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あっちとこっち  作者: rurihari
2 生活
40/142

2-15 休日8 それぞれの休日 2

 ホーヅはのんびり家族と女と過ごしていたか。あの口ぶりだとまだ女友達って感じだろうが無粋な真似はやめとこう。これがニミヤやカイルなら茶化して遊ぶんだがホーヅに対してはどうもそれができないんだよな。あれが人徳というものか。

 どうせアマザとタミーはカイルと会ってるんだろうし、寂しい俺はニミヤとでも飯を食うか。さすがに休みだからってあの年の許婚ちゃんとイチャイチャはしてないだろうしな。


さて、ニミヤに念話っと


-*-


俺は今日も修練を積んでいる。場所は注目を浴びないように異法修練場ではなくて都市の外門を出た緩衝地帯でやっている。 門の近くには都市防衛課の門番がいるので少し離れてから外壁沿いでの訓練だ。

この場所なら仮に緩衝地帯に出てきた巨獣が襲ってきても壁に足をかけてジャンプして体を風の異法で持ち上げれば外壁を飛び越えて都市内に逃げられる。あとから外門の通過記帳に門を通らずに都市内に帰ったことを報告しないといけないのが面倒だけどな。


昨日は休みの初日でじっくりと休憩を取った。アッシャーなどは個人の源力総量を増やしたいようだったからこの休みの間も修練を続けているのだろう。源力総量が伸びるのは個人差はあるがほとんどは二十歳くらいまでと言われているので今年19歳の俺はいつ伸びるのが止まっても不思議じゃない。だからカイルの源力補充装具での1日複数回の源力枯渇はありがたい。

たまに源力総量が中年になっても伸び続けるような者もいるらしいがその頃には源力があったところで体力が無くなってるので狩人でなく防衛課に転職してるそうだ。

カイルがずっと俺たちのパーティーにいるのなら源力総量を上げなくても源力補充装具を複数作ってもらって装備しておけばいいのだが、地力を伸ばしておくのは必要だろう。


昨日は異法に対して完全休養だっただけで親父やシシナからの連絡もあったしな。


「お前達がゾウを撃退したことは聞いている。一級巨獣を倒せなくても退けるほどの力があることには驚いたが力の安売りはするな。」


と抜かしてきた。これまで親父からの念話を拒否していたが昨日は休みってことで久々に念話を受けてみたが一方的に言われたのがこれだ。自分の手柄にする根回しが済むまでは動くなってことだろうが! 

それに結局アマザとパーティーを組んでることについては知っているとは思うが何も言ってこなかったな。カコから俺と会ったことは伝わってるようだが、一々俺に会わせないでシシナと許婚にしておけばいいものを・・・ 年も近いし同じ学校の上級生と下級生、会ってる回数も俺よりも多いしシシナだって妹っぽいとはいえ憎からず思っているだろうに。


余計な雑念はここまでだ。意識を集中させて周りの空気の支配に取り掛かる。

風の異法士は名の通り空気を源力で支配し動かすことで風を操る。カイルはその風を使って人を持ち上げ、上空からの視点を得る使い方を提案してきた。よく分からんがヘリコプターってものの逆の原理らしい。アマザやタミーに作ってもらった風受けの円盤に乗り、下の広い面積から円盤の底に常に風を当てることで持ち上げる。 これはかなり難しかった。まずは円盤を持ち上げる時に下から出なく横からの風で持ち上げないといけないためにかなりの力が必要になること、常に円盤の下に山状で風を上に集めるためにかなり強く、そして持続しての異法の支配が必要であること。持ち上げた円盤がひっくり返らないように前後左右の傾きを調整しないといけないこと。

 今はその不安定ぶりも改善されて慣れてきたがカイルは更に別の使い方を提案してきた。 カイルは風を使って真空状態を作れないかと提案してきたが残念ながらいくら風を強く支配して風力を増したところでそんなことは不可能だった。カイルは「そういやカマイタチって日本でしか起きてなくて竜巻みたいな強風でも真空を作り出すなんてありえないんだっけ」なんて洩らしていたが俺には意味がわからなかった。

