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あっちとこっち  作者: rurihari
2 生活
36/142

2-11 休日4 回収

 「待ってましたよカイルさん。早速なんですが今日は原石か水晶石はお持ちいただけるんでしょうか?」


 中央買取課で通された一室で待っていたサンタシにいきなり持ち込みについて聞かれたがまずはこれだ。


「それはこれからで先にこれです。確か養蓄課からの依頼でしたっけ?オオアシの卵の捜索に関しての意見書です。卵に関しては以前にウチのリーダーが渡してるので報告書だけです。」

 

と後ろに控えたアマザとタミーを見るとうなずいている。

 サンタシは先に切望してる石関連の依頼ではなかったのでかなり残念そうな顔をしたが「先に」って言ったでしょうに。


「ああ、そうですね。お預かりして渡しておきます。」


「それと原石ですが量があるので売りにくるのは構わないのですがこちらの職員さんに軟禁されるのはちょっと・・・ 」


「わかりました!カイルさんとはカード念話の設定をしておりますのでご都合のよい日をお知らせください。私が応対するように努めますので!それで水晶石については?」


「今日 これから後ろの二人に協力してもらって回収しに行きます。ですが確か依頼ではなるべく傷がない方がいいとのことでしたので引き手さんには引きずってもらわずに歪門を通します。引いているうちに段差で割れて中身が傷つく恐れもあるんで。」

 

 そういうとようやく交易課からの突き上げが無くなると安堵したのかサンタシに笑顔が戻る。


「わかりました。それでは歪門を開く前に念話でご連絡ください。荷車を持って買取課の受付広場で待っておりますので。」


と揉み手をしそうな勢いだ。


「それでは行って来ます。」


軽い礼をしてタミーとアマザを伴って外に出る。次は歪門を通って0番地区最外縁 北大門へ向かう。


「買取課の職員でもあの上の人にうたんは始めてやな。しかもなんかえらい下手に出とったし。 カイルって知らん間に更に有名になっとるん?」


「そうよね なんというか最初に顔見たときにやっと来てくれたって感じが見て取れたわ。 何かやったの?」


歩きながら二人と話すが受付主任で普段は窓口奥に控えてるサンタシが直接出迎えたことに驚いているようだ・


「それは二人も知ってるじゃないか。買取課に行くと応対中以外の女性職員に囲まれるんだよ。で買取に困るから男性職員を相手に売買応対をお願いできないか?って頼んで出てきたのがあの主任。まあ石関連は他に持ち込む人がいないからその判断をするために上の人が応対する必要があると思うし、それに今のところ俺以外に持ち込んでるやつがいないから需要に対して供給が滞ってるからな。たぶん欲しい奴らから突っつかれてるんだろうな。」


とはいえ俺の仕事は狩人パーティーのポーターだから「それ」をメインにするつもりは今はないし。


「求められている間はちやほやされるってことやね。」


「そ、「求められてる間」はね。 その間は買取価格も高くなるだろうし「求められなくなる」までに稼いでおきたいね。」


雑談をしながら北大門前まで来て装備を確認、二人の指輪はまだ輝きがあったが一応・・・


「アマザ右手を出して」


「うん」


アマザは手袋を外してタオルで拭ってから右手を差し出す。右手の指にはめられた輝虫の指輪に源力を流すが問題なし。


「うん。前の狩りの終わりにチャージしたまま源力残量は問題ないな。タミーのも。」


「ええ」


次に既に手袋を外していたタミーの左手を両手で包み指輪に源力を流してみるがプールされることはなく、こちらも問題ないようだ。相変わらず白くて細い、でも人並みかそれ以上に筋力があるそうなんだよなあ。


「タミーのも目一杯源力はプールされてるから大丈夫だな。じゃ行こうか。」


人通り少な目の昼過ぎの北大門だが男が神妙な顔で二人の女性の手を取っていたので奇異に移ったようで人目を引いてしまったが仕方がない。今日は巨獣を狩るのが目的でないとはいえ少人数で大森林に入るのだから用心に越したことはない。


