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あっちとこっち  作者: rurihari
3 売り物
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3-12 父親 case3

 狩りを終えて赤髪亭で『遠慮』のメンバーと食事中にアンジェの告白を戸惑いながらも受け入れてから数日経ったがそれで日常が変わるわけでもなかった。

 そりゃまあ婚約者が増えたから、告白を受け入れたから、だからすぐに同居を開始ってわけでもないし未だに誰とも体の繋がりがあるわけでもない。


 日本世界あっちでも年輪都市こっちでも男女交際未経験なまま話が進んでるので自分からどう動いていいのかわからないまま過ぎているって感じだ。

 状況に流されてるまま何もしないわけにもいかず、まず頭に浮かぶ家族を養うには金、ってことでピプは十分に蓄えておくべきだと狩りでは無理をしないように気を使いつつも数を狩るようにしているし原石を買い取りに出すのも継続して行っている。

 メンバーの半分が自分達とはいえその都合で終日狩りをするわけにもいかないのでこれまで通り午後を回った程度で切り上げるのは変わっていない。原石もこれまでの在庫に加えて東への狩場の移動のおかげで小出しで買取への供給を行っても在庫は更に増えている。


 全員で一緒に暮らすならそれなりに大きな物件を借りるなり買うなりしないといけないし。

 金に関しては源力の補充装具を販売、チャージする仕事をすれば子供が生まれたとしてもやっていけるんじゃないかと思っているが狩人がそれに源力補充に慣れると俺がいなくなった後に問題になるのでは?とも思うので今もメンバー以外に渡していないし公表もしていない。



 それにしても結婚が決まったのに今更なんだがこっちの交際ってどうやるもんなんだろうか?


 アマザとタミーからお互いを知ろうと3カ月以上経つがこんなな感じでいいんのかなぁなどと思っている。今も休みの日や医術院、薬店に教えを請いに行くとき以外はなるべく会うようにしてるのは変わらないがコーリンとアンジェも同様にとなると割ける時間が減る。

 コーリンも加わったけれどまだ二人で出かけたことがない。アンジェに至っては言わずもがな。

年上組よりも後で加わった年下組とはしばらく各々二人で出かける必要もあると思うし。各人と個別に過ごす時間がないなら都合が付くなら集まれる人数で出かけるのもありかと思っていた。


 そう思って直にコーリンやアンジェに尋ねたのだが、


「一緒に過ごすなら朝出かける前や貴方の仕事が終わってからでもいいじゃないですか?同じ家に住んでいることですし。」


 とはコーリンの意見。


「別に二人で出かけなくてもいいんじゃないの?それに例の件でサポートしてもらう時は二人みたいなもんだし。」


 というアンジェ。


 独占欲ってないのかな?


 まあそれくらいでないと一夫多妻でやっていくなんてうまくいく筈もないか。女性同士の揉め事を仲裁するのがわが身になることを考えたら今くらいさっぱりしてる方がいいのかもしれないな。

裏で4人がどういう会話をしてるのかは知らないけれど、知らない方がいいこともあるだろうし。


 考えてみると男女二人で出かけるといっても映画館とかアミューズメントパークとか娯楽施設がないもんな。この都市じゃまったりと公園で過ごすとか美味しいものを食べに行くってくらいなのか。トランプのようなカード遊びはあるけれど二人でやって楽しいってもんでもない。


 少なくともコーリンやアンジェは来年は学校を卒業して自由研修期間=自由恋愛期間が控えてるんだから知り合いや先輩の恋愛経験とかの聞いて憧れてるものがあるんじゃないかと思ったんだがこっちじゃ恋愛というか連れ合いを見つけるためって感じのもっと重い感じなんだろうか?


 何か希望はって聞いたらコーリンはそれならさっさと血を残すために子供を、アンジェは母さんを手伝うためにも冷却能力の習得と応用をってな感じ。

 既に自由研修期間=自由恋愛期間を終えているアマザやタミーの方が出かけたがっているように見える。 二人とも14から16歳の期間は異法研修や修練、結婚とかいろいろあった期間だったはずだからな。

 そういやアンジェの告白、というか先の三人に対する許可の告白時、他の三人は了解したわけだけれど、コーリンはなんとなく気付いていたのか大した反応を見せなかった。アンジェとタミーはこれまで会ったことが多くないこともあり、微妙な顔をしてたが会う時間が減るって思ってたのかな。