 その後にカイルが提案してきたのは風を起こすのではなく、全く逆のことだった。それは空気をその場に留める、固定化するということだった。 これが空気を支配して風として操るのとはかなり勝手が違う。俺は異法である以上は自分で支配した空気を知覚できるが、周りから見ると何の異法も行使していないのに空間に睨みをきかしたり、手を伸ばしたり、気合の声を上げてることになる。それが原因で異法修練場では奇異に見られてできない理由だ。慣れないせいか源力の消費も多いので無駄にならないように制御に進歩を見出さないと・・・。


 思い通りにいかない空気固定作業に流れた汗を拭って気持ちを落ち着かせる。水筒でも持ってくるべきだったかな。昼も近づいてきて額当てにプールされたカイルの源力も尽きてきた。それにしても汗をかくと額当てを外したくなるし次はもう少し考えて装具を作ってもらわないとな。昼飯時ではあるし切り上げることにするか。巨獣が緩衝地帯までやってきて襲ってくることもなく無事に今日の修練は終えることができた。疲れは感じるがその分昼飯はうまく食えるだろうと北大門を通って装具を預けに詰め所に向かう。するとカコから念話がきた。


『ニミヤさん。シシナさんからお聞きしましたが昨日からお仕事はお休みだそうですが会えませんか?』


ついこの間あったばかりなのに珍しいと思いつつ、あとで中央地区で会うことを約束してから銭湯に向かう。

普通は1日1回の入浴がこの都市の習慣だ。実入りがいい狩人でも夕方まで粘るなら大森林から帰ったときに一回だけだろう。だが俺達は普段昼過ぎに大森林から帰ってくることもあってその時と夜の二回銭湯を利用するのが最近の習慣となっている。温めの湯に使っているとまた念話がきた。


『休み中すまないなニミヤ。午前に異法の修練をして暇になったんだが昼飯でもどうだ?』

『ふ~~~~~、俺もついさっきまで異法の修練をしていたところで今は風呂に浸かってる。一足違いでこれから人に会う約束ができたもんでパスだ。』

『なんだよ、ホーヅに続いてお前もかよ? 連れねーな。 しかたねぇが装具の源力が尽きたなら夕方か夜にでもカイルのとこにいって補充してもらわないか?』

『そうだな。どうせ明日も休みとはいえ修練はするだろうからな。また手が空いたら念話を送る。』


念話を切ってまたリラックスする。湯船に浸かりながら「空気を固定」する使い方についてカイルが言っていたことを思い返していた。


「空気の固定は鼻や口だけの周りだけにしても首を振ったら重さがない空気は固定したまま飛ばされる。だけど首から先を丸ごと覆うことができれば振り払うことができないから人の暗殺もできる。しかも証拠が残らない窒息だ。心術士が心を読まない限り発覚しないだろう。それほどの空気の固定化がニミヤにできるのかはわからないが悪用しないことを信じてるぜ。

それは今 修練中のアッシャーの「水糸」も同じだけどな。

巨獣の顎は当然人間よりも強靭だから首を丸ごと空気で固定してもそれを外してしまうだろうから巨獣を窒息させるのが用途じゃないんだ。空を飛ぶ巨鳥に対して空気の固定や固定まで行かなくても粘性を持たせることで揚力を奪って落とすことができると思う。狩れる巨獣の種類は多いほうがいいだろうからね。」

 

 巨鳥に関しては襲ってきたところを返り討ちにするのが通常の狩り方で、確かに風の異法士が強風を起こして飛んでいる巨鳥にぶつけることはあったが体勢を崩す程度だった。空高くにいる巨鳥を巻き込むほどとの強力な旋風を起こすことが難しいということと、起こせてもさっさと遠ざかってしまうので異法の無駄遣いになるだけなのだ。以前に修練場で襲ってきたヒトクイワシを仕留めたように囮を使って降りてきたところを土の異法でおもりをつけるか羽の自由を奪うかが一番簡単な狩り方だ。