 俺達は北大門を出て少し大森林の縁を東に向かって歩いてから大森林に入る。今の捜索地域は各々の異法の威力が上がったことと源力補充装具のおかげで以前の500メイトから1000メイトほど奥まで進めているが岩場が存在してるのは500から750メイトあたりの地帯に東西に帯状に点在している。年輪都市の外周が円状なので東西へ行くほど大森林を遠くに進むことになるため、今回は一番東の岩場に向かい、以後徐々に西へ向かって回収していくつもりでいる。それが0番地区での狩りの活動期間中に終えられるかどうかは分からないが全部の岩場で水晶石が見つかってるわけでもないので大部分の回収で問題ないだろう。


 すると入って20メイトほど進んだところで声が聞こえた。


「誰か! 助けて~~~!!」


声は一人だけ、しかも女性で若そうだ。

振り向くとタミーもアマザも戦闘態勢だがすぐに助けに向かうって感じではない。


『向かわないのか?』


『カイル、それは早計やで? そもそも襲ってるのが3級みたいにウチらの手に負える巨獣とは限らへんねんで?』


『そうよカイル ニミヤならこういう時にいうでしょうけど命の危険がある大森林に入る以上は自己責任が当たり前よ? だからこそ大森林に出て得られるものは値が付くし、狩人の稼ぎは都市内よりもいいの。 助けてもいいけれどまずは私たちに手に負えるモノかどうかを見てからよ。』


『そりゃそうか・・・』


『そ、助けに入ったら襲われていたやつだけがさっさと逃げて自分達が食われるなんてこともあるんやで? まずは冷静に状況を見なあかんで。』


俺達は念話をしつつ 声が聞こえた方向へゆっくりと向かう。

声が聞こえたところから80メイトほど東に進んだ辺りだろうか 背を崖の壁にしてうずくまり、4頭ほどの巨獣に囲まれてるやつがいる。


『ジバシリ・・・だよな』


『ジバシリね』


ジバシリは70-80モイトほどの大きさだがそれで3級巨獣に名を連ねているのは集団で人間を襲うことがあるからなのだが それでも狩人に取っては最初に狩るであろう入門種みたいなもんだ。実際にボコられているのは初めて見た。


『助ける前に周りの確認しておきたいな。アレだけ大きな声を出して他の巨獣は近づいて来てないかな?』


『カイルに教えてもらった索敵をやってみるわ。』


そういってタミーは手を地面につけて目を閉じる。


 俺が教えた索敵方法とは地面の振動を知覚して巨獣の有無を知ることだ。ニミヤがいれば風と匂い、今は高所からの視認で索敵できる。

だがニミヤが負傷を追った場合に索敵が出来ないのは不利なので水や地の異法でも索敵できるようにアドバイスをした。

アマザとタミーに関しては自分を中心にほんの0.1モイト以下でいいので土に源力を流すこと。しかも土を操るほどの支配をする必要はなく、単にその土が動いたかどうかさえ分かればいい程度で。 それによって巨獣が歩く振動が分かれば索敵が出来る。

さすがに風の異法ほど広い索敵はできないし、薄く支配するにしても時間は掛かる。だがこういったアップダウンがある北の地区では索敵できないといきなり目の前に巨獣がでてくることもありえる。 ただ上からやってくる巨鳥にはこの地の異法での索敵法は効果がない。


『大丈夫 この辺りにはいないわ。』


『じゃ 助けるとしましょうかね?』


『ウチらも手伝ったほうがええ?』


『4頭だけだし、こいつで首をへし折って終わりだからいいよ。それよりも索敵を頼むよ。』


そういってジバシリに囲まれている人物へ向かう。

歩く音に気付いてジバシリがこちらを向く。攻撃的な性格をしてるがさすがに大きさが80モイトほど、もっと数がいないと脅威にはならない。 走ってきた2頭のジバシリを如意棍を伸長させて足を薙いでへし折る。ギャーギャーと横になったまま煩いが無視してまだ助けを求めた人物を金属を取り込んだ堅いくちばしで突いている残り2頭のジバシリの首を如意棍でそれぞれ他愛無くへし折る。


助けを求めていた女性はまだ若い。涙を流して目をつぶって腕で頭を覆っている。突っつかれていたのがどれくらいの時間かは分からないがレザーメイルとは呼べないような革製品の軽装で覆われていないところは出血と痣が多数浮かんでいた。


「うっ、ひっ、んぐっ・・ひぐっ、」


泣いてるのか、助けを求めて絶望していたのかジバシリがいなくなった事に気付いていない?


