3-9 水辺にて
コーリンと両親を交えたお話は父親の不満げな顔を母親が上から押さえつけ、そのまま学校卒業後に結婚という流れの確認となった。
俺たちにとってトウヨさんは尾行以外は獲物を引き連れて来てくれた人ということでしかなかったのだが その動機がどこまで本気なのか巨獣を嗾けようとしていたということは問題だ。
仮に普通の新人狩人パーティーだったなら本人も含めて大森林で帰らぬ人となっていたかもしれない。なのでいきなり和気藹藹と打ち解けるとはいかないがやはりここは若輩から折れる方があちらもメンツを保てて物事はうまく行きやすい。
日本ではあまり表での仕事はしていないものの、バイトとはいえ社会の中だ。年代が様々な仕事仲間や接客対象と接しているとこういう事態はどうすればいいか分かってくる。
コーリンを褒めて持ち上げつつ、コーリンが掟のことを話してきた時点でそちらに伺うべきだったと卑屈にはならない様に考えながら話していたのだがその間トウヨさんは腕を組んで頷いていた。
しかしそれが気に食わなかったのがミモクさんで右手に持った長めの扇子を閉じた状態でバシバシと左の手の平を叩いて鳴らしながら
「娘と変わらない年若の者から気を使われてどうするのです? 帰ったら折檻するといったのに追加の枚数が必要ですか?」
奥さんから折檻と聞いてぶつぶつ言いながらも改めて非礼を詫びてきてきたので半端な時間ではあるが昼ご飯を全員で食べることにした。
「種族の特性として抗いきれないほど好き」とコーリンが言っていたので当然両親も好きなのだろうとバチカーを持ち帰ってきた。皮などの素材は売って肉だけを自腹で買取という形になったが原石回収を手伝ってくれたメンバーにもお礼で振舞うのでちょうどいい。
肉が熟成させているわけでもなく、いつもの唐揚を振舞うには香辛料を染み込ませる時間もなかったがコーリンは問題なく旨そうに食べていた覚えがあるので問題はないだろう。
夜の営業に向けて仕込みの前に自分の都合で厨房を使わせてもらうのは忍びないがまた食材を差し入れることにしよう。
全員で一つのテーブルを囲むには人数が多いので大皿を複数に分けてメインの唐揚げの他に小さめにカットしたステーキも並べておいた。
野菜が少ないが夜の営業前に大量に使わせてもらうわけにもいかないので勘弁してもらおう。
「さっきのバチカーか。熟成させないなら焼くのが一番だと思ったが変わった調理法だな。俺たちが惹かれる味は消えてないのはいい。 」
「中々いいわね。 カイルさん、これはバチカーでなくても出来るのかしら? 」
そう言う会話に返答して混ざりつつ料理を仕込む。
こちらではおそらくレモンのような柑橘類を調味料として肉料理に使うことは少ないんだろう。どうしても高い日中の気温で屋外労働をしていると発汗のせいで塩分が失われ、塩での味付けが美味しく感じるものだからそれが一般的になるだろうし。
今日のバチカーは捌くのが面倒くさい手羽は持ち帰らず、いつものテイルフィレとボンレスとストリップロインだ。
手羽は煮込みが食べる時に柔らかくなる調理法なので今回は持ち帰ってこなかった。
それでもこの人数はまだ多いくらいなので残りは厨房の使用料として提供しておく。
やや遅めの昼ご飯を終えてしばらく狩りの内容やあちらの獣人族のしきたりなんかを話題にまったりと全員で和んでおり、二人はすぐに帰らずに2~3日年輪都市にいるらしい。
歪門を通れば衛星都市に帰るのは時間は掛からないが たまに仕事を離れて休みを取りたいとのこと。
マリアさんは泊って行くのなら空いている二階の一室で休んでは?と申し出たが2人は中央地区に宿を取るそうだ。
年輪都市は歪門があるために例え都市の端から端に移動する都市内最長の移動でもそれほど時間もかからない。それよりも同じ地区内で歪門が設置されていない距離での移動の方がよほど大変だ。なんせ車や自転車もない、そして馬のような騎乗して移動する動物は飼育されていないので徒歩での移動だけになるので仕方がない。
住民が都市内の別地区へ遊びに行くことはあっても「旅行」することはないので純粋な宿泊施設は少ない。中央は他都市からの交易商人が宿を取る、移民希望者が審査を終えるまで一時的に寝泊まりするための施設がある。
それでは純粋な宿泊施設以外は何かというとラブホテルのような目的の宿は都市東側の繁華街などに存在している。娼館が存在していたりするし、どこの世界も同じようなもんだが学校を出ると自立して部屋を借りてるのが普通なので必要としている者が少ないために数は少ない。
中央地区で宿を取ると言って去って行った凸凹の夫婦を見送った後にタミーとアマザへ近々家族に挨拶をした方がいいのだろうかと聞くとアマザは別段急がないとのこと。タミーに至っては前夫との結婚でもめた際に没交渉となっているので下手に顔を出すと揉める原因になるかもとのこと。
しかしタミーは自分よりも早くに、学校卒業を待たずして結婚を決めた娘の相手に暴走した父親を目の当たりにして少し思うところがあったようだ。
