↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/142

4-9 合同狩猟を終えて

 10月も3週目に入って最初の日、休みを取らずに2週間連続して行った狩りを終えて休息日とした。

これで当初の予定の共同作業期間は終了となる。

 『遠慮』にとっては『偏食』の活動範囲である草原末端部と大森林の境にいる巨竜の種類を一通り狩ることが出来た上、その間に雨天もあったのでその際の2番地区での大森林移動で足元の注意など受けた。

 靄が出ていたため風の異法での支配が今一つだったので広範囲での探査が難しい状況になる。ところがその靄を利用してホーヅの水の異法が探査をしたり、探査の後にアッシャーが面倒がってが一気に靄を一気に晴らしてしまったりと水の異法士がパーティーにいない『偏食』たちは感心していた。

 その二人から普通の探査に水の異法を使うことは少ないがカイルの発案であること、狩りの前の大事な源力を視界を晴らすためだけに使っても平気なのもカイルのおかげだと聞いてますます『遠慮』に力の秘密に興味を抱いた。

 っついたところで彼らの印象を低くするだけとダーナは自分達が出来る範囲での狩りを行うようにメンバーに指示した。それに今回の合同行動の狩りでは後方も含めた見張りを上空からの視点を持つニミヤに任せることができたので『偏食』も予備足止め要員余裕を作らず総勢での狩りを行った。


 『偏食』との共同期間を終えた翌日の今日、双方のパーティー共に休息日兼合同のミーティングを行っている。

 カイルは最初の7日は前衛で如意棍を振るっていたが後半は一人で草原の周りや大森林との縁を散策していた。そのため後半の『偏食』が狩りでどういった態度だったのかはメンバーに聞くだけとなったが楽が出来るから手を抜くといった様子は見られなかったと聞いて源力補充の装具について話した。

 ルウミの傷を治したことから医術が使えることについては既に分かっているので隠す意味はないが一緒に話し、爪やカードに現れるべき変化がないことに驚いてはいたが源力を外から補充できるというインパクトが強すぎてあまり聞かれることはなかった。

 重複化については同じパーティーで作業しない限り、腕力をメインに前衛で共闘する機会もないので知られても影響がないと思うが酔った席で他言されて更なる注目を浴びるのも困るので曖昧に説明して伏せておいた。

 如意棍で首を断つのはともかく、初日の巨竜を捕まえてのジャイアントスイングや三級こもの指輪リングで作った歪門に向けて放り投げているのでありえない腕力を持っているのは既に周知のことで通常の人間にはありえないことだと呆れられていたわけだが。


-*-


『……というのが俺達の力の秘密だ。』


 今月最初と同じくミーティングを行うために集まってるのは2番地区詰所内の資料室。 念話で説明したところ、


「おいおい、そりゃずるいぜ!」


 他のメンバーが源力が尽きないことの疑問が解けたことと、外から源力を補充できることへの驚きで黙っていた中、ノーッタが声をあげた。


『ノーッタ、念話だ。』


 ダーナに窘められて念話に切り替える。


『確かに他の狩人、というか他の異法士にはありえない優位性であるな。

 だがそれはカイル殿の能力によるものならば、『都市の祝福』で異法士や術士の能力を得るのも運だ。カイル殿の力は反則的な能力だが一般人からすると我ら異法士だってずるいといえるぞ?』


 ノーッタがカイルを非難していると取ったダーナは収めにかかる。

ダーナは年輪都市の最高職権を持つ上級職員の娘ではあるが権力を笠に着て我を通す性格ではないため、自分たちがカイルのような優位性を持てないからといって同じ恩恵を寄越せとも非難するつもりもない。

 年輪都市の上級職員の地位は世襲でなく個人のものなのでいくら権力があったところで血統で力を存続している貴族のようには成りえないので上級職員の家族だから傲慢になることはない。それよりもズマのように経済地盤を引きついで労せずに金を得るものの方が傲慢になりやすい。


『そこじゃねえさ、リーダー。カイルの能力に対してじゃない。

そっちの異法士に対してさ。

 気付いてねぇのか?

 外から補充が出来るってことは枯渇と補充を繰り返せるんだぜ?それが同日内に何度か出来るとすれば源力の個人総量を上げられる。

俺みたいに異法士になった時の源力総量が少ないならいくら頑張っても源力総量は並みにしかならねえ。

 だけど枯渇からの補充ができるんなら努力で並以上に源力総量を上げられる!』


 いきなりノーッタがそこに気付いたのはダーナと合流する前、源力総量が低かったせいで狩人としてパッとしなかったからこそだ。


『そうか、20歳と言っていたのは……そういうことか。』


 20歳前後を境にごく一部の特殊なものを除いて源力総量の伸びは止まる。カイルが条件の一つに20歳未満としていたのは源力総量を上げてもらうためだ。だが通常であれば14才で学校を卒業、2年の研修期間を終えて16から正式に狩人になった場合は20未満で腕の立つ狩人というのはどうしても無理がある。


