↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あっちとこっち  作者: rurihari
3 売り物
74/142

3-16 かき氷

 布で覆ったカキ氷製造機を背中に紐で括りつけて日が落ちかけた町を歩き、既に夜の営業を始めている赤髪亭に戻る。

中央にある主に金属製品を扱う道具屋で作ってもらったのは日本あっちに存在する昔ながらの手動式のカキ氷製造機の構造をやや小さくしたものだ。なので押し付け回転させるためのモーター部と刃以外がプラスチック製の家庭用のものより大きいため背負うことになった。前に抱えて持つことも出来るがさすがに長距離の移動は疲れるしこんなことでいちいち重複化を使いたくない。大きさの割に重いのは全体が金属製であることと氷を押し付けるのと回転を楽にするためにクランク式でなくハンドル式にして大きくしてあるためだ。


 夕刻、冷水目当てで繁盛している赤髪亭は慌ただしいのが目に見えているのでこれは二階の部屋に持って上がり、試作品の稼働は夜にすることにする。アンジェとコーリンからは


『手伝ってください!』『手伝いなさいよ!』


 という念話が来たが今日は別件で出かけると返答して再度中央へ向かう。

ちなみにアンジェ、コーリン、アマザ、タミーの内 異法士でないコーリンは元から持っている工術士作成による念話カードにアマザとタミー、そして俺への念話も出来るようになっている。


 次の行き先はしばらく狩りは0番地区外の北西方面を原石目当てに攻めているせいでしばらく訪れてなかった薬店メイシンの主人コウサの元である。

まだ店は開いているようだが夕食時なのでいくら人が多い中央地区でも買い物に訪れる人は少なく、メイシンの店内も人はいない。


「こんちは、コウサ師匠!」


「おっ来よったか。 忙しかったのか少し間が空いたな。」


 俺の挨拶に奥から出てきたコウサ師匠は食事中だったらしく、俺が提供した七輪で店の奥でキノコを焼いていた。


「カイルに言われたように火で炙って食べるのを試しとる。ワシら家族がキノコを試食した時は大抵煮たんだがこれの方が簡単でいいな。塩掛けるだけでなかなかいけるわい。」


 あんまり塩ばっかぶっかけてると体に悪いと思うんだが味の好みは人それぞれだしな。旨そうに食べてるのに水を差すこともないか。


「ところでお前さんが来ない間にお前のヨメさんが来おったぞ?」


「ん? ヨメさん? 」


「ほれ! 『あの』キノコの件でお前さんと一緒に来た白いだ。」


 コーリンのことか。


「彼女はまだ婚約者でヨメさんじゃないですよ?」


「何言っとる! お前さんに解消するつもりがないなら決まりなんだろ?ならヨメさんってことにしとけ。あんまり距離を空けてると相手が不安になるぞ? それこそお前にやったキノコを喰って発奮せんかい。」


「はぁ……それより彼女はなんで師匠のところに?」


「ああ、カイルが持ち帰った催淫作用を持つキノコについてじゃな。なんでも夫とその同僚に身内が迷惑を掛けたから懲らしめるためとか言ってな。芳香が無くなってもう乾燥しとるから効果がないはずだといったんじゃがな。どうにか使えないものかといわれて煮出したものを瓶に詰めて渡したんじゃよ。」


「アレを、ですか?」


「ああ、二日後くらいに礼を言いに来たぞ?採取時の芳香ほどではなくても効果があったのかもしれんな。踏み込んで聞いておらんが。 若いがしっかりしとるじゃないか。」


 礼をいいに来たってことは煮だしても多少なりとも効果があったのか?そもそもアレは今のところ獣人族の中でもコーリン達のタイプので女性にしか効かないって話だったが。そう思ったところでコーリンの両親との別れの日 トウヨさんの疲れた表情が思い浮かぶ。

 コーリンめ、ミモクさんに一服持って間接的にトウヨさんを懲らしめたわけか。一応コーリンに釘を刺しておくべきか。あちらで広まると効果がある者が多いわけだから問題になる。


「コウサ師匠、あの手のやつは悪用されても困るんでまたコーリンが来てももう渡さないで下さいよ?今回は問題にならなかったけど手違いがあったら問題になってたかもしれないんですから。普通に煮出したんならよかったですけど。(出来れば水か油かで試して成分が水溶性か脂溶性かを調べておくほうが効果の違いが分かるからやってみたいけどなぁ)」