以前は当事者として、今日は傍観者として早い結婚をする娘をもった親を見てのことだろう。
翌日は快晴でコーリンの両親も含め、マリアさんやアンジェ、ヴェガたちと一緒に全員で遊びに行くことになった。
場所は9地区の中ほどにある遊泳場。
年輪都市を中央地区以外を時計の文字盤のように12の方向で各地区を分けている。左半分に当たる7から11地区は主に農耕地域となっており、主食である小麦などのほかの野菜や果物を生産し他都市への交易物の重要品目となっている。二毛作や二期作も行っているが土を休める休耕時期の畑は臨時広場として利用されているほか、農耕地域への水路へ供給するために環状大路の横に大きな水路が設けられているのを利用して水辺の遊び場となる。
雨季の合間の晴れ間は蒸して暑いので利用希望者は多く、都市の水道課の水の異法士が水路の上流部で数人でいくつかの堰を担当して不純物の除去を行っている。
それによって水路の一部の区間を深めのプールとして暑い日中に行う娯楽のひとつなっている。ところが都市内の一般市民は全身で足に付かない水に浸かるいう状況はここでしかでないので泳げる市民は少ない。なので設けられた水中の階段状の足場で足を水に浸けたりして涼みつつ、足が付かないことが恐くないものは泳いだり、浮いたまま水路の流れに従って下流に流れたりしている。
水道課の水の異法士の他にも防衛課からの派遣がいるがこれは利用者の市民同士の喧嘩を仲裁するためとパニックで溺れたものに対するもので上空から襲うことがある巨鳥対策ではない。
大森林に近い最外地区での遊泳場では注意が必要だろうが都市中ほどに当たる地区なので空からの襲撃は皆無ではないが少ない。いざとなったら水の異法士が水流で応戦しているうちに身を隠すか最寄りの歪門に走ればいい。
よし行くか。
日本でいう野外プールに相当するところなので更衣室に相当する着替え目的の屋もあるのだが仲間内に水の異法士がいれば着替える必要はなく、水着として使える服を着て来ればいい。
年輪都市では女性の下着としてブラがない(一般的ではない)ことからビキニタイプの水着はなく、透けない程度の厚みの上下の服を水着として着衣して入る。
ビキニ水着に近いものはあっちの世界ではローマ時代にはあったようだし暑い気候のこちらでも存在してもよさそうだが大森林に囲まれた土地で川で水浴びしようにも巨獣がいるわ、虫やヒルなどもいるので露出が大きいものはないのだろう。
アマザの母親の出身都市の蒼海都市とやらでは裸に近い格好で海で過ごすと聞いたのでありそうだ。
そこからの移民がいるのに広まってないのは生地素材の問題か、こちらの都市では肌を露出して泳ぐことへの意識の問題かもしれない。異性に対する羞恥というより負傷に対する用心だろう。
では他の水着はというとワンピースの水着は作れないことはないだろうが水着が専門の用途として存在していない世界で普段の着る目的で作られていないのだから存在はしてないようだ。
女性はトップに関しては水に入った時にめくれ上がらないように腰部分を紐や服そのものを縛ることとノースリーブが普通となる。当然袖まであると水のせいで密着して不自由になるため。
ボトムはスカートだと水に濡れて不自由になるためパンツタイプとなっている。
つまり見た目には普段の暑さをしのぐの薄着の格好とそう変わらないわけだ。大体大路の横にあるんだから都市東部に比べて人が少ないといっても他人からまる見えだしな。
結局水の異法士がいるなら普段の服のまま水に入っても着替える必要もなく水を除去できるしそれで溺れても助けてもらえる。
年輪都市の男性って女性の水着姿が見られないとも言えるわけだからなんか寂しい。
俺たち男は精々普通の下着を重ねるかハーフパンツを穿くだけだ。
これが日本なら女子連中は水着を吟味して選んで身を隠してテレながら男性陣に披露なんて展開なんだろうけどあんまり潤いを感じない。
-*-
先に着替え終わったが男は俺とトウヨさんしかいないのでどうにもフレンドリーに会話を交わすには至らない。手持無沙汰なので更衣室の小屋よりも下にある遊泳場まで先に降りる。
その上流部では水が一旦区切られてその区間に源力を流して作業をしている水道課の職員の作業を見る。
3つに区間で3人がそれぞれ浄化を担当しているようだ。分離した不純物や浮遊物は一か所に固められているが当然より上流部にある区間ほど先に浄化されているので不純物が多く除けられている。
遊泳場の解放時間はそれほど長くはないがその間 交代しながら浄化を続けるのか。浄水と下水の管理のための人員は交代要員も含めて確保してあるだろうが雨季の洪水時に活動する人員は普段こうやって仕事を振り分けられているわけか。
水路を眺めながら水道課の仕事について考えていたので対岸から手を振る人物がいることに気がつくのが遅れた。だが水道課には知り合いはいないので自分ではなくて他の人に対してだと思ってノーリアクションでいたら声が聞こえた。
「カイルさん。無視しないで下さいよ!!」
ん?
