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赤聖国で生まれた僕は  作者: 真灯出愼
第4章ー始動ー
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第21話

侯国(コウコク)…英語圏の国。軍事力が高く、他国を寄せ付けない強さを持っている。


秀国(シュウコク)…フランス語圏の国。知力が高い国。軍事力は劣るが経済力がある。


那国(ナコク)…英語圏の国。国の力は弱いが、国民は平和に暮らせる安定感のある国。

 ――――侯国。


 スパイが他国の公安調査庁に潜入するのは極めて難しい。

なのに大胆な行動に出たのは理由があった。

依頼国は秀国シュウコク

秀国のスパイが侯国に潜入しているのだが、どうしても手に入らない情報があった。

その情報を手に入れる為の手助けをして欲しいと言う依頼だ。


 僕は公安調査庁の試験を合格し、晴れて侯国の公安になった。

他国のスパイを探し出す公安調査庁は今回の任務にもってこいだと思う。

ひとまずここの立場上、新人なので表立った行動は避けた。


 公安には様々なスパイ情報が飛び交っている。

それを真の情報かどうか見極めるのも仕事だ。

凄く勉強になった。

バレていないと高を括っているとあっという間に捕まってしまう。

公安の極秘調査の技術はどの国も同じようなものだろう。

僕たちスパイは優秀な……いや、優秀過ぎる公安の人間を相手に情報を盗み取らなければならない。


 依頼してきた秀国のスパイは既に公安にマークされていた。

僕はこの事を伝えなければと思ったが、そう簡単に情報を流せる環境ではない。

常に2人1組で行動しなければいけない為、不審な行動をすれば即怪しまれる。

【常に人を疑いの目で見よ。隣の人間を仲間と思うな】

それが公安の人間の口癖だった。


 僕たちがマークしていたのは別の国のスパイ。

もしかすると赤聖国民ではないかと言う情報も入っている。

若い人物なら大体の顔を覚えている。

合宿に来ていた1500人は確実に覚えている。

まずは張り込みでターゲットの周りを徹底的に調べた。

若者だが見覚えのない顔だった。

赤聖国民の可能性は低い。

ただ、スパイは赤聖国民だけじゃない。

もちろん各国、スパイを育成している。

ターゲットの過去を洗いざらい調べ上げ、ひとつ引っかかる情報があった。


 過去に1年だけ空白の経歴。

その1年はどこで何をしていたのか。

周辺の人物に聴き込むと、誘拐された過去を持っていた。

これは怪しい。

誘拐犯が政府のスパイ育成機関だったら?

1年もあれば十分スパイに育て上げる事が出来る。

相方と共に上司に報告し、ターゲットの確保に踏み切る事となった。


 任意同行で公安局へ連れて来て、取り調べを行った。

僕にとっては初の取り調べだ。

その間にターゲットの家に家宅捜査が入っていた。

スパイとして情報を流していた形跡を探し出せばこちらの勝ちだ。


「あなたの経歴を調べさせてもらいました。空白の1年間、どこで何をしていたのですか?」

「誘拐されてずっと監禁されてました。いつ殺されるのか分からない恐怖と戦いながら。人が部屋に入ってくると、ご飯が出るか銃が出るか。いつもドキドキしていましたよ」

「そうでしたか。辛い過去を思い出させてしまいましたね、すみません」

「いえ。で、僕はなぜここに呼ばれたのでしょうか?」

「この方をご存知ですか?」


 僕は1枚の写真を机の上に置いた。

男は無反応を貫いたつもりだろうが、僕の目は誤魔化せない。

眉がほんの少し動いたのを見逃さなかった。


「知りません」

「この人、実は秀国のスパイでして。我が国のとある情報を盗み取ろうとあらゆる手を使って人を利用しているんです。まあ、彼は情報を集める為に沢山の人と関わり過ぎた事で、我々に捕まったのですがね」

「スパイ……でしたか」

「なるほど。その反応を見るとあなたも彼がスパイと知らずに情報をベラベラと話してしまった口ですか」

「はい……」

「何だ。やっぱり彼を知ってたんじゃないですか」

「あ……」


 男は誘導されて本当の事を話してしまった事に動揺が隠せない様子だった。


「もう話しませんか? あなたもスパイなんでしょ?」

「僕はスパイなんかじゃありません!」

「あんまり手荒な真似はしたくないんですがね」


 僕は注射器を取り出し、男の前に出した。

男は察知したのか、諦めて話し出した。


 僕たちが捕まえた男は那国ナコクのスパイで、我ら侯国の軍事機密を盗み出すという任務を与えられていた。

侯国は軍事力が高く、戦争になれば右に出る国はいないと言われている。

だから他国はいつも侯国の言いなりになっていた。

下手に出る他国を奴隷の如く扱う侯国の政府に刃向かうには、軍事機密を盗み出して対策を練ろうと判断したのだろう。

しかし公安には勝てなかったようだ。


 この那国の男を二重スパイにし、那国へ偽の軍事機密の情報を送らせた。

那国は後日、男から得た情報を持って侯国に戦争をしかけてきた。

侯国に勝てる対策を練りに練った為、強気になったのだろう。

しかしご存知の通り、あの軍事機密は偽の情報。

那国は勝てるはずも無く惨敗。

喧嘩を売ってきたのは那国の方なので、後の報讐は誰もが想像出来るだろう。

那国は奴隷のように利用されるだけ利用され、那国民は全世界の国からも奴隷扱いされる国になってしまった。


 たった1人のスパイのミスによって国の明暗が分かれる。

スパイのミスは命を奪われるよりも苦しい未来が待ち構えている。


 僕は赤聖国民だ。

国民がスパイと全世界で認知されている。

もしスパイの任務を失敗しても赤聖国に直接影響は与えられない。

しかし、赤聖国にスパイ派遣を依頼をしていた国はそうはいかない。

赤聖国のせいで過酷な道を歩む事になるかもしれない。

赤聖国に復讐を考えるかもしれない。


 僕は今回の那国を見て赤聖国のシステムに疑問を抱くようになっていた。

任務完遂は誰もが掲げる目標だ。

しかし、100%達成出来るかと言えばそうでもない。

僕は侯国の公安に潜入している今のうちに、もっと他国のスパイシステムを勉強してみようと思った。


 那国のスパイの取り調べで出した秀国のスパイの写真。

あれはフェイクでも何でもなく、本当に侯国の公安が捕まえた秀国のスパイだ。

僕が本来、手助けするスパイの男。

捕まったらどうしようも無いじゃないかと思いつつ、こちらも任務だ。

助けるしかないだろう。

僕は受け身の立場だ。

男が行動に移すまで何も手を出さない。

尋問に耐えきれず自白するか、尋問に耐えて脱出を試みる人物かどうか、後は彼次第だった。

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