「わかったわかった。ちょっと軽率だったと反省はしとるよ。それでカイルが新しい資料を持たずに来たってことは例の件か?」


「ええ、どうです?」


 例の件とはコウサ師匠と最初に出会ったときにキノコに関する話題としてあげた養殖のことだ。

以前に大森林内で見つけたキノコのうち、比較的大森林で見つけやすい木に生えていたキノコを倒木ごといくつか持ち帰っていた。

きのこの実態が倒木の中にあるならそれを砕いて種菌として植え付けられないかという実験のためだ。

できるかどうかは分からないし年単位の実験になるがとりあえず実験場としてタミーの家の前の区画を借りられたから試してみるつもりだ。

生木を切ってきて煮沸してから付けてみるのもいいし、チップにしてから煮沸して瓶に詰める手もある。確かクワガタの菌糸瓶飼育で菌糸瓶と単に発酵マットを詰めた瓶の口同士をつなげることで菌糸を周らせる手もあったはずだ。 気温が問題だがこの年中暑いこの年輪都市と大森林の中で生えるものだから日本あっちほどの管理は必要ないと思うんだがどうなるか。



「確かに白い糸みたいなものが張ってくるな。種もないのになんで増えるのかわからんかったが面白いもんだ。だが倒木が小さくて砕いても量が取れんかったがいいのか?」


「ええ、まだ試験ですしね。小屋を作ったらまた来ますんで。」


 そういって薬店メイシンを後にする。今から赤髪亭を手伝っても十分間に合うだろう。


 赤髪亭に近づいたところ最近のような順番待ちの列はなく、思ったより早く営業を終了したようだ。それにしたって早すぎる気がするが。

昼から続く暑さもあって入り口を開けていたので俺が何かを持ち帰っていたことを知った面々が部屋に陣取っていた


「もう夜の営業終わったのか?」


「うん、今日は仕入れが少なかったみたい。その上に冷水目当ての客が多いからさっくり終わったわ。」


「それでカイルが持ち帰っていた物を検分しに来ていたのですが。」


 いくらなんでも勝手に人の部屋に入ってくるのはどうなんだろか?ちなみに喋ってはいないがヴェガもいる。


「ナニコレ?」


 見た目調理するためのものに見えないからな。疑問も同然だ。


「コオリ、こっちじゃ一般に『氷』って言うそうだ。これからは氷っていう方がいいな。『氷』とか『凍らせる』って言うことにしよう。

これはかき氷って言ってな。最初に作った時にどう使うか話した中にあっただろ? 氷を削って食べるのさ。」


そう言ってもカキ氷やアイスクリームなんてものを知らない二人には連想できないようで頭の上にクエスチョンマークが浮かんでるようだ。ヴェガは話を聞かずカキ氷器を突付いている。

 

論より証拠と実際に下に降りて作ってみることにした。


「アンジェ、いつもどおりの氷だけど、この器に水を入れて凍らせてくれないか?」


 付属品として作ってもらった20モイトほどの円柱の筒を渡す。

たらいに水を張って凍らせてもいいけど持ち上げるのに重いし削っても受け皿から外れて落ちるのが無駄になりそうだから専用のものとして用意していた。金属で作ると中の水を凍らせると取り出しにくいので可塑性の素材で作られている。火の異法士の力は手の表面からでなく、作用点を指定できるので水だけを氷になるまで冷やせば覆う容器が強く冷えてないなら取り出しやすいと思ってのことだ。


これを上部に乗せたハンドルと繋がってる押し付け板と下部の削るための刃物をつけた板に挟んでと。あとは取っ手をつけたハンドルをぐるぐる回してと。

 シャリシャリというかジャリジャリといった感じの音がするがとりあえず削れて下に落ちてくる。 もうちょっと刃の角度を変える必要があるかな。

4人分を作って並べてドヤ顔で言う。


「こんな感じで削った氷を食べるわけさ。」


「でもカイル、これだと口は冷えるけど普通に氷を水に入れて冷やした方がのども潤せるし意味がないんじゃないの?」


「いやこれだけで食べるんじゃなくて上にかけるんだ。」


 そういって4つの皿にカキ氷を盛って果汁水を振り掛ける。


「氷の白と果汁の色が付いて鮮やかですね。」


 そういいながら試食を開始したのだがどうにも薄い。 

考えてみればカキ氷にかけてるのはシロップだからもっと糖分を煮詰めないといけないのか。


 俺がそう考えながらシャクシャクやってるとアンジェとコーリンは昼間なら冷水よりもこっちの方が冷たくて気持ちがいいといいながらスプーンを口に運んでる。 ヴェガはさくさくと氷を口に運んでいたせいかアレ(アイスクリーム頭痛)を体験してるようだ。後頭部を抱えて呻きだした。