対岸から声を掛けてきたのはキノコの情報をもたらしてくれたミイネだった。 相変わらず年の割に小さい。
「そういえば水道課に勤務してるって言ってたっけ。」
水を区分けしている仕切りの上を歩いてこっちやってきた。
「この前はありがとうございました。 今日はみなさんで骨休みですか?」
頭を勢いよく下げてから、またすぐ上げる。屋外作業のせいでなるべく涼しく過ごすように空気を取り入れやすいようにダブついた服を来てるので首周りから肌が見えそうで危ない。
その服の胸には大きな青いプレートが付けられているのが見える。
上級職員には制服があるがそれ以外の職員は保安課(裁判などの業務も含まれている)を除いて都市職員に制服はない。その代わりに課別に色分けされたプレートを着用している。
「骨休みではあるけどアマザ達に加えて部屋を借りてる下宿の連中とだな。だけど仕事中なのに話していていいのか?」
「少しならいいですよ? 絶対離れちゃだめならお花も摘みに行けませんしね。そのために3人が作業をしていますから。」
後ろを向いて他の二人に念話を送ったようで、その後こちらに顔を向ける。
「水道課って人口が多い地区の浄水作業をしてる話をよく聞くけどこっちでも活動してるんだな。」
「人の口に入るような上水の管理をしてるのはもっとベテランの人たちの担当で私みたいな新入りは浄水化に失敗しても影響が少ない農業地区とかここみたいなところで経験を積むことになってます。」
そこまで話したところで男くさーい筋骨隆々のアッシャーがニヤニヤと冷やかし顔で近づいて俺の肩に肘を乗せた上に体重を掛けてきた。
「おいおい、カイルは守備範囲広いなあ。 こんな幼い感じの子にまで声かけてんのか? 」
初対面の肉ダルマ細目に警戒感を出しながら後ずさるミイネ。
「確かにミイネは背は低いけど16歳だ。幼くはないぞ。
学生さんどころか研修期間も終えて水道課に正式職員として働いてるからアンジェやコーリンよりも年上なんだぞ?