それを「揚力を奪う」か・・・

奴らが飛んでいるところまで源力を操作するのがどれほどのことなのかアイツはわかってるんだろうか? 期待に添えるかはわからないがこれは巨鳥に対してだけでなく、小型の巨獣なら風の異法だけで狩れる可能性をもっている。狩りにおいては索敵が主だった風の異法士の幅が広がるということだから俺はできるところまでやってみたい。


さて、温めの風呂で涼しくなったし、中央へカコに会いに行くとするか。



-*-

 

ちぇっ! ホーヅもニミヤも休みを満喫中か。修練以外で何か趣味でも持ったほうがいいのかね? 1人寂しく飯を食いに行くか。


そう決めた俺は中央地区へ向かうことにする。主に都市の東半分に居住地が存在してるので飲食店なども一番多いのは都市東側の人口が多いところだ。あとは都市の最外地区の外門周辺と都市拡張される前に最外地区として商店や施設があったところ。しかし最も料理の材料の幅が多いのは中央地区で当たり前だが全地区から狩人が獲物を持って帰って来る中央買取場があるためだ。源力も使い切って昼から修練はできず、適当に軽めの食事を取ろうと新しく新規開拓をするつもりだった。


なのに・・・


「あん時はあんたたちのおかげで助かったよ!!」

いかめしい男達に捕まってる。どうしてこうなった?


新しい食事処を探して中央地区を歩いていたが、中央地区の修練場近くなら当然食事処もあるだろうと足を運んでみたらそこで出会ったのは北大門でゾウ撃退時にいた都市の防衛課の0番地区の面々。中央演習場で他地区の防衛課との演習に来ていたそうで北大門でのゾウ撃退の時に同じ外壁上で見ていたことから俺の顔も覚えていたらしい。 カイルが撃退依頼を受けなかったら死を覚悟してゾウに挑まなければいかなかったため、俺たちが撃退したことには感謝していたそうだ。

「とはいえ!アレを作るために飛んだ汁で皮膚は痛いし、目もしみて痛かったしえらい目にあったしなぁ! 今日は俺たちに付き合って飲んでもらうぜぇ~!」

 

 といきなり両方の肩から腕を回されて目の前の店に連行。演習終わりでまだ風呂に入ってない装備をつけた男達に連れられるまま店内に入り、肉!肉!酒!肉!果実酒!の連続攻撃。俺も大柄で筋肉も多いが防衛課ってこともあって俺みたいなゴツイやつらばかりだ。ピッチャーになみなみと注がれた果実酒を前にして仕方なく一気飲み!

 ホーヅやカイルは楽しく女と会ってるのに(カイルに関してはたぶんタミーやアマザと会っているだろうという予想でしかないが) 俺は男共と昼から酒盛りかよ! 浴びるように飲んでやる!



-*-

食事処の近くには食材を扱う店もあることが多い。冷蔵技術がないために仕入れるにも近いところからの方がいいためだ。 

 そんな店の中でも香辛料を扱う店から出てきたタミーは視界の端に連行されて行くアッシャーを捕らえたが特に関心を示すことはなく、自宅の8番地区を目指して歩を進めていた。


昨日はアマザと一緒にカイルの仕事を手伝ったが まさかあれだけの仕事であれほどの収入が得られるとは思ってなかった。カードに表示されたピプの額に呆然としてしまった。 そう、娼館で身を売ってまで稼いだのがバカらしくて笑えるほどに・とはいえ、大金が入ったからといって過去が変えられるわけじゃない。


色ボケといわれたくはないが休みの間にカイルに対してアプローチはしておきたいところだ。胃袋を掴めとはいうが 思えばカイルの食の好みは知らない。色の好みは彼の視線からなんとなくわかるが・

そういえば昨日のお昼に三人で食べた食事もおいしいとの感想が出たアマザや私と違ってカイルは何も言わなかった。 食の嗜好が変わってるのだろうか? そう思って味が極端になるスパイスを使った料理を作って彼に感想を聞こうと思いたちスパイスを求めて中央にやってきた。当然料理に疎かった私には使い方もわからないので初歩的なスパイスと簡単な料理方法のレシピを教えてもらって店を出てきたところだ。