ふっふっふ、冷たさを得るための代償を味わうがいい。

そういやこの時に冷たいものを額に当てると頭痛が治まるってホントかな。そのうち試してみよう。


 ちなみにあっちのTVで○代目氷屋○○郎の天然氷は頭痛が起きないってインタビューでやってたな。あるクイズ番組でその天然氷を作る過程を取材してたけど作るの大変だよな。アンジェが作ってくれるようになってよかった。


「あ~~ヴェガ、冷たいものを一気に食べるとキーンと来るだろ?カレーの時もそうだったけどもうちょっとゆっくり食べたらどうだ?」


 頭を抱えてテーブルに突っ伏した後、左手でテーブルをバンバンと叩いている。

俺の言葉とヴェガの様子に二人は若干不安げな目をしたが結局量が少ないこともあって平らげた。


「明日は果汁水そのものを凍らせて試してみた方がいいな。雑談しながら食べると解けたら味の薄い果汁水だもんな。それなら果汁水に氷入れる方が早いわけだし。それとマリアさんは銭湯? 厨房に置いていいか聞きたかったんだけど。」


「母さんは店が終わる前に出かけたまま帰ってきてないわ。」


「じゃ、明日でいいか。」


「それにしてもこのカキ氷とやらは一気に体が冷えますね。暑い昼間はいいですけれど夜は少し寒さを感じます。妻としては良人に労わって欲しいですね。寝室で暖めて頂きたいところです。」


「コーリン、色ボケみたいなことを言わない! そもそもアンタは暑がりでしょうが。 どうせ来年にはなるようになるでしょう。」


「アンジェは興味がないと?」


 ズバッと言われて頬を染めた上に言葉に詰まるアンジェ。


「それにより多く子供をした方がより夫に愛されてるという証左なのでは?」


 いかん、話がそっちへいく。話題を変えないと……

コーリンの母親のミモクさんも血を繋げることを重要視してるみたいだったけどそんな急いで儲ける必要もないだろうに。


「そういやコウサ師匠から聞いたぞ?コーリン。 出立の時トウヨさんが疲れてたのはお前のせいだな?」


「さて?両親の私生活まで私は知りません。」


 動じることなく普通に口直しかお茶を口に運ぶコーリン。まぁいいか。ひょっとするとミモクさんも納得の上でかもしれないし迂闊に踏み込んでとばっちりを食うかもしれないからこれ以上は追及しないでおこう。 試作を終えて俺は自室に帰った。



-*-


 狩りに向かう詰所での談話中アマザから


「婚約者になったのはうちらの方が早かったから最近あの子達に譲ってたけどぼちぼち構って欲しいなぁ?」


と言われるのは心苦しいが飯の種は作っておくほうがいい。

今日の昼からはサンタシに言われた農耕課から場所の説明と使用についての注意を受けてから引き渡しの予定だ。


「すまん、今日も都市絡みの用事で昼からは、あ、違うな。タミーとアマザにも来てもらわないといけないのか?」


「ん?どういうこと?」


 今日の狩りの後に同行して欲しいことと、その時に土の異法でやってもらう内容を心術で伝える。そうかっちりしたものを作る必要はないにしても日陰であり、しかも風通しがいいように作らないとな。それなら細かな修正が可能な土の異法で作ってもらう方がいいだろう。実験だからきちんとした土木関連の異法士に頼むまでもない。


 0番地区の狩りはより北東へ足を伸ばしているので少し違った獲物が混じるようになったが特に対処を変えるほどではないので問題はない。

ただ移動距離が最初の頃に比べてずいぶん長くなってるので早朝から出ても最近の帰りは遅めになっている。


いつも通り大店の問屋リクコにてタンジーに迎えられて高値買取のものを売ったあと都市側の買取窓口に行くと既にサンタシともう1人の都市職員が待っていた。念話で帰ることを伝えていたせいだろう。


