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赤聖国で生まれた僕は  作者: 真灯出愼
第4章ー始動ー
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第30話

 那国は僕が侯国で任務をしていた時に担当したターゲットの国だ。

話によれば、あの一件から随分衰弱してしまったようだ。


 那国に着くと、思っていた以上に活気に溢れていた。

国の方は奴隷扱いされているが、国民まで影響が及ばないように政府も必死に守っているのかもしれない。

今回の任務は侯国で僕が捕まえたスパイの周りをうろつく輩についての調査だ。

あの時のスパイはユウと呼ばれていた。

周りをうろつく輩というのは、あれからユウを狙った犯罪が多発しているのだ。


 命を狙った襲撃事件は3件、情報が盗まれたのは2件。阻止できたのが12件。

ユウはあの後も政府の人間として働いていた。

自分の任務失敗で国民に辛い生活を強いるのは心苦しかったのだろう。

那国の中では最も優秀な人材であるユウを国は失いたくなかったのだ。


 僕は那国に到着した足で公安局へ向かった。


「すみません。ユウさんの件で依頼された松田と申します」

「松田さん! お待ちしておりました。ささ、どうぞこちらへ」


 受付の女性は僕を心待ちにしていたかのように対応してくれた。

奥の部屋へ案内されると、そこにはユウが待っていた。

「お久しぶりです」と言葉少なめに挨拶をし、今回の依頼内容を事細かく聞いた。

大まかに言えばユウの護衛だ。


「よろしくお願いします」

「こちらこそ、お願いします」


 握手した時のユウの反応は、あの時の事は水に流す……とまではいかず、今回は渋々手を組むといった反応だった。

局を出てユウが現在潜入中のBARに向かった。

夜はここで働いているようだ。

僕は客として来店し、ユウより離れた位置でカクテルを楽しんでいた。

少しすると3人の男性客が入ってきた。

ユウは客の注文を聞かず、3人それぞれにカクテルを出した。

常連客の様だ。

しかしユウはコチラに合図を送ってきた。

まさか、こいつらが次にユウの情報を盗もうとしている人物なのか?

ひとまず監視を続けていた。

3人のうちの1人が席を立ちトイレへ入って行った。

僕はユウを呼んで別のカクテルを注文した。

ユウがカクテルを僕の前に出したとき、「侯」とだけ書かれたメモが挟まっていた。

なるほど。侯国のスパイか。

それにしてもよく調べている。流石那国で最も優秀なスパイだ。


 しばらくすると何やら甘ったるい匂いがしてきた。

何か作っているのか?

それとも少し飲み過ぎたか?

急に眠気が襲ってきて僕はカウンターに頭を置いて眠ってしまった。


 目が覚めると何処か分からない場所。

特に拘束されている訳ではないが、扉が一つだけで6畳ほどの何もない部屋に閉じ込められていた。

油断してしまった。とにかくここから脱出しなければ。

扉の向こうから2人で会話している声が聞こえた。


「店に居た客まで監禁して、何の意味があるんだよ」

「しらねーよ。俺ら下っ端にそんな情報が周ってくるかよ」

「それもそうか。で、ターゲットのユウはどうしたんだ?」

「多分、今頃拷問でも受けてるんじゃないか」

「自白するのも時間の問題か。さて、那国が雇ったっていう助っ人スパイはどこのどいつだろうな」

「那国ごときが助っ人を呼ぶなんて100年早いよ。アハハハ」


 なるほど。侯国は那国なんかに手を貸す国のスパイを探しているのか。

今となれば那国は全世界の奴隷国。

そんな最下層の国に手を貸すなんて言語道断だと言いたいのだろう。

助っ人スパイ、つまり僕だ。


 侯国も大体の見当はついているはずだ。

赤聖国しか手を貸せる国はいないだろう。

しかし、赤聖国の中でもどのレベルのスパイが手を貸しているか知らなければ侯国も手の出しようがない。

幸い、僕はまだ正体がバレていないようだ。

ご丁寧にドアノブに鍵穴がある。

こういう部屋はスパイを監禁する部屋に選ばない。

音をたてないようにロックを解除し、2人が会話に夢中になっている隙を狙って一気に飛び出した。


 バンッ!!

開けた扉の位置に丁度立っていた見張り役の1人が、僕が開けた扉にぶつかりうずくまっている。

助けを呼ばれる前にもう一人の見張りの背後にまわり、首に腕を巻きつけて一気に締め上げた。

うっ! と言って気絶した男を床に下ろし、うずくまっていた男の首の後ろをチョップで気絶させた。

他の見張り役には気付かれていない。

近くにあったテーブルには無線機が置いてあった。

音量を最小限に絞り、それを持ってユウを探し始めた。


 ――――監禁していたBARの客が逃げたぞ! もしかすると那国が雇ったスパイだったのかもしれない。早く探し出せ!


 僕の逃走がバレたのか、無線が騒々しくなった。

どこにユウが居るのか分からない為、それらしき扉を開いてみた。

すると、まさかの一発ビンゴだった。


「ユウさん!」

「松田さん」


 ユウは部屋にポツンと座っていた。

拷問されている訳でもなく、拘束されている訳でもない。

何なら部屋の鍵も掛かっていなかった。

どういう状況なのか理解できなかったが、後ろから侯国の人間がどんどん入って来て僕は取り囲まれた。


「ごめんね、松田さん。最初から君を騙す為の作戦だったんだ」


 なるほど。

那国を奴隷国にしてしまったのは確かに僕だ。

恨まれて仕返しされるのは仕方ない事だ。

しかし、侯国を利用して僕を捕まえるとは想定外だった。

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