2-7 妹?
「驚かせてごめんなさい お母さんみたいに言ってみたかったんです。なんか皆さんがすごく驚かれたみたいで反省してます。」
登場するなり俺達の度肝を抜いたお子さんは今はニミヤの隣に座っている。
金髪碧眼、パンタロンのように袖口が大きく広がったピンクのシャツとスカート姿。たぶん袖口が広いのは空気を入れやすくして蒸れを防ぐためだろう。ピンクの色のせいで幼く見えるが喋るとそうでもない。
「ニミヤお兄ちゃん、こちらにいてもお邪魔にはなりませんか?」
「ああ、大丈夫だ。だが狩人の会話は念話で行ってるから退屈になるかもしれんがいいのか? カコ」
「構いません。家でも大人の方たちのお話にはいつも蚊帳の外ですから。」
そう言ったカコに気を使ったのかアッシャーが問いかける。
「ええっと・・ お嬢ちゃんはいくつなのかな?」
「今年学校に通い始めました。誕生日がきたら11歳になります。」
さっきお子さんと呼んだのは見た目が幼く見えたからだが11歳か。
この都市では4年の義務教育を経て卒業すれば大人と看做されることと早婚を推進するために就職も日本よりも早い。だから体はともかく精神は子供というのは失礼かもしれない。あと4年も・・・でなくあとたった4年で一人前ともいえるので日本でいうなら将来を考え始める14歳とかの難しい時期に当たるのだろう。
だがなぁ・・・
「とはいってもニミヤお兄ちゃんとはお父さん同士が決めた結婚相手ですからいずれはそうなるんでけどすね♪」
だ、そうで。無邪気な感じだ。物心がつかない幼女が「お父さんのお嫁さんになる」なんて言ってるなら微笑ましくもあるんだが今年11歳という年齢でこう言ってる姿はなんとなく異常な感じを受けるというか・・・
ニミヤが19才だから今年就学のこのカコって子は11歳だから8歳差。20歳と28歳、25歳と33歳、そう考えるとそれほどおかしくないのだが11歳と19歳となると途端にアヤしさ爆発。しかもさっきのニミヤの念話で「親父絡み~」と言ってたのがこの子のことなら政治闘争とか派閥の強化とかで血縁を結ぶってことなら別の方向で怪しさ爆発だ。
家を出たってニミヤは言ってたが家を出ることは黙認しても結婚することで自分の役に立てってことか? ニミヤの親父も相当だな。
「あの・・・この方達がお兄ちゃんのパーティーの方でしょうか?」
「そうだ、紹介しておこう。俺が一番年上だがほぼ年齢は同じようなもんででな。上下関係のない気楽な若手パーティーってところだ。右から細目のやつがアッシャー、デカイのがホーヅ、女性だがリーダーのアマザ、カイル、そして黒髪で肌が白いのがタミーだ。」
「みなさんよろしくお願いします。カコと申します。中央地区に住んで学校も中央地区に通ってるのでお兄ちゃんとはあまり会えないんですがニミヤお兄ちゃんの弟のシシナさんと会うことが多いんで時々聞いているんです。」
なんというか、物怖じしない?そりゃ俺達全員二十歳前だけど6人の大人を前にして11歳の子供がここまでしっかり喋るってはやっぱり都市の上級職のお子さんってことで大人と接する機会が多い?のか慣れてるのかな。
「それでこの一ヶ月でパーティーがガラッと変わったって。人は入れ替わったわけじゃないけどその、お金がたくさん入るようになったり、狩りの仕方が変わって面白くなったって聞いたんで何か変わったことがあったのかと思って久しぶりに会いに来て見たんです。」
「ほうほう、夫の変化を感じて様子を見に来た幼な妻。泣かせるねぇ」
ギロっ!
