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あっちとこっち  作者: rurihari
2 生活
27/142

2-3 カイルの仕事

 俺は新しい場所に移ってから異法士たち全員の異法使用時の心理的なリミッターを解くことにした。


 これまでの異法の使用法や常識から源力を残すように、いわば「小出し」に源力を使いようになっていたことで威力の大きい異法を使うために「一度に大量の」源力を使うことに心理的な制限が掛かっているように思えたからだ。

その場で源力の全快が可能なのだから、なんなら一回の異法で全部の源力を使い果たすほどの大きな威力で行使してもいいはずなのに先月までの様子ではおそらくはできないだろう。

大声を出せるのに出したことがなくて戸惑ってるようなものだ。


なのでまずは狩りのついでに源力の無駄遣いではあってもなるべく「消費させる」使い方をしてもらい、大量の源力を使えばどういうことができるのかを実感してもらった。異法士でもない俺にはあくまで理論からの源力大量消費修練だったがうまくいっている。


大量に消費して威力の強い異法を使うおかげで狩りは短い時間で済んでいるし、それによって源力枯渇を起こすことで個人の源力総量も伸びてる。

おかげで修練の時間が狩りの時間と同化しており狩りはほぼ午前で終わる。

俺はポーターとして獲物をくくり付けるためのロープを背負子にかけて背負ってるだけのなんとも情けない役柄となってしまったが源力補充係として許してもらおう。


そしてメンバーへの異法の指導以外にこの現場では主に鉱石、いや宝石を拾っている。

現在の年輪都市では宝石はそれほど価値あるものとされていないがじいさんのいた神聖都市では華美装飾品が存在していて輝虫だってそれの原料に使われていたのだから宝石だって需要があるはずだ。

問題はあちらの都市やそれら以外でも取れるものなら価値がないのでは?ということだったのだがそれは杞憂に終わった。


大森林の中でも岩場が多いこの北の地域ではその辺に落ちてるのである。ただそれなりに大きいものしか目に付かないのと当然ながら何もカットされていないので狩人からすると食肉でも素材でもないただのキレイな石でしかないために注目されていなかったようだ。


で俺はこれらをいくつか持ち帰り、日本あっちで図書館などで知識を集めてから買取課に赴き、これをどうやって磨くかを教えて、実際にいくつかを加工したものをサンプルとして見せた上で買取希望を出した。


当初は売れるかどうか買取課の連中も訝しんでいたが輝虫の買取希望を出している連中にこういうものがあると見せれば食いつくといったところ その通りだったようで同じようなものあるいは別の色があればもっと欲しいと返答があったそうだ。


それ以外にアクセサリーへの応用なども一緒に伝えておいたので 研磨や加工などの雇用も望めるかもと課の連中にも好評だった。


そしてパワーストーンの店で陳列してあるような アメジストが内部にびっしり生えたものを半分に割ったものを見たことがあるがその外側の質感に良く似た感じの岩があったので持ち帰ってみた。正直50cmほどのものがこれほど重いとは・やはり石って重い。 久々に背負子で背負ったのは巨獣じゃなくて岩だった。


キレイに割ったほうがいいと思って時間をかけてアッシャーに水流剣を使って削りながら開けてもらったところ、やはりアメジストだった。

後日 これより小さいものを入手して割ったら日本あっちでは存在していないような様々な色の結晶が集った水晶が生えていた。


インテリア程度にしかならないか?あるいはアメジストの結晶をばらしてアクセサリーにでも?ってことで買取に出したらとんでもない高額で買い上げられた。俺が宝石を拾って市場に流していたため金持ちの好事家の間でちょっとした話題になっていたことと別都市への交易のために市場に流さずに確保してるものもあるため余計に品薄になってることも関係しているらしい。


正直、拾い物で新しい食べ物やバニラビーンズみたいな香辛料での買取を狙っていたのだがこの北方面では宝石を狙う方がいいようだ。


狩り兼修練の間に無理をしない程度に集め、なお且つ日本に意識があるときは鉱石関連の知識も集めておく。


同時に狩り兼異法特訓は午前で確実に終わらせるようにしており、昼ごはんを中央買取場の近くで取ってから解散している。


俺は他にも買取「されていない」素材が何かないかを探すために資料室に足を運んだり、診察が終わったオウノじいさんの下で工術を習ったりで充実している。


おかげでこっちの日々の満足感が日本での生活にも影響し勉学にも生活にもかなりよい影響が出ている。


ところで工術を習っているのはじいさんが行った俺の源力を留めるための方法と源力がはいるおよび装備者に向かって供給される道を作る方法がメインだ。つまりこっちの珪藻土もどきを使った源力プール装具を自分だけでも作れるようにするのが目的。それでアッシャーたちは複数の装具を作れば源力の個人総量があがっても対応できると思っている