さすがにアマザやお前よりも年下だけどな。」
「ウソだろ! これで?」
驚きの声を上げた後、アッシャーは視線をミイネに向けてある部分を凝視する。
するとアッシャーの視線の先に気付いたミイネは胸を腕で隠す。何の躊躇もなく目の前の女性の胸を凝視ってよくできるな。
「カイルさんの知り合いの方ですか? 初対面なのに失礼ですね。
私だって2年も経って同じ年になればアマザさんやタミーさんみたいになるはずです!。」
「申し訳ないが望み薄だと思うけどなあ……
あ、カイル。ぼちぼちみんな出てくるみたいだぜ。」
「そうか、あっちに戻るか。
ミイネ仕事中に邪魔をしたな。 機会があったらまた薬草について聞かせてくれよな。」
ミイネに手を振ってから下流に向かうが不機嫌そうにした彼女の様子をみると胸のことについては触れないままの方がいいだろう。
アッシャーと遊泳場へ歩き出すがその後ろでは初対面でいきなりコンプレックスを刺激された少女が仕返しをしようとしていた。
自分が源力で支配しながら浄水化している水を30モイト程度の水球にしてアッシャーに向けて放つ。
俺は頬を膨らませていたミイネの様子から何かするんじゃないかと思っていたので注意はしていたのだがアッシャーは水球を頭から落とされて遊泳場に入る前にびしょぬれになっていた。
しかしそのまま歩みを止めない。
「気付いてたんじゃないのか? 」
「そりゃ俺も水の異法士だからな。 だけど機嫌を損ねたのは俺が悪いからな。仕方ない。それにどうせこれから泳いで濡れるわけだから問題ないな。 あれくらいのモノを凝視した罰にはいいだろう。」
アッシャーと一緒に振り向くとミイネがこっちを向いて舌を出していた。
やっぱり16歳には見えないなあ。
-*-
「どうしたのカイル? なんかおかしい?」
着替えを終えて遊泳場へ降りてきたタミーは普段と違って強い日差しを避ける布を被っていない。大森林ではともかく街中の屋外でタミーが顔どころか肩から先の素肌や太ももを晒してるのはかなり新鮮だ。
以前に月明かりの下で全裸も拝見したけれど陽光の下って彼女の白さが際立つな。つい凝視してしまった。
「いや、やっぱり肌が白くて綺麗だなと。」
そういうとつばが広い麦わら帽子のようなもので顔を隠した。
「ほーん、タミーを褒めてる余裕があるんやったらウチらも褒めて欲しいなぁ」
隣にいるアマザとコーリンもジト目で見てくる。
二人とも俺の性的な嗜好が胸にあることを知ってるせいかトップ部分を上の方で括っているのでどうにも視線に困る。褒めるにしても「いいスタイルしてますね」などと言えばいいのか?
あっちならセクハラ扱いだな。
二人に上手い褒め方を考えつつ水を見ているとホーヅが妹たちを異法の水芸に取り込んで楽しませており、周りから羨ましがられている。
だが小さい幼児の妹弟を遊ばせてるんじゃなくて俺より背が高いみなさんなんだけどね。
「カイル、君は泳げるか?」
トウヨさんから声を掛けられてコーリンが立つところまで競うことになったのだが なんとトウヨさんは犬かき。
クロールで泳いで圧勝してしまった。
いや、しゃあないやん? 自信満々で挑んで来られたし。
術士の力も重複化も関係がない勝負だから普通にやったつもりだったけど水泳競技がない都市だから泳法なんてものが定まってない。
地元の獣人族のコミュニティーでは泳げるものが少ないので自信があったようなのだが犬かきではクロールには勝てない。
俺の泳ぎ方を見た水を怖がらない女性陣から他の泳ぎ方はないのかと言われてクロールの他、平泳ぎとバタフライの他、「のし」こと日本ののし泳ぎも披露して周りのギャラリーからも称賛された上に、泳げない(足が付かないことが恐い)タミーやアマザから指導を頼まれ、父と同じ犬かき程度しか出来ないコーリンも含めて水泳のコーチをすることとなった。
なんというか日本じゃ泳げない女性に指導するどころか女性と一緒にプールに行ったことがないのに。
両手を引いてバタ足の指導という小学校の水泳の授業を思い出しながらだったのだが息継ぎの度に上半身を上げることになる。そのためなんというか、ウェッティな彼女達の胸が物凄く眼福でした。
そんな中、ふと横を見るとまたもプライドを砕いてしまったようで水辺の階段で体育座りをしてる。
ごめんなさい。お義父さん。
「娘さんたちへの指導もいいけれど私にも教えてもらえるかしら?」
落ち込んだトウヨさんは放置してミモクさんが近づいてきた。
昨日はトウヨさんへの態度が年相応の圧力を感じたが改めて見ると彼女の身長は娘のコーリンより下、更にアンジェよりも低い。
ヴェガよりも高いが顔は同じくらいの幼さに見える。
確かに夫や娘と同じく白が基調となっている体毛はしているがこうも親子で違うものなのか。
しばらく手を引いてバタ足をしてもらっていたが顔を上げたままのバタ足で下流に向かって手を引いていたのでみんなから少し離れてしまった。
この機会を利用して気になっていたことを尋ねることにした。
ちょっと失礼だけれどコーリンほどの娘がいるほどの年齢に見えないので義理の母なのかと思っていたのだ。失礼ではあるがわからないままでおいておくこともできないので思い切って聞いてみる。
「あの、ずいぶんとお若く見えるんですけれどミモクさんってコーリンの実のお母さんなんですか?」
「そぉよ~~、さすがに20代で孫を抱くのは無理だったけれど、近々孫は抱けそうだけそうだから物心がついても綺麗なお婆ちゃんでいられそうね~。」
バタ足で少し息切れしながら答えてくれるが一体幾つの時にコーリン産んだだろう?
