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あっちとこっち  作者: rurihari
2 生活
26/142

2-2 新しい狩り-2

 すでにこの北大門の周りを新しい狩場にして一週間以上が過ぎている。

本来は不猟の時以外は7日に一度は休むのがわたしたちのパーティーの取り決めだったが巨獣狩りと異法の練習に身が入ってしまい、休まぬままとなっている。


 新しい狩場に入る前のミーティングで岩場があるので土の異法士には不利という説明があったが初日からわざわざその場所を探して狩場とした。

 てっきり待ち伏せの前に足止めの土を支配して持っていくと思っていたら


「土を持っていっても地面の岩と土を同化出来ない限りは単なる土のおもりにしかならない。 たとえ支配に時間が掛かってもこの岩場を支配して欲しい。」


とカイルは言ってきた。

確かに土の壁を作る場合は地面の上にでたところだけを固めるのではなくて地下の土も固めている。当たり前だがそうしないと手で押せば倒れるだけになるからだ。

 

 それにしても岩を支配してくれとは・・・ とても無理じゃないかと伝えたところ


「岩全体じゃない。表面5モイトから10モイト程度の表層部だけ、つまり変形させるのもその深さだけでいい。ただ支配するのに時間がかかるだろうからニミヤが誘ってくる前に既に支配を終えていて欲しい。」


とのことだった。

時間は掛かったが巨獣が来るまでに支配は出来た。しかし普通土の支配で足止めするなら15-20モイト程度は足を埋めて固める。

こんな浅くていいのかと思ったら


「確かに岩の変形に時間は掛かるが超硬質化が掛かったものを変形させていると思えばいい。一度巨獣の足を捕らえたら硬質化をする必要はないだろ?


とはカイルの言。

それはそうだけど予想以上に源力を消費する。しかし一度に大量に消費すれば強力に作用するのが異法なので訓練していくと源力消費量増加の代わりに岩ですら滑らかに動くようになっていく。

 ただでさえ他のメンバーよりも源力総量が少ない私は何度も源力が尽きることと充足を繰り返し、7日が過ぎる頃にはこれまでと比べ信じられないくらい総量があがっていたわけだが消費する源力量も比べ物にならないのであまり総量が増えたことに実感がもてなかったりした。


 そしてわたしとアマザは「女の日」は狩りには参加しないことにした。発端はカイルのメモだったわけだが7月に入ってのメンバーの異法の力押しの威力を目の当たりにしたことと、カイルから「調子が悪いのに出る必要はないだろう?」とデリカシーは感じないが女性の体調の悪さを気遣った発言に甘えることにした。勿論狩りに参加しない日はその日の分け前は入ってこないわけだが1日に3級巨獣を3頭も買い取りに出すペースのため問題はない。

 それに家の支払いも先月のハガネイノシシとモトスに持っていかれたオスの買取額の半分も入ったこともあって終わってしまった。カイルに言ったとおり売りに出すつもりではあったのだが・・・ 

 

彼との間になら子供が産める。


それを知ってから迷っている。

はっきり言ってカイルとの間に子供が欲しい。もちろん結婚した上でだ。

前の夫に出会ってから結婚を決めた時よりも更に短い時間だがおかしいとも思わない。 こちらが惚れたせいでもあるんだろうけどカイルがそれを受けてくれると嬉しい。


何よりこの前のカイルのメモで「次に機会があれば~」とあったので、これまでにあったようなシチュエーションが再度訪れれば彼は抱いてくれるだろう。

 できれば次の時は邪魔が入らないようにこの家で、と思っているのだが考えていることがある。

 彼は昼ごはんはお弁当を詰めて貰っているらしい。食堂をしているところに部屋を借りているそうだから自炊というわけではないんでしょうね。

 わたしは家庭に入るつもりだったから当初こそ練習していたけれど一ヶ月も経たずに先立たれた上にその後も官営娼婦としての生活に心身が疲れていたため自炊はしていなかった。

 なんとかここで彼と「そう」なる時には手前の料理をご馳走したいので腕を磨こうと思っている。 この前にジバシリの卵を持ち帰って料理をしてみてその思いを強くした。



-*-


ウチがリーダーやってる意味があるんだろうか? そう思えるくらいカイルは異法士でないのに異法の訓練に指示を出している。

 ただカイルが口を出すのはあくまで異法の修練に関してのみでそれ以外はリーダーのウチに従ってくれる。


他のみんなにも色々な異法の修練を課してるカイルだけどウチにはこれまでとあまり変わらない土の壁についてだった。ところがその使い方がこれまでと違うのだ。


突進を防ぐ盾でなく動きを封じる盾とせよ!ということだ


つまり硬質化をしない土くれの壁を作成し、巨獣に突っ込ませる。その直後に壁を硬質化、さらに土を足して厚くして持ち上げる。

 土壁で巨獣の前足と後ろ足の間辺りの重心部分をはめ込んで壁を高くして足が付かないくらい持ち上げるということだ。地面で足を固定するのでなく壁で体を固定するわけだ。

 数百カイロもある巨獣を持ち上げて固定するのだから支配した土に使う源力は単なる防御の土壁の時よりも格段に多く、源力が尽きるのと充足の繰り返す。結果これまでと比べようもないほど源力総量の増加は日を追うごとに増していく。