「あのさ、あんまり叫んでると声に気付いた巨獣が更に集まってくることもあるんだけどわかってる?」


俺がそういうと腕をゆっくりと下げて見上げてきた。


「助かったんですか?・・・」


「あくまで偶然でね。 一人で大森林に入ってその軽装じゃ更にジバシリが増えてたらさすがに殺されてたかもな」


「ううっ・・・ ありがとう、ございます。・・・」


そういって後は涙を流している。こっちとしてはいい加減話を進めたいんだが。


「カイル、はよ行かんと遅なるで? こっちの用件もトラブルが出るとも限らんしなるべく早めに済まさんと。」


足を折った二頭のジバシリの首を折って止めを刺したアマザが声を掛けてくる。


「そうだな、見たところ俺達よりも若いみたいだし狩人に成り立てか?一人で帰れる?」


「ダメです!怖いんです。お願いですから一緒に連れて行ってください!!」


余程恐怖したのかすがり付いて懇願してくる。


「「はぁ・・・」」


ため息をつくアマザとタミー。 こういった光景を見たことがあるんだろうか? 俺としちゃどっちでもいいが岩場で水晶石が取れることを知られるのは好ましくない。


「じゃあさ、これから俺達は仕事に向かうんだが、そこでの俺達の作業は「君は何も見てない」ってことにするなら同行しても構わない。だけど命を救って上げた恩人のいうことが聞けずこのことを口に出したら・・・」


「わかりました!これから何が起きても見ても誰にもいいません!ですから都市まで連れて行ってください。お願いします!!」


そういって何度も頭を下げてくる。薄いオレンジのサイドアップテールが突かれてぼさぼさになって汚れたまま揺れている。


「いや別に喋ったらあのジバシリみたいに殺す!なんて言うつもりもないけどな。恐慌状態から開放されてまだ安定してないみたいだから、まずは大きく息を吸って深呼吸を続けてな。」


俺はそういって彼女を落ち着かせて折角なので4頭のジバシリを背負子にくくりつける。その間に彼女も落ち着くだろうし、一応背負ってきておいてよかった。



 彼女はミイネと名乗り、事情を聞くと狩人ではなく都市の水道管理課に水の異法士として研修期間を経て正式に採用になったそうだ。 落ち着いても狩人の流儀である爪を見せての挨拶をしなかったものそのせいか。 150モイトあるなしくらいの小さな彼女の身長からしてみれば70-80モイトのジバシリに囲まれるのはかなりの恐怖だったと思うがなんとか落ち着いてきて冷静に話ができるようになってきた。


今日は休みで同じ学校の卒業生で異法士となった仲間で小遣い稼ぎとして大森林の縁から取れるような薬草を集めていたとのこと。高い授業料となったもうこれで無茶をすることは無くなるだろう。


『そうなんです。高価な薬草や原料は狩人の人が持ち帰るけれど、買取が安い薬草は大森林の縁に生えてることもあって狩人が持ち帰ることは少ないんです。でも需要はあるから持ち帰ると買い取りはしてくれるんでお小遣い稼ぎにどうかと友人に誘われてみんなで摘んでたんですけど・・・』


『ジバシリに遭遇してパニック、みんなは都市に逃げたけど自分だけ追われるままに大森林へ、か』


『すみません・・・』


『まあ追っかけて来たんがジバシリやったからええけど、もしウシやったら自分ら角で跳ね上げられて死んどったかもやで? 小遣い稼ぎもええけどせめて実戦をこなした足止め役の異法士は付けとかんとホンマに死ぬで? 外壁修理の作業時ですら回りに異法士を配置してやっとるくらいやのに』