 それぞれの希望があるわけだからあまり乗り気でないコーリンとアンジェには悪いがアマザ達二人と出かける時間は作っておこう。なんせ最初は二人だけだったのに4人になっちゃったもんな。ご機嫌取りというのもある。


 こっちの交際ってどんなもんか男友達がいれば分かるもんだけど 俺は学校じゃ同学年から二才も年上で成長期の周りに比べて体格も違うから浮いて一人だったし(日本あっちでも留年してる二つ上の同級生がいたら距離をあけるわな)、 卒業しても期間募集の仕事だったから会話するのも都市の離れた年上ばっかりだった。こんなことならロットののろけの話をもっと聞いておくべきだった。などと今更ながらではあるが男女交際の仕方で悩んでいるとコーリンから明日両親が家に帰ると知らされた。


 コーリンの両親の来訪からなんだかんだあったが翌日の午後狩りから帰って来るとトウヨさんとミモクさんがやってきて帰りの挨拶をしてきた。


 その手には風呂敷があり、スイカ包みで包まれた中には以前に振舞ったバチカーの残りが燻製として入っている。あの会食の後の残りはコーリン親子が満面の笑みで燻製にしていたな。


 ミモクさんからは


「稼ぐのも大事だけれど時間ができたらこちらにもいらっしゃい。」


 と言われ、トウヨさんは


「あ~~~、頑張りなさい……」


 何を?って思ったのだがナニやら口から魂が抜け出ているように見受けられた。ひょっとするとコーリンの悪巧みが当たったのかもしれない。

 少しの間こちらにいたのは骨を休めるため言ってたが遊んでいたわけではない。住んでいる衛星都市の代表者が年輪都市上層部との会議に出ていたので住民の多数派である獣人族のまとめ役でもあるのでその意見を伝えるためでもあったらしい。特に衛星都市での活動の方針の転換などはないようだが代表者と共に住民に報告するため今日のうちに帰るそうだ。


 てっきり挨拶に寄っただけだと思っていたのだが


「さて、では帰る前に貴方の力を見せてもらいましょうか?」


 ときた。

 表情はにこやかなままだが剣呑な雰囲気を漂わせている。

そういえばコーリンは俺が狩人と知ってるけど実際の現場を見たことがないし、当然ミモクさんもだ。例え同行することがあるにしても俺は必ず狩りに参加するわけでなく、異法ついての指示をするのと獲物を歪門に放り投げるのと源力の補充がメインだから必ず巨獣と戦うわけでもないし。

トウヨさんとは戦ったけど躱して崩して上へ押し上げて終わったし。個人の力で強者に発言権がある一族としては俺の力を知っておきたいってことか。


「構いませんけど。この店先でいいんですか?それにその体のままで?」


 獣人族の特徴といえば敏捷性。

動きでの撹乱と手数の多さで戦うなら手狭なところは不利だと思って尋ねる。


「別に本気で戦うわけでもないから構いませんよ。コーリンが言っていた貴方の力を見てみたいだけですし。

 それにこの体は施術によって元の姿より活性化してこの状態なの。元の体の筋力でより効率よく力を出すため、その筋力を支える為の骨や筋を強化する為に小さくなってるわけ。その代わりリーチを犠牲にしてるけどね。だから小さくなってるけどこの姿が若い時の姿と全く同じってわけでもないのよ?

 でもこの姿の方が若く見えるでしょ? 他人に施すのと違って変身した後は維持する源力は体をめぐらせるだけで消費は少なくて済むの。それでも源力は体を巡ってる限り減っていくから効果は永続しなくて寝てる時は解除してるけれどね。」


  そういって扇を広げる。鉄扇術?

 唯でさえリーチがないのに武器が扇ってことは打撃じゃなくて近接時の視界の狭窄目的かな?どっちにしろ素早さで負けるんだから打撃を食らっても大丈夫なように重複化はしておくか。如意棍を使うのは危ないし。