 それほど充実してる新しい狩場での狩人活動だが返って自由時間は増えている。朝から出かけて午前の狩りは変わらないが今は狩りの後に修練場で行っていた異法の修練はそのまま狩りとその現場で行っており、夜に行っていたミーティングも指輪リングで帰り道を開く前に行っている。このところの異法の使い方でのことが多いので他人がいる酒場では話しにくい内容なのだ。

そして情報集めについては指輪リングを使って中央買取場に帰ってくるのでホーヅが狩場全体の情報をその場で集めている。

 ただ北大門近隣に限った旬の情報も必要なので数日に一回程度だけ全員で飲み会を兼ねて0番詰め所近くの酒場に集まっている。

 

 指輪リング貸し出し条件の規定買取額の下限21日を超えた後として考えている一般市場の買取額も同じ中央買取課に来ている市井の買取業者に聞けばいいので楽だ。


おかげで家に帰って妹や母と過ごす時間も取れるようになった。今までと比べて暇そうな様子に心配していたがカード情報を表示させて仕事の儲けを見せると驚いていた。

 そして家族だからか同じ女だからなのか気になる男がいることはあっさりと見破られていた。まあ普段料理をしない私がジバシリの卵を持って帰って人にご馳走する料理を尋ねたのだからバレバレだったのだろう。そのカイルとゆっくり会えていないことが目下の悩みではある。


 新しい狩場に移ってからの1日は朝から集合、午前の間に狩りが終わり、その日の異法についての意見交換を終え、カイルがそれぞれの装具へ源力をプールした後、私はカイルから貰った輝虫のリングとは別の手に嵌めた指輪リングを使う。

 リング使用者の前に現れた黒い四角の影、これを通れば中央買取場に繋がっている。空間操作異法者の角付きの歪門作成能力を限定で作用するように工術士が細工されている。

 歪門が開くとカイルが背負子にくくりつけているロープを獲物の複数個所にくくりつけ、メンバー達がそれらを持って歪門をくぐる。その後、買取課に雇われている人夫がロープを引っ張って獲物を引っ張り歪門を通っていく。指輪リングを持つウチが歪門をくぐると消えてしまうためウチがくぐるのは最後だ。他のメンバーも大出力での異法で威力は上がっているがやはりカイルの力には信用があるのかウチと一緒に最後にいるのは大概はカイルだ。


今月に入ってからほぼ1日3頭のペースで買取に出しているがさすがに全地区から有望、有力、そして様々な形態のパーティーが集まるところだけあって3級を3頭程度では目立たなかった。

 その成果がたった5人の異法士のパーティーでしかも午前の半日だけのものと知って接触してくるものもいた。 指輪があるならそれだけの装備でポーターなどいらないだろうと、ポーターがいるなら異法士の自分がポーターを兼ねるから代わりにパーティーに入れないか?と。

しかし勘違いもいいところだ。カイルがいなければウチらのパーティーはこの成果が上げられない。その内容を教えるわけにもいかないのでやんわりと断っている。

 口さがないものはカイルをウチの情夫だから役に立たないがメンバーにいれているというものがいた。ところがそのうちに前にいた10番地区のことを知ったのか接触してこないようになっていった。おそらくモトスのことを調べたのだろう。


利に敏い狩人の中にはウチらに注目するものも出てくる。確かに狩りの成果とウチらのキャリア、年齢からすると不釣合いなほどよい成果を上げているがここは中央買取課だ。2級の巨獣を狩ってくる連中だっているし、大人数でかなりの数を狩ってくる大所帯パーティーだっているのだ。全体としてはやはり単なる若手という認識が主なようだ。


 むしろ2週間を経過して買取課の職員に有名になっていたのはカイルだ。

6月のうちにどういった素材が買い取りに出されているかを確認してたためだろうか?推察と理論、私見を交えて有用性を説いて素材の買取を持ち込む。

カイルはやはり普通の狩人と発想が異なるようで買取課からも嘆息されている。

 特に大きな黒色の石を背負ってきたと思ったら、割って内部にある紫水晶の鉱石がびっしりと内側に密集してるのを見せたりと、なんであんなものがあるとわかってるのか不思議だ。

 その買取額や発想から若い買取課の職員から有望視されているようで特に女性職員からはほぼ全員から色目を使われているようだ。まあ職員ゆえにカイルが持ち込んだものの買取額を知ってるのだから当たり前だろう。

 カイルはウチらで売約済み、牽制として一睨みしておいたが効果はなかった。向こうだって若くて稼ぎがいい男なら誰だって捕まえたいだろう。男がいい女を競って争うように、女だって好条件の男をそう簡単にあきらめるはずもない。