片手で香辛料が入った瓶を詰めた籠を持っているが片方の手には幅5モイト、長さ20モイトほどの金属が握られている。しかしその長さと形はじっと見ていなければわからないほどにゆっくりと形を変えている。

タミーがやっているのは日常での異法修練だ。異法を高出力で使った修練は狩場でも行っているが休みの日でも行うのにどんなものがいいかとカイルに相談したのがこれだ。


狩場での岩の表層の変形に慣れてきて、最近は他の修練として土を硬質化で一瞬で金属なみに硬化させるというものを行っている。硬化そのものは大きなものを硬化するほど源力を消費するがそのスピードを早くすることでも源力の消費が高くなる。 その形もいずれは役に立つかもと尖った針が四方に出たもの、マキビシだった。人でなく巨獣用なのでその分大きいものだ。タミーもこの形で地面に撒くと言われたらその用途に予想は付くが一つしか作らないんじゃ意味がないのでは?といったところ、これは訓練で早く硬く、作ることで源力の消費を促してるだけで実際に使うなら時間がかかってもいいので数を用意するつもりということだった。それに普段からこの形を作って訓練しておくことでマキビシの形状に慣れておくという意味もあるらしい。そういえばニミヤの額当てとして使っている源力補充装具がただの長方形なのにうまく作れなかったものね・・・

 金属並に硬化したら人が踏んだら靴底を突き抜けて刺さるだろうが恒久硬化でなく、一時硬化として作ったものなので解除すれば土に戻るので使い勝手がいいだろうと考えているようだ。とはいえこれは都市を襲ってきた巨獣侵攻時に緩衝地帯で使うつもりとのこと。大森林内で巻いたところで土が沈み込んだら意味を成さない、ただでさえ巨獣は蹄などが金属で硬くなってることが多いのだから。

 農耕地区である8番地区に住んでいるため、普段の日で午後から手が空いてる時は近くの畑の土で訓練していたが外出時や夜は今のように金属を手にして源力をなじませて形状を変える訓練をして源力を消費している。岩よりもこういった単一金属で構成されたもの方が変形が楽なのはやってみて分かった。それでも土を操り壁を作るよりもはるかに集中力も変化をさせるために最初に込める源力も多いので修練場で土を操るよりも日常生活内でに行う訓練として効率がいい。

 昨日、水晶岩を回収する仕事をする前に指輪にプールされた源力は確認したが一杯にプールされた状態から今日の午前の自主鍛錬で後一回のチャージで尽きるだろう。そろそろ源力の個人総量が上がってきたせいで指輪から源力をチャージできる回数は4回分と少しに減ってきている。休みの間も自主鍛錬で個人総量を伸ばしたいならカイルにチャージしてもらう必要があるだろう。できればこのスパイスを使ってお弁当でも手渡したいけれど・・・まだわたしの腕じゃ無理か。 そういえばカイルがどこに住んでるかは都市東の3番地区としか知らない。彼の部屋が分かれば、料理に自信ができてから押しかけてみるのもいい。そういえば彼の手帳のメモからすると女を知らないそうだから、わたしを受けいれてくれるなら何時ぞやの続きを彼の部屋でする手もある。焦る必要はないけれど買取課の女性たちからのアプローチも続いてるみたいだしね。水晶岩の買取額からすると彼はかなりのお金を持ってるってことは推測できるけど彼はそれでも態度は以前と変わってない。たぶん私が女を教えたところでそれに溺れるようなことはないだろう。できればアマザとも「仲良く」して欲しいけれど、あの子は酒で勢いつけないとダメかな。

たぶんアマザも自主鍛錬はしてるだろうから一緒にカイルに指輪への源力補給をしてもらいに行かないか念話を送ってみようか?



カコからニミヤに念話が来たのはニミヤのカードの複製(子カード)をカコがもっているからです

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