 そう判断してミモクさんから離れて重複化を行う。


するとミモクさんと呆けていたトウヨさんが目を見張り、その様子に結構真面目に戦うつもりなのかと思ったのだが


「貴方、この状態の彼と戦ったの?」


「あの時は多少は冷静になっていたが、狩人をしてるんだから異法士だと思っていたからな。源力は体外への流れにだけ注意してたんだが、これは……」


 重複化に伴って起こってる体の中の源力の流れからとその変化は施術士である二人には分かるようでなにやら驚いている。ミモクさんはパタンと扇子を閉じる。


「貴方がどれくらい動けるかはわかりませんが力については今の状態で予想がつきました。ここで確かめてるのは止めにしましょう。」


 自分の施術との違いに内心驚いており、カイルの力を検分することはやめる。


 施術士は医術士と同じように源力を体に作用させて活性化を行う。その効果の発現が治癒か肉体の強化かの違い以外にも源力が作用部を「通る」のか「留まったまま」作用するのかの違いがある。過度に源力を肉体に作用させれば壊れてしまうのでおのずと強化には上限がある。

 

 カイルはその体を通して源力を放出する量は補充用の装具にプールできる量から分かるように桁外れではあるが、その体に留めておける源力は通常の人間と変わらない。ところが重複化すればその源力のキャパは体の強度と共に上昇する。心術士も含めて術士は他人の源力が分かるがそれは源力が動いているから感知できるものだ。

 今、カイルが3倍ほどの重複化を行い、その身の内に急速に溜まっていく動きでその総量を推測できた。角付きは一般人のそれよりも膨大な源力を持つが戦いには関係がないし、ミモクとトウヨも実際に角付きの源力を推し量ったことがない。そのためカイルの源力が自分の施術のように力と防御に転化されるものなら到底敵わない存在だと判断した。


(コーリンにこの先いくら夫婦間で気に喰わないことがあっても力で訴えるのは止めておきなさいと伝えておいたほうがいいわね。彼は強いわ。

 性格からすると無体なことで力を振るわないでしょうけれど。)


 カイルは結局腕試しが行なわれなかったことを疑問に思いながら二人を見送った。


-*-


「カイル、ご飯できたわよ」


 ドアをノックしてアンジェは階下へ戻る。

仕事を終えた後の遅めの昼食は『遠慮』のメンバーと赤髪亭で取る事もあるが晩御飯を取るところはまちまち。

アマザやタミーと出かけた時は外食となることが多いし、相変わらず薬店メイシンに顔を出してコウサに付き合わされることもある。

 それ以外は赤髪亭の夜営業を手伝ってるのでひたすら揚げ物を担当し、片付けた後に夕食後なるが片付けはマリアさんとアンジェがやるからと自室に帰される。マリアさん曰く午前は別の仕事をしてるんだしそこまでしなくてもってことなんだが下に降りるとアンジェは既に晩御飯を済ませて銭湯に出かかける。

 なんというか告白を受けれたけれど反って避けられている気がする。マリアさんと夕食を食べながら話していると


「あの子、照れてるのよ」


 だそうだ。


「コーリンの件から私たちが背中を押して勢いで告白しちゃったけれど、いざ受けれてもらったらどうしていいのか戸惑ってるんでしょ。

 来年までカイルがあの娘とどうこうしないつもりなら結局これまでとそう変わらないわ。そのことが自覚できるまではあんな感じかもしれないわないけど愛想がないって嫌わないでね。」


「おかげでこっちは人生の荷が増えましたけど?」


「あら、嫌だったの? 出荷前から返品は受け付けないわよ?」


「そんなつもりはないですけどね。かなり必死の告白してたのはこっちにも伝わりましたし。それに人生に不貞腐れながら暮らしてた時になんだかんだ絡んで来てくれたのはアンジェだけでしたしね。

それにしても告白の件からどうにもこの辺りを歩くと視線がキツいんですよ。」


「なんせ常連の人たちがが集まる夜の営業中に大声で言ってたものね。

お客さんの子供たちを通してアンジェの学校にも広まっちゃったし。

 ついでにコーリンとの結婚についても知られちゃったしね。

 認められているとはいえ実際に一夫多妻の夫婦って周りにはそういないもの。女としては男は独占したいものだからうまくいくことも少ないし。

 それにあの子はあれでも人気あるのよ?