『ところで1週間が過ぎてカイルが戦闘に参加せずに草原の縁とかうろうろしてたのはどうしてっすか?』


 ルウミは前髪を短くして濃い青い目が見えるようになった。よく見ると眉の中ほどからこめかみ近くに掛けてやや色素が濃いところがあるがそれ以外は異常はない。


『ああ、カイルはポーターだからな。俺たちの予備の道具とかロープ他を持ったり獲物を運ぶのが仕事だ。俺たちの異法の技が上がっちまったんで道具を使うことはないんだがな。 本来は狩りの前衛に出るために入ってもらったんじゃないのさ。

 今なら指輪リングも貸し出されるようになったしポーターの意味も無くなったんだが源力補充装具の作成と源力補充をしてもらうだけでもパーティーに居てもらう理由は十分だ。狩りの手法や異法の使い方も色んな提案をもらえるしな。

 だから俺たちと一緒に大森林には出てるが源力補充時や獲物を歪門へぶん投げる時以外は大森林内で採取活動をしてるのさ。

今のカイルのパーティーとての役割はポーター兼源力補充だから採取活動はカイルの個人活動としてメンバーは容認してる。』


 『偏食』のメンバーは一様にあれほどの力で前衛に加わればその分多く狩れるのに、とは言っていたがまたもノーッタが気付く。


『な~るほど……ひょっとしてカイルが俺たちに配ったこれって買ったもんじゃなくて採ってきたもんってことか?』


 ダーナから折角貰ったものだし他の狩人もこんなものは持っていないからパーティーメンバーの証として、これまでの注目を浴びるための装いとしてなるべく普段から下げていようと提案され、常から首にかけているペンダントを見せる。


『場所は既得権が認められてるから言わないけどね。』


 そう返したカイルに向かって一体どれくらい金持ってんだとか、それだけ金があるなら大森林に出る必要もないだろうと言ってきた。

 ダーナは父親から宝石の原石を採ってるのがカイルだと聞かされているかどうかはわからないが少なくともメンバーには言っていないようだ。

都市の富裕層へはあまり出回ってないのはより高い値で他の都市へ回されているためだというと一同はため息をついた。


『そんなに稼いでんのか。それでもまだ大森林に出て稼ごうとしてるのはなんでだ? いくら力があっても危険な場所には変わりないだろう?』


『興味と金のためかな? なんせ俺は人よりも重い荷物を背負うことになるからな。 

 それに子供の頃が特殊だったんでな。

家族を持つとどれくらい金が掛かるかよくわからない。

せめて誰かが身籠るまでは稼いでおきたいのさ。』


「重いってうちらかいな? でかい上に重くて悪かったなぁ!」


 右に座っていたアマザが立ちあがる。

 カイルとほぼ変わらない身長が気になっているアマザが不機嫌になった上にカイルの頭の上に乗っかってきた。重いと言われたならそれを実感させるつもりらしい。

それをみた左のタミーは椅子を寄せてもたれ掛ってくる。今日はミーティングなので3人とも薄着なので密着させると女性の柔らかさを直に感じる。


「別にそのままの意味じゃないことぐらいわかってるだろ? 嫁さんを持つことになる男の覚悟ってもんだよ。」


 俺は軽く返したつもりだが意外と周りの男たちは真剣な感じだ。

そういえばこの中で妻帯者はいないんだっけ。そう思って見渡すと何やらグンジョーとルウミが視線を交わしている。


『一般的な狩人の稼ぎでも十分だと思うがな。そりゃまあ嫁さんを複数娶るなら稼いでおくに越したことはないか。

 どうせならウチのリーダーなんてどうだ?

そっちのリーダーよりも薹が立っているかもしれんが狩人やってるやつの婚期は他の職よりも遅いのが当たり前だしな。』


「な、な、な、何を言うかノーッタ! カイル殿に迷惑であろう?」


 念話でなくて普通に声を出して、しかも立ち上がってる。

その反応を見れば『遠慮』のメンバーにもダーナの気持ちは丸分かりだ。


 カイルがその様子と周りの雰囲気にどう反応していいのかと思っていると横からいきなりタミーの顔が接近してキスされた。さすがに他人の前なので軽いものだったが回りは囃したてるわけでもなくニヤニヤとしているだけ。


「いきなり何を?」


「誰かが身籠ったら、なんて言ってるのになーんにもしてこないことへの抗議! アマザはどうする。」


 タミーはカイルから離れると視線を上げて尋ねる。


「うちは恥ずかしいからこれでええわ。」


 そういって腕を頭に載せて体重を掛けていたのを前に回して密着してくる。なんというか柔らかいのが当たって気持ちがいい。

だが回りはニヤニヤしている男どもだ。そしてミーティング中だ。鼻を伸ばすわけにもいかないと思って視線を上げるとダーナが不機嫌そうに眉を寄せていた。


「アマザ殿、タミー殿、婚約者の態度に物申したいことはあるだろうが今は仕事の打ち合わせではないかな?

