしまったと罪の意識をしっかり持つためだ。

遠距離で銃殺すれば、自分が殺したという感覚が薄い。

僕は人殺しだ。完全に犯罪者だ。

しかし、それを良しと考えるのが今の赤聖国だ。

こんな危険な国を暴走させる前に止めなければ。


 ある日、赤聖国からの使者だと名乗る男が目の前に現れた。

男は口頭で僕に用件を伝えた。


「あなたのご両親を赤聖国が拘束しています。このまま反乱軍として動き続けるならばご両親の命はないと思ってください」

「親を人質にとって僕に何をしろと?」

「簡単なこと。赤聖国に戻ってきてもらいます」

「戻っても僕は赤聖国の下では働かないよ?」

「ではご両親は見殺しということでよろしいですか?」

「それは……」

「こちらからあなたの意見を聞いておいて何ですが、あなたに選択権はありません」


 そういうと、どこからともなく5,6人の男が出てきて僕を拘束した。

振り解こうと暴れようとしたが、その前に何か薬を打たれて僕は意識を失った。


 僕の勝手な行動で父さんと母さんが国に拘束された。

反乱軍に入る前に相談していたらこんな事にならなかっただろうか?

いや、相談していたらもっと早くこんな事になっていたかもしれない。

両親を人質にとってまで僕を止める意味は一体……?


 こんなことを指示しているのも官僚ということか?

もしそうであれば、達樹くんに相談すれば何とか打開できるかもしれない。

中学以来全く会っていなかった達樹くん。

官僚になるってことは相当努力したんだろうな。


 目が覚めると真っ暗の中後ろ手に拘束されている。

足も枷が付いているようだ。

身体に鎖が巻きつけられ、壁か床に繋がれている。

ジャラジャラと鎖の音が鳴り響く感じから、4畳ほどのコンクリートの牢屋か?

すると鉄扉が開く音がした。


「気がついたか」

「ここは?」

「赤聖国のどこか。とだけ言っておこうか」

「目隠し……」

「ああ、君は一度顔を見れば忘れないというじゃないか。その対策だよ」


 どうやら僕のお得意の記憶能力はバレているようだ。

声も変声機で変えている感じがした。徹底している。


「達樹くん……。守谷達樹くんは居ますか?」

「守谷達樹? 誰のことだ」

「官僚の中の誰かです」

「ああ、あの中の誰かか。本名で言われてもどの人のことか分からんな」

「僕だよ、純くん」


 聞き覚えのある声がして、コツコツと革靴で歩いて近づいてくる音がした。

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