 巨獣侵攻のせいであの子の年は遅れて学校に通い始めた子も少なくないから一つ上でもあまり変わりがなかったしね。カイルがウチに来る前はよく同級生が誘いに来てたものよ?でも店の手伝いがあるからって全部断ってたみたい。 その頃にはファザコンを発症してたみたいだからね。

まっ、人気者を取っちゃったんだから有名税としてのやっかみは受けれておくことね。」


 闇打ちされるんじゃないだろうな。そういうバカなノリも学校に通ってる間はありっぽいもんな。

 そう思いながら賄いとして食材のあまりで作った夕食を食べる。今日も歪門に向けて獲物を投げ入れるのに重複化は使ったけどその分は昼にたらふく食べたので夜は普通の食事で十分だ。


「それにしても4人ともカイルが作った指輪をしてるわね。初めから狙って贈ったのかしら? するとそのうちヴェガもって狙ってるの?」


「いえ、単に素材の量の関係で5個作って貰っただけですよ? ヴェガだってそんなつもりはないよな?」


 そう言ってヴェガを見ると「何?」って感じでこっちを見返してくる。

すると一拍置いてフォークを持ったまま横に振り「ナイナイ」と意思表示をする。


「でしょ? それにヴェガは指輪は身につけてないしね。」


「ヴェガは付けてるわよ?指が細いから合わないってイヤリングとして耳に嵌めてるわ。」


 マリアさんから返答があるとヴェガは顔を右に向け、左耳に嵌められたピアスにリングが掛かってるのが分かる。

贈って死蔵されるよりはいいとそれを確認して三人で食事を続けた。

 ただアンジェと違って貯めた源力が消費されていない輝きがあるコーリンの指輪に比べてヴェガのリングは少し輝きが落ちていたのには気付いていなかった。


「そういえば近々アンジェから誘いがあると思うけど同行してあげてね。」


 マリアさんの言葉に頷いたあと食事を続けた。


-*-


 その数日後アンジェが狩りが休みの日が何時なのか聞いてきた。

特に午前から出かけるわけでないなら午後は融通が利くというと珍しくアンジェが出かけたい日があるという。


 その日は二人で出かけるのかと思ったらにあらず、マリアさんと一緒に都市中心部へと向かう。


 都市中央の歪門が並んだハブの役割をする大広場からある歪門に向かうのを見て二人が向かう場所が分かった。


『中央大公園行』


 そこは文字通りの大公園。

緑化されて散歩道があり、休憩のベンチがあり、休みには屋台も出る。

ただ公園の中央にはこんもりと盛り上がったドームがある。地下に入れるほど大きなものでその中にはこの年輪都市で無くなった者たちの遺灰の一部が持ち込まれている。年輪都市が廃墟だった頃から死者を共同で葬ったこの中央公園は都市市民全員の共同墓地だ。

 しかし日本あっちのように一年の決まった時期に墓参りをすることはない。仮にあったのなら市民が一斉に訪れて墓参りどころではなくなってしまう。この世界でも死者を弔う様式は宗教ごとにあるが信仰を捨てたこの都市では既にない。

 

 日本あっちのお盆のように花を供える必要はない。その役目は公園内の草花だ。

 日本あっちのようにお供えをする習慣はない。この都市の成り立ちでは死者に供えるものがあるほど余裕はなかった。


 先祖や親族を悼むなら時おりこの公園に足を運ぶか簡単に済ませるならこの公園がある都市中央部に向かって物思いに耽るだけだ。


 マリアとアンジェの二人は都市の公園に入り、この時期青い花が咲いた公園内の道を通る。盛り上がったドームが見えるところまできて二人は黙祷をしている。俺はついつい日本あっちの習慣で手を合わせてしまったが祈る心は同じだ。構わないだろう。


「父さんの命日なの。別に毎年来てるわけでもないけど報告はしておこうと思って。」


 アンジェはそういってからカイルの顔を見てはにかんで首をかしげる。


「ちょっと父さんと話してくるからこの辺で待っててね。」


 一人で公園内を散策してくるようだ。


「カイルのことを話に来たみたいね。 今日はあの人の命日だし。」


「アンジェのお父さん、ですか?」


「ええ、アンジェは似てないって言ってたけど『似てたわ』。カイルがウチに来た時の表情と私が出会った頃のあの人と。

 二人とも同じように力を持ちながら諦めてた。」


 マリアさんの語りにしばし聞きいる。


「あの人は移民組でね。

 都市間抗争が激しいところからやってきたって。

年輪都市ここじゃ異法士たちは狩人として巨獣と戦うけれど余所じゃ異法士は都市の外じゃ人間同士で争うもんなの。もちろんそれだけじゃなくて武器も使ってね。

 あの人はそこで兵隊さんとして戦ってたそうだけど自分の異法である火の異法をより有効に生かせないかって考えてたみたい。

 知ってる?焔硝って黒い粉。

いろんな種類があるそうだけどあの人は自分の異法でそれを爆発させることを考えていたの。」


 こっちの世界の火薬、爆薬のことだろうか


「でもね、そんなものは前から戦いに転用できないか考えられてた。

匂いがあるらしくって風の異法で発見、水の異法で濡らせば役に立たないから積極的には使われてなかったそうね。でもあの人は役に立つことがあるかもってより小さい粉じんにされたものを持ち歩いていたそうなの。 でも敵との接触でその粉が入った袋を落としてそれに気付かず武器で応戦。

