表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤聖国で生まれた僕は  作者: 真灯出愼
第2章ー成長ー
14/49

第12話

模擬任務(後編)

 目の前には卓さんが立っていた。


「目が覚めたかい?」


 冷静な顔をして僕に声をかけてきた。

しかし僕は口が塞がれていて何も言えない。

すると卓さんは僕の口を塞いでいたガムテープをはがした。


「自分が何故捕まったのか。そして何故ここに俺が居るのかを聞きたいんだろ?」


 そう言うと僕が疑っていた事実を全て話し出した。


 卓さんと23番の関係を疑った僕の推理は正解だった。

そう、2人は二重スパイだ。

最初は卓さんも普通にチームメイトだった。

しかし、組手の試合で23番がどこかの班のスパイだと気が付いた。

暗号解読班として違う解読をしている23番の行動を監視していると、23番がどこかへ暗号を送っている姿を卓さんは目撃した。

しかしそれが罠だった。


 23番は39班のスパイだったのだ。

そして卓さんは23番の罠にまんまとひっかかり39班に捕まった。


 チーム戦のトーナメント中にそんなことが起きていたなんて。

相手もこの睨み合いを長引かせる訳に行かないし、卓さんも総指揮を取っている身だからのん気に捕まっている場合じゃない。

だから取引した。23番に協力すると。


 そしてその真実を知ってしまった僕も今、その選択を迫られている。

今はまだ皆寝ているが、起床時間に僕が居なかったらどう思われるだろう。

全員が疑いの目を向けるだろう。


 僕がいくら2人を二重スパイだと言っても、総指揮の卓さんの方が支持されるのは目に見えて分かっている。

卓さんからの要求を呑み、僕も二重スパイの協力者となることにした。


 卓さんは少し安心したような表情になり、僕に任務を指示した。

まず始めにスパイ講師を野間先生に仕立て上げるのが今回の任務。

今までの話を聞けば、本当のスパイ講師は笹永先生だ。

しかしこの二重スパイの事を指揮しているのが笹永先生だった。

先生が捕まれば俺達も捕まる。

守るしかなかった。


 僕は野間先生の怪しい行動を全て調べ上げてきた。

卓さんは総指揮者として僕の意見を尊重し、全員に野間先生を徹底的に調べろと指示する。

後は野間先生の机に無線機を忍ばせて他のチームメイトに発見させるという作戦だった。


 先生がいつも付けているイヤホンは間違いなく無線を聞く物。

誰かがこの機械を見つけて先生のイヤホンを取り、内容を確認するタイミングでこちらが用意した情報駄々漏れの無線を流す。

そうすれば誰もが野間先生がいつもこの情報を無線で聞いていたと思い込むだろう。

あとはこの無線機と先生のイヤホンを取り上げれば任務成功。


 笹永先生いわく、野間先生はあのイヤホンで二重スパイの無線を盗聴しているらしい。

笹永先生が作ったオリジナルの二重スパイ専用の無線チャンネルがあるそうだが、他の講師は知らない。

なのに野間先生はそれを見つけ出した。

そして僕のように二重スパイの探りを入れている生徒に助言して捕らえさせようとしている。


 流石にそれではこちらの身も危うくなるから手を打たないといけない。

だから今回は野間先生には犠牲になってもらうということだった。


 僕は明日の朝のミーティングで僕がもう一度野間先生を疑い意見を申し出ると約束し、開放された。


 僕は迷っていた。しかしやるしかない。

最も重要なのは自分が持っている秘密を外部に流さず持ち帰り報告すること。

僕の任務は40班に潜入しているスパイを見つけ出すこと。

この任務の答えは23番だ。

とにかく、卓さんに言われたとおりするしかない。

こうしているうちに朝が来た。


 いつものように食堂で朝食を食べ、ミーティングを行った。

予定通り野間先生をターゲットに4日目の模擬任務が始まった。


 先生に直接話しかける者、手荷物を調べる者、逃走経路を防ぐもの、拘束する者。

それぞれに分かれて計画通り進んだ。

卓さんの言ってた通りのストーリーが進む中、僕は担当講師である火口先生の元へ向かった。


 紙に書いた暗号を先生に渡し、直ぐ任務に戻った。

これで僕の任務は完了だ。

後は野間先生を助ける方法だ。


 今日中に野間先生の疑いを晴らさないといけない。

しかし二重スパイは僕も入っている。

どうする…?