軽口を叩いたアッシャーにニミヤは睨むがあの細目には見えてないのか堪えてない。視線をアッシャーから戻し、
「それはさっき紹介した両手に花のあの男が原因さ。なかなか面白いやつで俺達の活動もコイツがパーティーに入って変わった。」
そう言って俺を見ると釣られてカコって子も俺を見る。
「ん?俺? さっきも紹介されたがカイルっていう、カイル・キニダック。俺の方も狩りで外に出るようになって生活に張りが出たからお互い様だけどな。」
「ふぅん・・・ キニダックさんですか? やっぱり変わってるだけあって他の都市のご出身?なんですね 姓を名乗っておられますし」
「家族がね。俺が生まれ育ったのはこの都市だけど。」
この子ホントに11歳なのかな? 探るような目をしてるんだけど・そりゃ子供から単に好奇心が高いってこともあるけど。
『で?ニミヤ、これはどういうことやねん?』
パーティー内でも女性メンバーのアマザとタミーの視線は厳しい。
匂いフェチとスカートたくし上げ恥じらい顔の観賞で評価を下げているのに年端もいかない少女が妻を名乗って登場だ。もう彼女らのニミヤに対する評価は風の異法士としての評価があったところで地に落ちてるのかもしれない。
『親父の仕事関連でな、親交を深めるためにお互いの子供を合わせてみては?ってことで会ったらいきなり許婚って紹介されたんだよ。』
アマザのキツめの念話に堪えるニミヤ。
『例えそうでも、こんな小さな子に将来の夫って紹介するなんて・・・』
カコの将来が親の意向で決められていることに同情的なタミー。
『いや、それが・・・ 俺達が初めて会ったのは俺がまだ学校に通ってた頃で14才のときだったからカコは6歳くらいだったぞ。』
幼女を許婚と紹介されたのか・・・ カコって子もかわいそうだがニミヤも戸惑っただろうな。
『それでさすがに周りが将来のお嫁さんなんていっても、よく分からないようだったからな。ほとぼりが冷めるまではと単純に知り合いのお兄ちゃんって感じで接してきたんだが、どうやら先方はそのまま進めるつもりのようでな。 この年になってもいまだに将来は俺の嫁さんになるって吹き込んでるらしい。』
うわぁ、引くわ・・・。
『ニミヤとしてはどうなんだ? 8歳も違うんだし出会った時かせめて今のうちに関係をスパッと切った方が後々面倒にならないんではないか?』
ホーヅは我関せずと食事を取っており、俺やアッシャーがパーティー念話でニミヤと会話する。
『そりゃそうなんだがな。許嫁関係が気に食わないからといっても14歳の初対面時にいきなり子供に君は嫌い、あるいは会いたくないなんて言えるか? なんだその鬼畜は。 そう思って兄として接してるうちにずるずる今も交流は続いてるわけだ。』
果物の盛り合わせを頼んで彼女の前に置くニミヤ、嬉しそうに半分に切られて柑橘系の果物を手にとって皮を剥いているカコを見ている。
『ドライかと思ったら意外に優しいな。』
『おいおい、俺がドライなんて外からの印象だろ?俺はこれでも優しいほうだぜ?』
ホントかね? ひょっとして匂いフェチ拗らせてロリコンってパターンじゃなくて、逆に「YESロリータ、NOタッチ」を拗らせて匂いフェチになったんじゃないだろうな?
ありえる・ 許婚云々があったとして手を出せない子供に萌えてしまったとしたら?