 ヘイゴと名乗った男は都市の農業関連を取り仕切る農耕課の中でも第8地区に属してるそうでがっちりとした体格を作業着に包み、坊主頭で実直な感じがする25才くらいの青年だ。

ここからは彼の仕事なのでサンタシと別れ、一緒に歪門を通って第8地区へ向かう。行き先はタミーの家がある円環大路傍。家屋地区と接する農耕地だ。


 年輪都市は時計のように区割りされて北を0番として11番までの地区が中央地区の周りに配されているが。西半分にあたる地区はほとんどが農耕地区だ。

しかし面積ではほとんど農耕用の土地でも小さな町と呼べるほどの集まりは所々にある。都市拡張を行ったきた名残なので主に過去の都市外壁跡で同心円状に作られた円環大路沿いに存在している。


 タミーが亡き夫と構えたのもそんな場所で東側の人口密集地よりも家の間取りがやや広く、都市からも不便な立地から見逃されている。

しかし農業で糧を得るために住むのは近い方がいいと考える者以外に新たに住もうとする希望者は多くないため、空き家は壊されて農耕地にされるのだがこんな狭い土地は当然収穫が少ないし日当たりも周囲の家のせいで良くないので借りようとするものはおらず、民間に貸し出さずに都市農耕課が直接管理している。


 今日の用件である現場、といってもタミーの家の横に当たる、に到着してヘイゴから確認事項が伝えられる。


「こちらの家とあちらの家に近接しているこの部分がカイルさんの希望されている土地でしたね。 ただここは農耕地とはされていますが元々は家があったところなので肥料などで土の改良からしないといけませんがよろしいですか?」


「ええ構いません。サンタシさんから都市へ申請する時にお願いしていたのですが農業関連の実験として使うことを目的にしてるのですがここに小屋を建てていいですか?」


「ええ、住んで生活するのでないなら手続きの必要もありませんし。広い面積で貸し出してるところは道具置きや一時的な収穫物の管理場としての小屋を建てるのは認められてますので問題ありません。」


「では、」


 俺はアマザとタミーを伴って借りる土地に入る。


「ふーん、タミーの家の隣に借りたんやね。でもええの?人が少ないゆうても円環大路の傍やで? 何か試すんやったら他人に見られたらまずいんとちゃうの?」


「別にすぐに金になるネタでもないしいいさ。 じゃ、土の支配に二人の源力を合わせられないから、大仕事だけどどっちかにお願いするよ。」


 三人で農地の四方をぐるりと回ってからアマザとタミー向かって心術で見せてた小屋の作成をお願いする。


「そんなに形に拘らんでええねんやろ?朝に見せてもらったような感じやと……。」


 アマザが担当してくれるようでまず用地の地面に源力を流して土を支配していく。 だがその支配する土の深さは狩りの時よりも深い。

中心部の土を2メイトほどの深さの土を一気にその周りに持ち上げる。土を掘り下げた範囲は用地の端から2メイトほど空けているだけなので実際にそばで見てると持ち上がる土はかなりの多さだ。


 それを見ていたヘイゴは大口を開けて呆然と、はしていないが目を見開いている。アマザの支配している質量に驚愕してるのは間違いないようだ。

彼は農耕課だから畑の土を掘り返したりする土の異法を目にしてるだろうが精々畑の畝の高さや土を掘り返して耕すとしても30モイト程度だろう。

外見特徴からすると彼は異法士ではないようだが彼が関わった土の異法士ではここまでの異法士はいなかったんだろうな。アマザのポケットには玉状の源力補充装備も入れてるのでここでどれほど源力を消費しても問題ないだろう。それどころかこれも源力枯渇及び一気に相当量の源力を使っての異法行使なので訓練にいいだろう。


 そして脇に寄せた土はアメーバーのように動いて掘り下げた空間を覆うように天井を形作っていく。

下に掘り下げられた空間を覆う天井はドームのように中心が高くなってなだらかに曲線となっている。しかし2メイトも掘り下げた土で作ってるので耕土の下の石や岩混じりであるため表面は滑らかで綺麗とはいえない。