『はい・・・』


『今回は運がよかったってことで反省すればいいさ、それより急ごうぜまだ東へ500以上あるだろ?』


『それくらいかしら。ミイネは大丈夫?』


『はい。置いていかれるくらいなら必死で歩きます。』


『もう仲間への念話は終わってる?』


『はい、向こうも私を置いていったことでパニックになってたみたいですけど連絡がついて落ち着いてました。』


そんな話をしながら目的の岩場に向かうが都市での仕事についているミイネには大森林の中でも起伏にとんだこのあたりを歩くのはつらそうだ。

だが歩くのに手を貸せるわけもない、せめて岩場について休んだら治してやるくらいか・


思ったよりも時間が掛かったが目的であるこれまで狩場とした岩場で最も東の場所に到着。


『カイル、持ち帰るのはどれ?』


『確か岩場の下で半分が土に埋もれていたやつだ』


そう言って俺は岩場のでっぱりから下に降り、目的の岩を見つける。


『んー、タミーこれを周りの土を支配して持ち上げることは出来る?』


『かなり重そうだけどできるわね。予想以上に埋まってる部分が大きくない限りは。』


『じゃここはタミーにお願いして アマザは周囲の索敵を頼む。』


『『了解』』


タミーが異法を伸ばして土の索敵、タミーが土を支配して埋まっている水晶石を持ち上げている中、俺はミイネを呼ぶ。


『ミイネはこっちへ来て岩場に座ってくれ。』


『はい。』


慣れない大森林の環境と移動ですっかり疲れてるようで素直に応じる。


『じゃこれから突かれたところを治す。これもミイネは「何も見てない」ってことにしてくれ』


俺はそういってまず彼女の顔に両手を当てて額や頬などの傷口と内出血を一気に直す。源力を使わせるために与えるのは俺の源力は大きすぎるので装具などが必要だが、医術士としての技術は源力を与えるのでなく「流す」ことなので彼女に治療に必要以上に源力がたまることはないので問題はない。 髪に隠れて見えてなかったが頭部も突かれていたようなのでそれらも治癒、続いて手袋をしていたが皮製品ではなかったためか負傷していた手、頭部を守っていた両腕、蹲って立てていた脛など突かれた患部を治していく。


『ええっ!?医術士なんですか? それでもこんなに早く傷口がふさがるなんて・・・』


『ノーコメント。君は何も見てないってことにしてくれ。』


治療が終わって立ち上がるとタミーがこっちを凝視していた。


『終わった?』


『ええ、あなたが彼女をまさぐってる間に』


『弄るって・・・ひどい言いがかりだ・・・』


土から出てきた水晶石は一番長いところで1.5メイトほどあるかなりの大きさでやはり重複化した俺がもてるかは怪しい、いや中に水晶があるなら見た目よりは軽いから背負えるだろうが背負子が折れてしまうだろう。やはりやってもらうか。


『アマザ、土の異法の修練で土壁で巨獣を挟みこんで持ち上げる特訓したろ? それをここでやって欲しい。ただ今回は持ち上げて固定でなくて持ち上げて運ぶんだけどね。』


『つまり岩を上に乗せたままで支配した土を動かすっちゅうこと?』


『そう、この重さを乗せたままだからかなり源力を消費するだろうけど頼むよ。』


『まあ、いけるやろ。 それに何十メイトでもなくて今から指輪を使こうて歪門通るだけやろ?精々10メイトくらいの移動やから問題ないわ』


そういって岩の下の土の支配に取り掛かる。


『じゃ、ミイネは仲間に中央買取課から都市に戻るって伝えておいてくれ』


『ここから都市中央に繋がるんですか? 指輪リングって便利ですねぇ』



『わっかりました!今からすぐに台車を持って買取課の広場で待機します』


俺もサンタシ氏に念話で連絡を入れ、アマザは土の支配を終えて水晶石を土で移動させることを試した後、指輪リングで歪門を開いた。






ミイネ 加古郡稲美町をもじって


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