危険だ、危なすぎる紳士だぜニミヤ。
とまあ、冗談はさておき。
『で、真面目な話だが彼女は11歳にしてはしっかりしてるというか「しすぎ」って感じがするんだよな。周りが大人ばかりなのに普通にしてるし、一人で酒場なんぞに入ってくるし。』
茶化すのはやめて真面目な会話に変える。
『彼女の父親は都市の上級職でな、家に同じ都市の運営に関わる上級職の同僚が来ることが多いから大人には慣れてるだろう。そいつらからしたら俺達なんぞ大人でなくて兄ちゃん姉ちゃんって感じだろうしな。』
『ふーん・・・ 一応聞いておくがカコちゃんに姉はいるのか?』
『ああ、姉、兄、彼女の三人姉弟って聞いてるな。』
『ちなみに姉も許婚が決まっていたり? 』
『いや? 実際に会ったこともあるが確かに同じ上級職の子供と顔を合わせることはあるようだが特に結婚云々って話は聞いていないな。』
『ニミヤ、これって年が近い姉を宛がったらお互い自我もしっかり持ってるし、ニミヤが話せばはっきりと縁談を断ることも十分ありえるだろう。それで幼くてお前が無下に接することが出来ないこと見越して、且つカコちゃんには子供の頃からの刷り込みをやってんじゃないの?先方は結構マジじゃないのか?』
『どうだろうな?確かにそうかもしれんが刷り込んだところで彼女はこれから大人になっていくだろう。いずれ自分の考えを持って相手を選ぶと思うんだがな。 まあ俺みたいに家を出て家との繋がり薄くなったやつより、別の都市職員の有力者に宛がわれることになるかも知れないが。』
『ふん! 気にくわん話やな~』
『あたしもモノみたいに扱われてるのにはね・・・』
アマザとタミーは不快を表す。
『上級職ってのはコネで慣れるもんじゃなくて実績を積み上げることでしかなれないからな。だから自分の子供とかに自分の地位を継がせることはできない。だがそこまでいくと権勢欲とか顕示欲が旺盛な連中が多いのさ。自分の意見を通してその成果を実績とするために同じ意見の仲間を増やす。そのために血縁も結ぶって感じらしいぜ。一応は本人同士を合わせた上でってことだけどな。』
『さっきの彼女によると「たまには会って来い」といわれてきたっていってたな。それに上級職員である親が求めるのは実績か・・・。 俺達がこの前にゾウさんを撃退したのが耳に入ったんじゃないのか? つまり1級を撃退した狩人は自分の身内であること、次に一級巨獣の襲撃があったら自分が頼めば撃退が可能っていう実績を作るためのつなぎかもな。』
『実に嫌な意見だがおそらくはそれが正鵠を射てるだろうな。ゾウの撃退がなかったとしても遅かれ早かれ「引き手」からあだ名を付けられるってことは狩人の中でも注目されるから同じことになっていたかもしれん。』
そういいながら柑橘系果物の次にブドウのような果実を食べているカコを肘をついて見ているニミヤ。お前それ兄ってよりお父さんだろ?
『で、お前自身は彼女をどうするつもりなんだ? 美味しく実ってから収穫か?』
アッシャーに聞かれたニミヤだが収穫といわれてちょっと不機嫌そうだ。
『俺の状況と彼女次第だろ。 彼女が大人と看做されるには学校を卒業してもはやり2年の研修期間を終えてから。つまりあと6年近くもある。俺は狩人だから結婚は一般よりも遅めとはいってもさすがに25までには所帯を持っておきたいしな。』
なるほど、避けてるわけでもないがやはり年齢差は影響するか。
そう思ってカコちゃんが実際に兄以上の感情を持ったにしても望み薄かな?って思ってみるとこちらを見ていた。しかもこっちが見ても視線を外さない。ずっと視線を合わせるのもなんなのでこちらから目礼して視線をずらした。できれば年長者らしくにっこり笑顔でも見せて視線を外したかったんだけどなんか真面目にこっちを見てたからできなかった。
そういやさっき名乗ったら「カイルさん」じゃなく「キニダックさん」って言ってたな。 上級職に上り詰めるほどのやり手の父親なのでひょっとすると色々と仕込まれている可能性もある。見た目ほど子供じゃないか? ちょっと警戒したほうがいいかもな。なんせ都市上層職の娘さんだけあって色々な情報を得てそうだし。
ニミヤに対するカコについての追求は程ほどにして7人でのテーブルは次第に和やかになっていった。
俺は帰り際、彼女に磨いていない原石をお土産に渡し、これを更に価値あるものにするには職人さんの手を借りる必要があると説明しておいた。
正直目立つことはしたくはないのだが、上級職ってのがどれほどの情報を得られるのか分からないがおそらくはこの出回り始めた原石のことも知ってるいるだろう。周りにはまだ明かされていないが持ち込んでいるのか俺であることも知ってる可能性が高い。
それなら敢えてコレを渡して磨けば更に価値が出るものでそっちの技術者を育成することに興味を持ってもらえればって思いがあった。
なんせこれが他の都市からも需要が出たらその実績は推進したものに入るのだから。
カコ ニミヤの許婚 加古川市からもじって