「とりあえずこんなん? 土の中にあった石も含めて一緒くたになってしもたけどええの?」


「どうせ臨時の実験場だから構わんよ、いずれは元に戻さないといけないわけだし。あとはそれぞれの壁とか天井の厚みを均等にして、地面と天井の間にまっすぐの壁を伸ばして風を通す通風孔をいくつか取ろう。」


 タミーは自宅に帰って飲み物を取ってくるといっていたので俺とアマザが異法で作った即興の土の小屋を調整しながらぐるりと回る。


 実験場だし押しつぶれることがあっても住むわけじゃないから問題はない。


「よし! 中はあとで平らにするとして、内壁を作ったりしきりを作ったりするかもしれないけど外はこれでいいか、あとは崩れる危険がないように硬質化してくれる?」


俺の指示に従ってアマザは一気に硬質化をかける。


 ここに至ってヘイゴは目を見開くどころか自失したように呆然となっていた。大質量の土を支配して移動させるのに始まり、大質量の土の移動どころかどけた土を使って半分地下に埋まった様なドーム状の小屋を作成。しかも家一件分はありそうな土のドームを一気に硬質化するなんて馬鹿げている。そもそもこれの硬質化ができるできない以前にそれまでの作業で異法が尽きていてもおかしくない。いや尽きているはずだ。 こんなことができるなら巨獣そのものを足止めどころか土で覆って仕留めることだってできるはずなのだから。 (事実今のアマザはそれが可能だ。)

 

 後は半地下になるドームの入り口をスロープにして、それだけだと雨が降ったら水が入るからと色々手を加えていると我に返ったヘイゴが声を掛けてくる。


「あ、あのぉ。農耕地を貸し出す場合は今回のような特例とはいえ生産もしくは研究などで貢献していただきたいというのが農耕課のお願いなんですけれど……。これって?」


「ああ、物置に近いですけどちゃんと食料に関する実験ですよ? 実はこんな感じで。」


 俺はこの日光を遮り昼間の酷暑を避ける環境を作った理由を説明する。


「はぁ、話は分かりますがうまくいくんですか?聞いたことないですけど。」


「そのための実験ですよ。」


「はぁ、そこの女性の異法にも魂消たけどサンタシさんから聞いてたとおりあなたの着眼点が変わってるというかなんというか。」


 ヘイゴはまだ驚きを引きずったままのようで嘆息多めだ。


自分の異法の評価ににこやかに手を上げて答え、俺の近くに来て


「内助の功ってなもんやで? これだけの仕事普通の異法士やったらできひんけど旦那のためやからね~。 まぁ見返りも期待しとるけど♪」


「えっ・?」


「聞いとるで? アンジェに服買ってあげたんやろ?」


 正面で期待の目で見られたらどうしようもない。


「はい。なんなりと。」


 まっ仕方がないわな。


 そんな会話をしてる間にヘイゴはドームの天井に手を置いて強度を確かめているようだった。嫉妬で睨まれるよりはよかったが上に乗って天井を落とさないでくれよ? 源力が増加し、一瞬での硬質化訓練までもこなしているアマザが施した硬質化なら問題ないとは思ってるけどね。


 その後 タミーが持ってきてくれた果汁水を飲んで氷で冷えた時と比べてその有難さを痛感。でもこれはこれで体にはいいよな。ヘイゴに氷の話題を振ってさりげなく赤髪亭の宣伝をしたあとこの場所の使用目的を上に報告することを了承して今日の用事は終わった。

アマザの今日の手伝いの対価は後日にしてもらうことにした。タミーも催促してくるとは思うが何か考えておいた方がいいか。


 今朝はマリアさんが遅かったのでかき氷製造器を置いていいかの確認が取れていないままだったのでそろそろ夕方営業の仕込みが始まってる赤髪亭に向かう。すると聞こえてきたのは


「なんでよ! そんなのおかしいじゃない!!」


 アンジェの怒声だった。




リクコ 中央買取場に店を構える大店の問屋

タンジー リクコの買取窓口を仕切る大番頭

サンタシ 年輪都市中央買取課窓口主任

ヘイゴ 農耕課 第八地区の下っ端職員 男 兵庫区からもじって


1モイトは1cm

1メイトは1m



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。