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赤聖国で生まれた僕は  作者: 真灯出愼
第2章ー成長ー
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第13話

無。それは最も過酷な脱出ゲーム。

 合宿5日目。

朝起きて直ぐ先生に連れられて地下へ向かった。


 大きな地下室。

扉が沢山あり、全てこの部屋に繋がっているようだ。


「ここがこれから君達が目指すゴールの部屋だ。それでは今から全員拘束する」


 手を後ろに拘束され、黒い袋を頭に被せられた。

順に扉の奥へと連れて行かれているようだ。

そして僕の番が来た。


「立て」


 両脇を抱えられて立ち上がるとその場で何週も回された。

先に入った人たちの扉の音で自分の位置を大体把握するつもりだったが、そう簡単にいく訳がない。

そのまま扉の奥へと入った。


 長い通路を歩く。

10分ほど歩いただろうか。

階段も上り下りしたが、段数を計算すると2階分は降りただろう。

最初の部屋が地下1Fとすれば、今居るのは地下3F。

沢山歩いたが、多分同じところを何度も通っているに違いない。

そしてやっと到着した。


 頭に被っていた袋を外され、振り向くと看守が牢を出て行くところだった。

そして扉の向こうからこう言った。


「1時間後、取り調べを行う。部屋にある物でも見て暇つぶししておけ」


 部屋にある物といえば難しそうな外国語の本にベッド、トイレだけだ。

後は天井に吊られた薄暗いライトか。


 本を開くとドイツ語だった。

ただの物語のようだ。

どうせ暇だし読んでいくか。


 読み進めると感じる違和感。

この本、紙の厚さが普通の倍はある。

透かしで何か見つかるかもしれないとライトで透かそうとするも、天井のライトは遠くて光も弱く、何も見えない。

ライトに本を近づける為にベッドに乗って腕をいっぱいに伸ばす。

するとやはり何か文字が浮かんできた。

暗号だ。

暗号ブックは無いが、大体は覚えている。

メモも無いので無理な体勢を継続したまま読み進めると


【出口は看守の中にある】


 看守の中?

看守が出口の鍵を持っているということか?

もう少し何か書いていないか更にページをめくった。


【UTJF#】


 これは暗号か?

僕の知っている解読法では無理だ。

別の解読方法があるのかもしれない。

考えながらベッドに座り本の中を読み進めた。


「28番、取り調べの時間だ。出ろ」


 廊下に出て手を後ろに拘束された後、取り調べの部屋まで歩いて行った。

想像していたよりこの地下牢は広い。

途中、他の人が取り調べを受けているであろう部屋がいくつもあった。


「入れ」


 入った部屋には一人の男が机の前に座って待っていた。


「座れ」


 手を拘束されたまま椅子に座り、何を聞かれるのか分からないまま前の人を見た。


「28番。ここから出たいか?」

「はい」

「だったら情報を教えてくれ。この地下牢の看守の中に裏切り者がいる。何か知らないか?」

「いえ、全く」

「本当に?」

「はい」

「君の牢にあった本は読んだかい?」

「読みました」

「感想は?」

「ごく一般的なおとぎばなしで詰まらなかったです」

「ハッハッハ。小1の君がおとぎばなしを詰まらないと言うか」

「ダメですか?」

「いや、構わん。で、他には?」

「他と言いますと?」

「何も無かったかい? その本には」

「ええ、何も」

「もう一度聞くよ。あの本の感想は?」

「ですから、詰まらなかったと何度も…」


 こんな会話が永遠と続いた。

多分暗号のことを聞き出したいのだろう。

しかしそれを言えば僕が逃げる術がなくなる。


 同じような会話を何度もしていると気がおかしくなりそうだった。

後ろに拘束されている腕も痺れてきた。

あれから何時間話しているのだろうか。

早く牢に戻りたい。

いや、早くこんな地下牢から逃げ出したい。


「では質問を変えよう。ライトには手が届いたかい?」

「…」

「そうか、届いたんだね」

「僕は何も」

「反応を見ればわかるよ。何が書いてあった?」

「物語しか読んでいません」

「君もしつこいね。ではこれは読めるかい?」


 机に本に書いてあった暗号を出してきた。

僕は首を横に振った。


「そうか。じゃあこっちは?」


 男はフッと笑い、もう一つのローマ字の方を出してきた。

僕は再び首を横に振った。

もう声を出す気力も無い。


「こっちはまだ解けてないんだね。仕方ない。ではとりあえずこの辺にしておこう。今は16時だ。また1時間後に会おう」


そう言って男は出て行った。


 16時!?