 眼つぶしを兼ねた風の異法で粉じんは舞い上がり、それに気付かないままで味方に報告していなかった。他の火の異法士が武器を相手の手から離させようと加温した時、敵味方を巻き込んでの爆発が起こって味方まで殺傷してしまった原因を作ったあの人は追放。

 以後、焔硝を使うのは禁じ手とされたみたい。

 異法の中じゃ低く見られるの火の異法をなんとか使えないかと思ってのことだってけど反対の結果になった上に生まれた都市も追われ、失意のままで年輪都市ここに来てた。

 今はないけれど赤髪亭の近くには公園があってね、そこで屋台で故郷の料理を出してたあの人と出会った。火の異法士は兵隊さんのご飯も作ってたそうだから本職じゃないけれど料理はできたそうね。兵隊さんだから体力はあるから外壁修理でも食べていけたけれどどうしても火の異法に拘ってたからそれで食べていくことを選んだって言ってたわ。

 ま、それからなんだかんだあって私の父さんに厨房に引っこ抜かれて私となるようになっちゃたんだけれどね。」


 どっちから告白したんだろう。ってかマリアさん16でアンジェを産んだってことは卒業してすぐに手を付けたのかよ?


「アンジェには詳しくは言ってないけどね。あの人は巨獣侵攻の時に私たちを守って戦ったの。

 その時の侵攻で私の父さんも亡くなってね。それを知ったあの人は私たちを避難させる時に赤髪亭は必ず守るって言ってね。

私の父さんから店の名前を赤髪亭に変えて譲られたこともあってどうしても守りたかったみたい。

 都市の護衛を行う異法士すら特級相手には通じないから命を散らしながら戦うことになる。そんな相手にあの人はね。」


「……」


「まだ持っていた焔硝と共に食べられたの。その瞬間に爆発させてね。

 体内を焼かれた特級巨獣は人を食べるのは諦めて去っていったけれどあの人は遺灰すら残せなかった。だから本当はここに来てもあまり意味がないんだけどね。」


 俺は目を伏せる。

そのことはアンジェには伝えてないのか。


「私はね。カイルが奥さんを複数持ってその一人がアンジェになっても構わないの。ただカイルはあの人みたいに死なないで頂戴。

あの人は私の父さんの恩義と私たちを守るためにあんなことをしたけどそれは愚かな選択よ。

 特級巨獣には勝てない。

だけど逃げればいいの。狩人が危険なのは当たり前だけど決して無茶はしないで。」


「はい……。」


 マリアさんとの会話を終えてしばらく無言。風でさらさらと揺れる草木と運ばれた花の匂いが届いてもあまり穏やかにはなれなかった。アンジェの父さんか。

 どんな人だったんだろうか。


 するとドームがある中央部の方からアンジェがやってきた。


「じゃ、用事はお終い! 帰ろ!」


 そういったあと珍しく照れることもなしに腕を組んできた。こんなことをアンジェがしてくるのは珍しいというか初めてだな。


「あらあら、若いっていいわね~。」


「いいでしょ~。たまにはね! アマザさんたちとこいつが普段何やってるかわからないけどこれくらいいいでしょ。」


「もういいのか?」


「父さんへの決意報告を兼ねてお願いよ。あんたは父さんみたいに死なないでよね!」


「ああ、俺は臆病だからな。勝てる相手としか戦わないんだ。ヤバい相手にはすぐ逃げる。それは『遠慮』のメンバーにも言ってることだ。」


「そ、ウチの未来の旦那はヘタレなのね。それでいいわ。」


 そのまま腕を組んで帰ったが上機嫌のアンジェに引っ張られる様子を見られたせいかまたご近所の男子学生たちの目がきつくなったなあ。



ロット カイルが期間募集の外壁修理の仕事をしていた頃の上司


本当は特級巨獣の侵攻でカイルが喰われてアンジェがアマザとタミーを責めてから 生還したカイルに告白って流れを考えてたんですがあまりに加わるのが遅くなりそうなんで取りやめました


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