そのカイルはこのところ多忙だ。


ウチらは時間的な余裕が以前よりできた。しかし効率よく順調に全員の源力総量が上がってることでいずれはカイルの源力がプールされた装具による充足回数も5回から減っていくだろう。そのためいずれは新しい装具か追加の装具が必要になって来るはずと師匠のところに工術のさわりを習っているそうだ。 その上、相変わらず中央買取場併設の資料室にもいるようで知識を集めている。


ウチらの異法が源力残量無視の使用によりパワーが上がってるのはいいがハガネイノシシの時みたいなカイルの前衛の活躍が少なくなっている。カイルのカッコいいところが見られないのはちょっと惜しいとは思う。えへへ・・

 

 こっちから好きって伝えたのにこの前に元気づけでキスして貰ったことは嬉しかった。言葉じゃなかったけどウチへの好意を感じられたし。


カイルとのことについてはタミーの希望を知って焦りを感じてる部分もある。焦る必要もないと理屈ではわかってるがもう18才だ。普通なら学校を14で卒業したら自由恋愛期間とも言われている自由研修期間の二年、16歳までの間に「女」になっておくものだ。

同級生の中では今も男を漁りまくっている(食いまくってる)連中もいると聞く。それは悪いことじゃない。早婚を推奨している都市だし技術職でないなら20才までに結婚することも多いし、パートナーを選ぶのも好いた惚れたのキレイごとじゃない。相手の将来性もそうだし、体の相性だってれっきとした判断材料のひとつだからだ。


 しかしすでに18才にしてまだ未経験の自分。カイルも「そう」だということはこの前のメモで知ったのだが・・・

今の状況からはそう思えないがカイルは年下だ。せめて年上としてリードしてあげたいというか余裕を持ちたいというのがある。幸いカイルの視線からウチの胸にはご執心のようなので嬉しいのだが、だからナニをどうしてあげたらいいのか経験がないウチにはわからない。


それにウチは自分の大きな胸は好きじゃなかった。狩人パーティーで揉め事になったのは少なからずコレにも原因があると思うし、何より胸当てなどで固定してない場合は揺れて痛い、それに暑くて蒸れる! 妊娠してからだけ大きくなったらいいのに。


そういえばカイルとの会話で「おっぱい星人」だからなんて言ってたが星人ってなんだろう?

まあ おっぱい好きってことなんだろう。

男ってそんなもんだとも思う。変な趣味とか嗜好よりはよほど納得できるし。


その・・・カイルの子供の頃の環境からすると女性に母性を求めてるのでは?と思う。放任されていたとはいえ一緒に住んでいて「暮らしていくのに~」でなく「生きていくのに~」と言っていたことから実母から愛情を受けることがなかっただろうことは想像がつく。だから女性に求めるものが母性として、その象徴として大きな胸という嗜好なのではないだろうか?


まあウチがなりたいのはカイルのおかんじゃなくカイルの恋人なんだけど。




-*-


ワシはこの中央買取場で雇われている人夫だ。


狩人たちのように巨獣を狩ることはできないが指輪リングを通じて歪門が結ばれ、ロープで結ばれた獲物を引っ張ってこちらに持ってくるのが仕事だ。


中には横柄な態度の狩人もいるがワシらがいなければ例え歪門で大森林と繋がれても自分達でロープを引っ張って獲物を動かさねばならない。


ワシはこの仕事に誇りをもっている。


最近変わった若手パーティーの綱を引く。

その年齢もそうだがパーティーの構成が変わらないことだ。

若手のパーティーは多い。だが経験を積むために離散集合を繰り返す。特に若いうちは楽して稼ごうと思う輩も多いのか、碌に力をつけてないのに獲物の獲得率が高いパーティーへ入りたがるのだ。


このパーティーはほぼ構成が変わらない。たまに誰かが休んでいる程度というところなのだろう。まるで実力をつけた中堅以上の固定パーティーのようだ。


それは帰ってきたときの様子からも分かる。


指輪リング持ちはその日の獲物のあるなしに関わらず帰りは安全を優先して歪門で帰ってくる。なので指輪リング持ちがこの中央買取場に歪門でかえってこないことはその日は狩りに出ていないと思っていい。


彼らは中央買取場に歪門で帰ってくる時は必ず獲物を仕留めて帰ってきている。つまり猟に出たら確実に獲物を捕らえているのだ。これはたった6人の狩人パーティーではまれと言える。防具などは傷ついてくることもなく、怪我を負って帰ってくることもない。彼らにはまだまだ余裕があるのではないだろうか?


ワシら「引き手」は先達が確保した楽しみがある。

狩人たちの「名付け」である。

ワシらでつけた特徴的な狩人パーティーのあだ名のようなものだがいつの間にやら狩人の間で一端の狩人の証となっているようだ。


中には無礼な名前もあるのだがそれを理由にワシらに無体を行うものは「引かない」ことにしており、それは先人たちにより雇い主の中央買取課にも承諾してもらってる。


いずれ彼らにも名づけたいと思っている。




アマザは心の声ってことで人称以外は方言なし


急げアマザ、駆けろタミー さむなくばカイルの童○はパックンされるぞ!

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