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赤聖国で生まれた僕は  作者: 真灯出愼
第4章ー始動ー
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第19話

陽国(ヨウコク)…中国語圏の国。経済力、政治力を共に備えている。軍事力はそこまでないが弱いという訳でもない、全体的に力を持つ国。

 ――――陽国。


 暑い日差しで汗が滲む昼時。

僕は写真館の仕事でお客さんの写真を撮っていた。


「はい。撮りますよ~。3.2.1」


 家族写真や新婚写真、モデル写真やお見合い写真など、たくさんの人を笑顔にしながらフィルムに収めてきた。


「松田くん、休憩入って」

「はい。休憩頂きます」


 昼の2時、昼ごはんの時間だ。

僕が働く写真館は個人経営にも関わらず、人気店で人手が足りていない状態だった。

昼休憩も30分。

しかし僕はその30分だけでも仕事場を離れるためにいつも外食をしていた。


「いらっしゃいませ」


 常連の店もあるが、昼は出来るだけ色んな店に行くようにしている。

今日も初めてのお店に来た。


「カレーを一つ」


 基本どのお店にもカレーはある。

そして、カレーはどのお店も早く出てくる優れものだ。

今日の店もカレーが出てくるのは早かった。

10分でカレーを平らげて店を出た。

写真館に戻るとお客さんが列を作って待っていた。

僕は急いで支度をし、再びカメラの前に立った。


 仕事が終わったのは夜の9時。

家に帰る前にBARに寄った。


「店長、いつもの」


 カウンターに立っている店長はニコッと笑って、いつものカクテルを僕の前に出してきた。


「今日もたくさん撮られたんですか?」

「うん。今日は家族写真が多くてね。赤子に随分手を焼きました」

「それはそれは、ご苦労様です」


 僕はその後も店内にかかっている曲を聴きながらカクテルを飲んだ。

カップルも居れば、僕のようなお一人様も居る。

そんなに人は多くないし、誰も干渉して来ないので僕にとって居心地が良い場所だ。


 まだ中学生の子供がカクテルなんてダメだろと思う人もいるだろう。

大丈夫。アルコールは入っていない。

初めて来た時は武蔵野に連れてきてもらった。

もちろん僕はBARなんて行ったこともなかった。

武蔵野は僕にBARの楽しみ方を教えてくれたのだ。

そして、店長にアルコール抜きでカクテルを作ってもらってから僕はハマってしまった。

武蔵野が居ない時でも時々こうして1人で飲みに来るほど気に入っていた。


 そうこうしている内に時計の針もてっぺんを超えて日付けが変わっていた。

「また来るよ」と言って僕は家に帰った。

一人暮らしのアパートはやはり寂しい。

物も必要最小限にしか置いていない殺風景なワンルームだ。

お風呂で汗を流し、僕はそのままベッドに入って寝た。

そんな日を既に半年も続けていた。


 朝起きていつものように写真館に向かった。

店長はいつものように早くからフィルムのチェックや今日の予約の確認などをしていた。


「おはようございます」

「おはよう。今日もたくさんの笑顔を頼むよ」


 これがいつもの挨拶だ。

たくさんの笑顔。

そういえば、物心付いた時から周りに溢れていたな、笑顔。

毎朝、店長と挨拶する度に赤聖国を思い出す。

別にホームシックになってる訳じゃない。

自分という存在を再認識しているだけだ。

半年もただ写真館のカメラマンをしていただけではない。

ちゃんと任務の方もしている。


 多忙な写真館は今日もあっという間に1日が過ぎていく。

昼休憩、今日は常連のお店にやってきた。

「カレーを一つ」と注文して水を少し飲んだ。

すると知らない男性が僕のテーブルに座ってきた。


「松田さんですよね?」

「そうですけど」

「お時間は取らせません。少しだけお話聞いてもいいですか?」

「カレーが来るまでの間ならいいですよ。僕も忙しいので」


 男性は「良かった」とつぶやいてから1枚の写真を見せてきた。


「この男性、ご存知ですか?」


 写真の人物は武蔵野だった。

しかしこの国では知らない人として通っているはず。


「んーー」

「見覚えないですかね。この人、あの噂の赤聖国民なんじゃないかっていう話が舞い込んできまして」

「赤聖国……。ああ、あのスパイの」

「そうそう。赤聖国はご存知でしたか」

「ええまあ。しかしなぜその話を僕に?」

「あなたがよく行かれてるBARの店長さんに聞きまして。あなたが初めてBARに来た時はこの男と一緒に来たと」


 BARの店長は口が軽い。

余計なことを……。

上手く誤魔化すしかなかった。


「ああ。確かその日はどこかの居酒屋さんで意気投合して、そのままBARに連れて行ってもらったかと。それで知ってるような知らないような記憶だったのかな」

「何で意気投合されたんですか?」

「確か写真の話です。僕は今の写真館に行く前から趣味として写真を撮っていたもので」


 男性は納得したようだ。

「お忙しい所失礼しました」と一礼して去って行った。

ちょうどカレーが来たので10分で平らげて店を出た。


 武蔵野は何のヘマをしたのか知らないが、僕まで巻き込まないでくれ。

写真館までの道中、誰かにつけられていた。

一応僕も疑われて居るんだろう。

そのままいつものように1日が過ぎて行った。


 翌日、武蔵野はスパイ容疑で陽国の政府機関に捕まったと知らせが入った。

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