 ただアマザとタミーについてはできればもう一度指輪かイヤリングとしてアクセサリータイプを作ってあげたいと思っており、再度輝虫を捕まえようと思っている。


なのでその時は加工を頼むとじいさんにいったところ、

「そんな簡単に輝虫が取れるわけがないじゃろう。あれは偶然によるところが大きいと聞くぞ?」

とのこと・

「いや、発生木を知ってるし。またそれに産卵目的で寄って来てるやつもいるだろうから取れないってことはないと思うけど。」


というと目を丸くしていた。その上、

「発生?したのを掴まえたら小さくて素材にならんじゃないか」

と言ってきた。


なんというか大森林での生物は食用のもの以外は調べようとしてなかったのか、あるいはその余裕がなかったのか?


おそらく輝虫は完全変態の生活サイクルを送ってると説明すると更に目を丸くされた。


その金属成分をまとった外骨格から大森林の植物を食べているとは思われていたようだが、あの状態で卵なりから生まれて大きくなると思っていたらしい。まあ実生活に関係ない上に死ぬ危険がある場所なんだから虫の一生なんて誰も調べようとしないわな。


おかげで俺はあの場所を独占できるが問題はそううまく産卵に来たものを捕まえられるかと羽脱してくる新成虫を捕まえられるかだ。もし一年を通じて発生してるんならいつ行ってもチャンスはあるということになるが・・さて?


新しい狩場でも既に2週を終え、雨にたたられることが無かったのと休みを取らずに連続で狩りにでていることから更新条件の2ヶ月で規定買取額以上の日が21日以上というのも14日を超えた。


北大門周りの大森林を狩場として地形を知るために毎日違う場所で狩っているがタミーやアマザに岩への源力の馴染ませ方と土の異法としての支配を訓練してもらいたいので開けた岩場ばかりを狩りの誘い場にしていた。

そのため宝石原石を毎回拾って帰っていた為、いくつかの「お気に入り」以外は全部買取課に個人で持ち込んでいた。ちなみにメンバーもやらないかと誘ったが十分な稼ぎが出てることとどれも「同じ石に見える」とのことでまったく拾う気はないようだ。

 最初こそ有用性とかどういうものかを説明しなければ興味を持ってもらえなかったが最近はすぐに買い取ってくれる。 今のところこれらはそういうものがあると報告は上げているが狩人の既得権益を守るためにどこで誰が取っているかなどは伏せられている。

そのため持ち込んでいるのが俺1人ということもあり、需要への供給窓口となってる買取課の面々は俺が訪れるのを待っているようなのだ。

 そのため別室に案内されて歓待のような歓迎をされるのだが、なんというかこう・・・職員さんの目がコワイ。明らかに狙われているのである。


最初はてっきり買い取りに持ってきた原石を直接欲しいと言ってくるのだと思っていたのだがどうやら違ってるもよう。

 座って待っていると同級生くらいの10代の女性職員から20代半ばのお姉さん職員まで何故か俺がいる個室にみ・ん・な・い・る・のである。

 その視線が怖いこと。


家族はいます? 年はいくつ? 次の休みは?


という質問が矢継ぎ早に来るにいたってブツでなく俺が目的なんだと気付いた。女性にもてるのは嬉しいけれど清清しいほどの金目当てが透けて見えているのでここは遠慮したい。

ところがげに恐ろしきは女の執念

個室の出口を二人の女性が固めている。


俺の脳裏に日本あっちの町で声をかけてきて契約するまで離してくれない辣腕のキャッチセールスの存在が思い浮かんだ。

休みに会う約束を取り付けるまで、あるいは念話するためにカードを合わせるまで部屋から出さない気だ。そう考えた俺はアマザに念話でSOSを送り助けてもらうこととなった。


次からは狩りのすぐ後に買取課に行くのでなく、時間をずらすかある程度まとめての数を男性職員がいる時に窓口に行くことにした。アレは捕食者の目だったと述懐する。


なんというか金そのものでなく、拾い物が金になるという行為を楽しんでいたらあっという間に一財産になってしまっていた。

ところが別に使う目的もないのでしばらくは多忙な毎日を送りつつ楽しんで過ごすつもりだ。


なおそろそろ北からヤバそうなのが降りてくるかも知れないと聞いた。



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