もうそんなに時間が経っていたのか。

のん気に取り調べを受けている場合じゃない。


 立つ気力も残っていなかった僕は両脇を看守に抱えられて立ち上がり、再びあの牢へ向かった。

取調室を出る瞬間、部屋の隅にあったパソコンが目に入った。

これか!!


 解読法をひらめいた僕は廊下を歩きながら頭の中で暗号を解読し始めた。

あれはキーボードの日本語の配列を見るんだ。


【UTJF#】ということは

U→な

T→か

J→ま

F→は

#→あ

【なかまはあ】


 どういうことだ?

文章が成り立っていない。

まてよ? #はシフトを押さないと出ない文字。

そうか。だからローマ字が全て大文字だったのか。

つまり、普通に打つと暗号として隠せないから全てシフトを押した状態で書いた。

#で隠せる文字は3。

【なかまは3】

仲間の看守は3番の人だということか。


 今僕を抱えている看守は5番と8番。

こいつらは敵だ。

3番の看守なんてどうやって探せば……


 これは自分の足で探すしかないな。

さっき通り道の部屋に地図があった。

多分この先にトイレが。


「すみません。トイレに寄ってもいいですか」

「牢の中のトイレでしろ」

「いいじゃないか。直ぐそこにあるんだし」

「仕方ないな」


 よし、これで手錠が外れる。

僕を直ぐ脇で2人の大男が見張っているが問題ない。

手を洗った瞬間、手錠をかけようと手を取った瞬間に逆に2人を手錠で繋げた。

鍵は看守自身が持っているから直ぐ外されるだろう。

しかし走って逃げるには十分な時間だった。


「ピー! 28番が逃げたぞ!」


 直ぐに看守達が僕を探し始めた。

3番はどこだ!

とりあえずさっき見た地図を頼りに上の階へ向かった。


 あとひとつ。この階段を上れば!

上ると扉があった。

これだ!


 扉を開くと一人の看守が待ち構えていた。


「引っかかったな」


 後ろからも沢山の看守が追ってきている。

これまでか。

すると待ち構えていた看守は床のフタを開けて僕を投げ入れた。


「え?」

「その先左だ」


 よく見ると3番の看守だった。

仲間だったのだ。


 言われた通り突き当たりを左に曲がると扉があった。

開けると見覚えのある部屋だった。


「お帰りなさい」


 火口先生だ。

卓さん、優太さん、そのほか10人ほど既に脱出していた。


 僕が部屋に着いたのは17時。

1時間も逃げ回っていたのだ。


 達樹くんの姿がない。

まだ地下牢の中なのだろうか。


 今日のタイムリミットである20時を回る頃には脱出者が25名だった。

残りの5名はまだ牢の中で脱出を目指して動いているんだろう。


 僕たちは合宿所へ戻りご飯を食べた。

今日1日が長かった。

取り調べがあんなにも苦しいものだと思わなかった。

卓さんや優太さんは今年で4回目だが、あれだけは慣れないと言っていた。

達樹くん、無事帰ってきてくれるといいんだけど。

そう願いながら僕は寝た。


 そして合宿6日目。

僕たちは体育館で組手の訓練を始めた。

昨日の拘束で少し腕が重い。

鍛え直さないと。

訓練をしていると残りの5人が帰ってきた。


「達樹くん!」

「ただいま」

「無事でよかった」

「また後で色々話すよ」

「そうだね」


 全員帰ってきた所で訓練を再開した。

合宿6日目も終わり、残る最終日。


 この1週間の成績発表が行われた。

僕たち第40班の成績は2位。

1位はあのプロ集団だった。


 これから各地域に帰る1500人のエリート集団のトップにはなれなかったが、1位がプロ集団なので実質トップに立ったのだ。

今回参加した人達の中で僕の名を知らない者はいないほどになった。


「さすが波多君。やはり我々の枠では納まりきらないほどの能力を秘めています。これからもより一層訓練に励み、国のために立派に働いてください」


 宿長直々にお言葉を頂き、僕は達樹くんと迎えに来た智坂先生とバスに乗った。


「二人ともお疲れ様……って、安心してもう寝ちゃったか」


 僕も達樹くんもバスに乗った瞬間に眠ってしまった。

長い長い1週間の合宿が幕を閉じた。

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