すると達樹くんがこちらに向かって歩いてきた。


「どうしたの? 難しい顔して」

「え?」

「任務、難しいよね。もし純くんの任務でつまづいているなら助けるよ」


 達樹くんは僕が最も信頼出来る人物だ。

ここは覚悟を決めて手伝ってもらうしかない。


「実は……」


 僕は二重スパイの全てを伝えた。

達樹くんは驚いた顔をしていたが、直ぐに受け入れて協力してくれると言ってくれた。


 作戦はこうだ。

協力者を増やすために達樹くんが繋がってるチームメイトに協力を促す。

23番が持っているであろう暗号ブックを見つけ出し、言い逃れが出来ない場で公表する。

そこには笹永先生も居てもらわないといけないし、担当の火口先生も必要だ。

火口先生は直ぐ来てくれるだろうから大丈夫だが、問題は笹永先生。


 ひとまず協力者を探し始めると、心強い協力者が現れた。

優太さんだ。


「1年生なのに思い任務を背負わされたね。任せて、俺も卓に負けてられないから」


 そう言って他のチームメイトにも声をかけてくれた。

密かに組まれたチームの総指揮者はもちろん優太さんだ。


 優太さんが組んだ任務は23番の暗号ブックを探すのが先決。

しかし見つけるには笹永先生にも居てもらわなければならない。

そこで、大事にしてしまえと言い出した。


 今ここにいる僕以外の人が2チームに分かれて23番の荷物検査や捜索をする。押し込み強盗のように。

そうすれば23番が疑われているのは誰にでも分かる。

その状況に焦った卓は僕より笹永先生に相談するだろう。

そして2人は暗号ブックが見つかる前に手を打つはずだ。

その2人の行動見逃がさないようにするのが今回の鍵となる。


 少し強引だが、優太さんの作戦が一番だということはその場の全員が理解していた。

そして火口先生にその作戦を伝え、僕たちは実行した。


「23番。お前の手荷物を検査する。大人しくしていろ」

「いきなりなんだよ」

「スパイの疑いだ。抵抗するなよ」


 こうして大捜索が始まった。

卓さんは直ぐ動いた。

もちろん僕ではなく笹永先生の元へ。

そして2人で戻ってきた頃には暗号ブックが見つかっていた。


「23番を確保! 暗号解読班、この本を使ってこのメモを解読しろ」


 こうして手荷物にあったメモを解読すると、笹永先生からの指示と判明。

もちろん数珠繋ぎで僕と卓さんも二重スパイだったことが明らかになった。

野間先生は容疑が晴れて解放。


4日目の模擬任務は無事、任務成功で幕を締めた。


「純くんには一杯食わされたな」

「すみませんでした」

「いや、本当は僕の役目だったのかもしれない。でも出来なかった。経験値を積むと相手に洗脳されやすいのかもしれないな」


 人を疑うのは辛い。

単純にそう思った。

しかしこれからはどんな人も疑いの目で見てしまうんだろう。

スパイばかりの国ではこうして正しい情報は何なのかを自分で見極めていくしかない。

確かに他国では到底無理な教育だと痛感した。


 明日は遂に“無”の日だ。

ご飯も食べれないそうだ。

早く脱出しなければいけないんだったな。

ひとまず今日の夕食は腹いっぱい食べておくか。


 こうして自分に与えられた任務も達成し、最も過酷と言われる訓練の日が来た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