「いくらなんでも若く見えすぎような……」
「あら? 昨日トウヨと戦ったときにあの人、変身してなかった?」
「あの手足の変化ですか?」
変身というほどの変化ではなかったが体毛で覆われる変化をしていた。たぶん普段の状態から長さも変わっていたと思う。
「ぷはぁ、そうよ~。私たち一族の施術士は他人への強化術の付与以外に自分に作用させた場合は身体の一部獣化なんてことが起こるのよ。」
「はぁ。」
「でもね。 そんな中でも私は更に変わり種で、」
会話を続けながら彼女の全身に源力が動きまわるのを感じる。
すると何が起きているのか手を引くために触れている手の指の大きさが、いや、彼女全体が変化してる?
数分の後、彼女は俺の手に乗せていた手を離して水路の階段に向かい、足が付くと立ちあがる。
そこにいたのはコーリンよりも高く、アマザよりは低い170モイトくらいの女性だった。
それにさっきまでの低身長の慎ましやかな体と違ってアマザと同じようにメリハリがきいたプロポーションをしている、身長が伸びたせいで服もその分短くなっている。
彼女の濡れた肩の体毛から落ちる水の音を聞きながら呆然と見上げているとコーリンがやってきた。
「母さん、お昼だそうよ?」
「あらそう? 戻りましょうかカイルさん。」
母親の外見の変化になんの驚きも示さずにお昼ご飯に向かおうとするコーリンだがこっちはそうもいかない。
「ちょっと待って! どういうこと?」
「母さんがどうかしましたか?」
コーリンは俺が何を疑問に思っているのか分からないようで平然としている。
「どうしたも何もなんで変身してんの?!」
「そういえば説明の途中だったわね。 これが私の本来の姿なの。」
それを肯定するようにコーリンが説明を付け加える。
「父さんが源力で両手足が獣化するなら 母さんが施術を自らに掛けた場合は外見の若返りなのです。ですがあくまで外見だけの変化なので見た目は若がえっても体重はそのままなんですけれどね。」
「こらコーリン! 女性の体重については触れない!」
俺は自分の重複化という能力を持ってることを棚に上げて外見の若返りなんていうことが出来る人がいることに言葉を失っていた。
「それにしても母さん。施術士の説明のためならもうよろしいでしょう?いつもの姿に戻ってください。私の婚約者は豊満な胸の方に目がないそうですので。」
コーリンがそういうと体を戻して3人で歩きながら話を聞く。
若返り変身は施術によるものだが源力を使うのは可変時だけで体が落ちついたら源力を使う必要はないんだと。
一族の中でも今は彼女しか出来ないそうなのだが、周りからはそれほど奇異にみられず、女性からは羨ましがられているそうだ。
純血の獣人族が獣化なんていう若返るどころではない変化をするので驚くようなことでもないんだってさ。
それでいいのかこの世界。
-*-
お昼になってカイルの仲間たちも含めて集まってきた。
お弁当はウチの店を買ってくれたので嬉しい。それを赤髪亭から持って運んでくれたのはカイルだった。
そのカイルは今、コーリンとコーリンのお母さんと一緒に歩いて向かってくる。
昨日 朝の続きを教わりたかったので早めに学校から帰ってきた。
そこでは営業前の店の中でカイルを含めて時折来る常連になった狩人をやってる人たちとコーリン、そしてコーリンの父母がいた。
入りにくい雰囲気だったので外から窺っていたのだがカイルはコーリンと来年の学校の卒業を待って結婚するらしい。
それどころじゃない。
カイルの知り合いだと思っていた狩人は実はカイルが所属する狩人メンバーでその中の女性二人とも一緒に結婚する。らしい。
ついこの間まで世間にヒネてたアイツの尻を私が叩いていたのに……
一般人のくせに狩人になって羽振りがよくなったのかどうか知らないけどいきなり3人もの女と結婚なんて何を考えてるんだろう?
あいつにそんな甲斐性があるんだろうか? それもコーリンはカイルにいい印象を持ってなかったはずなのに!
イライラとする自分の気持ちが分からず、御せないのか表情に出ていたのだろうか?
母さんが何かいいたげにこちらを見ていた。
あ、ミイネを出すはずだったのに……
どっちみち後で追記します。なんとか一ケ月に10回の更新はしたかったんで
追記
ミイネをちょっとだけ顔出し
アッシャーがミイネに同じ水の異法士として仕返しをさせるつもりだったけど初対面で水鉄砲(水圧砲)で喧嘩するのもなんなのでやめました