 話の続きをしても?」


 ダーナは注意をしたが念話でなくて声に出している。

とりあえずはおかげでアマザも着席したし元のミーティングに戻ったのは助かった。なんだかダーナやアマザの視線が正面に向いてるような気もするが……


 その後、詰所の広場に移動し、珠を取り出して源力の補充を試したり源力大量消費で出来ることなどに意見を交わす。

『偏食』たちはもちろん源力補充装具を希望したがいきなり実戦で扱わずに源力大量放出の特訓をしてからという話になった。

合同活動は終わったので『遠慮』の狩りを終えて近くにいれば現地で、暇があれば修練場での訓練で合流することとなった。


 特に装具を作成・提供するのに金を受け取らない。その代わりにノーッタが作った忌避剤(今は単純に草の汁を絞っただけでなく、使う草の種類を絞って煮詰めているそうだ。)を融通してもらうこととその忌避剤については他言しないことした。

源力補充装具へのチャージに対して対価は請求するがそれほど高額ではない。

なんせパーティーを組んでいない以上あちらの希望時にすぐにチャージすることが出来ない。

チャージした源力装具の珠を大量に作り置きしておけばよい話なのだがそれが他人に渡らないとも限らないのでとりあえず一人2個渡すことにした。『遠慮』のパーティーメンバーは一人5個ずつ持っているのでそこからこの場で渡してもらい、メンバーへは後日補充分を作って渡す。


 その後、薬店メイシンに行くため中央地区へ足を運ぶ。



-*-


「全員で来い!」


 動きを優先した被覆部が少なく軽い臙脂色のレザーメイルを身に付けた男が前に整列した屈強な男たちに声を掛ける。


 10人近くの都市保安課の男たちはその声が響いた後、各々違う武器を構えて持ち指示した男を取り囲むように散る。

 剣、杖、槍、ナイフ、刺又など武器のリーチはまちまち、刃は潰した訓練用のものだ。10人以上が一人に全員かかることは出来ないので精々同時に攻めることが出来るのは4人程度。

 まず後ろにいる男が袈裟がけに切ろうと飛びかかるが男は振り下ろされる間合いを見もせずに前に歩くだけで避けたと思ったら後ろ斜めに足を引いたかと思うと下ろした剣を振り上げる前に剣を握る手首を掴んで前方へ、足をひっかけられたので男は受け身をとれないまま前に倒れる。同時に男もしゃがみこみその低い位置のまま手をついて回転足払い、2人の男を転がす。男は動きを止めることなくひとところに留まる事はない。

 しかし突進しながら突っ込んできた男に刺又を当てられる。するとすぐに後ろからも刺股を当てられ、前後から二人の男に押されて動きを止められる。かと思ったが左に動いたと思ったら右へ側転、刺又を持つ手はいくら力を込めても抑える部分が回転すれば持ち続けれない。緩んだ隙に刺又を脱し投げ飛ばされる。

 槍を持って対する相手に男は鋼索を取り出し地面に投げたかと思うと槍を持つ男が下がろうとする前に索は跳ね、槍を持つ手を強かに打ちつけ、痛みに怯むうちに男は近づいて引き倒す。

 杖とナイフ使いも男に一撃を与えられないまま、すばやく近づいて獲物を持つ手が掴まれたと思ったら一気に引っ張られ、そのまま前方に倒されると思ったら重心を崩すためだったようで体の方向転換によるGを感じたと思ったら投げ飛ばされていた。


「異法士の相手は異法士に任せておけばよい。だが対人に対しては訓練さえすればこれくらいにはなれる。

 諸君らは防衛課ではなく保安課だ。

巨獣に対する武器の使い方も習得してしかるべきだが都市内での保安、警備を担当するなら対人の格闘術も身につけておくように。」


 男が鋼索を持って引っ張ると縮んで全体が短くなり、40モイトほどの長さの棒になって腰に差す。


「では次、防衛課の異法士の訓練に移るので散らばった武器は片づけておけ。」


 そういうと男はレザーメイルを脱いで別の装具、狩人が身に付けるものに比べて全体に厚みがある金属で重そうな防具を身につける。

そして都市保安課が片づけた訓練場に別の集団が整列しているところへ向かう。

 そこに若い男がやってきて大きな声で告げる。

 

「ニーオン教官、課長から伝言です。午前の仕事が終わったなら顔を出して欲しいとのことです。」


「わかった。課長室にいけばいいんだな?」


 その男、ニーオン・カイロクは歩みを止めないままで伝言を伝えた男を見ずに応える。


 その後 伝言を持って来た若い男が見たのは展開した土壁ごと吹き飛ばされる防衛課の職員だった。



前話と今回の話の間にあったのが3-24


カイルがモトスの耳を吹っ飛ばした時に鞭に変えたのは師であるニーオンが捕縛を含めた索を操る武術を使っていたので鞭の扱いも教えられていたため



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。