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あっちとこっち  作者: rurihari
2 生活
25/142

2-1 新しい狩り

 7月に入って俺たちは北大門を拠点に活動を開始している。

0、3、6、9番出口は東西南北に辺りそれぞれ他よりも外に出る門が大きく作られており、0番出口は通常、北大門と呼ばれている。

門が大きいということはその分だけ人の通りも多いということで外に出る狩人も多いため付随する施設も他の出口よりも大きなものが多い。

だがこの北大門は新人狩人の利用が少ないためか見た目は行き交う狩人が少ない。

それもそのはず新人が少ないということは指輪リングを持たないものが少ないということなので大森林から帰って来る狩人はみな指輪で作成された一方通行の臨時歪門を通り中央買取課に戻ってくるためだ。


そのため門近くの狩人の施設は小さな規模になるはずなのだが0番地区は都市西部の農耕地区と東部の巨獣地区との境になる場所のため、都市内での人の行き来が多く、銭湯や食事処などの施設の利用者は多いために栄えている。誰だって農作業を終えて汗と土にまみれたまま家に帰りたくはない。


 ところでこの新しい狩場に移ってから俺たちはより多くの源力を消費して如何に異法の威力を上げるかに取り組んでいる。

この俺、ニミヤは風の異法士だ。

一般には攻撃には参加しない役柄で風を用いて敵、あるいは狩る目的の巨獣の索敵、もしくは風に匂いを乗せて巨獣を引き寄せる役目を負っている。


風の異法は他の異法士に比べて空気を支配するのだがどうやら異法は支配する物体の質量が関係しているのか土や水の異法士に比べて支配できる範囲が広い。

 だからこその索敵能力だと思うがヤツ、カイルは折角源力が減ってもいいのだからもっと別の、「もっと消費する」使い方を提案してきた。

なんというか馬鹿げた内容だと思っていたのだが よくよく聞くと風の異法士としては他と一線を画す使い方だし折角源力がプールされた装備もあるのだし乗ってみた。 

 俺に限らず他のメンバーに対する異法の使い方もそうだが普通は如何にして源力の消費を抑えるかを工夫するように考えるものだ。例えば土の壁を作るなら全体を強化せずにX印の骨組みだけを硬化するなど熟練者は異法の使い方は繊細になるが消費は抑えるようになる。尽きれば命に関わるのだから当然だが俺たちは揃ってその正反対の方法で強くなろうとしてるわけだからこれからどう変わっていくのか見当が付かない。源力を「なるべく大量に使う技」なんて普通は却下される技だから考える方向性がまるで違うのだから。


つくづくあいつは変わってる。


人並み外れた怪力、自らを臆病と言いながら異法なしに巨獣に対応し異法士を前にして臆せず戦う胆力、異法の使い方の発想、一般人でありながら医術士と同じ能力を持ち、且つ自分の源力を他人に使わせることが出来る。

ポーターとして応募してきたのをアマザが拾ったのは全くの偶然らしいが、おそらく「まともな」狩人パーティーならどこに拾われていても重宝した存在になっていただろう。


ただ気に食わないこともある。アマザとのことだ。

初日の飲み会からやたらとアマザに懐かれていた。今まで色々あって男は苦手だと思っていたアマザにだ。

それにモトスの件からは 周りから見てもはっきりとカイルに好意を向けているし、カイルも拒むつもりはないようだ。 まぁ正直モトスの件は俺も胸のすく思いではあった。

 ホーヅの傷を治療したり、悩んでいたアッシャーに声をかけたりと単に女にだけ優しいわけではないようだがアマザとの仲を認めるべきなんだろうか? 俺が認める認めないで口を出すのはおかしいとは思っているのだが正直釈然としない。


 それにしても女性のナニの時の匂いの件についてはアマザとタミーの追求をかわすのは苦労した。正直に言えば「その匂い」は分かる。

 当たり前だが数百メイト先の獣の匂いを風に乗せて運んだものから判断するのだ。届けられるまでに拡散されるそれから判断できるのだから身近の人間からの「血の匂い」が分からないわけがない。

 

 だが決してそれを楽しんでるわけではない。それは心の中できちんと弁明しておく。


フフフ



-*-



狩るものには特化することがあっても狩る方法は特化してはいけない


それが大森林で生き残る狩人の術だ。特定の獲物を狙うのはいいがそれだけに特化してしまうと予想外の巨獣に遭遇すると応用が効かず自らを窮地に立たせるためだ。

 

 俺ことアッシャーはカイルの指示のもと、新たな異法の使い方をするようになった。 俺たちは狩る方法こそ特化してないが異法の使用については一線を画していると思う。はっきり言えば源力の無駄遣いのような戦い方だ。


新しい北大門の先に広がる大森林はアマザの説明の通り起伏が激しく、正直ホーヅの足が心配になるほどだったのだが今のところは問題なく狩りを続けられている。


 今のところ本来は10番門近くでは奥にいるとされているハガネイノシシには遭遇していないが、まだ北大門の辺りは地形に慣れていないので場所を変えながら3級巨獣の種類を探っている状況だ。

 しかしジバシリなど狩り易いものほど、ここでは狩りにくい。なんせこの起伏だ一度散らばってしまうと追うだけで体力を消耗してしまう。

 他に適当な獲物が見つからないならジバシリでもってことで一度まとめて狩る事になったのだがまさか巣を作ってるコロニー30頭を半径20メイトでタミーとアマザに2メイトもの土壁で覆わせるとは思わなかった。しかも源力消費を多くしてなるべく源力が「尽きる」ように「すべてを硬化」させて、だ。

 

 そして俺たちにはその囲いに入ったままでジバシリの相手をさせられた。水流剣で首を斬る練習をするのか思ったらなんと70モイトあるジバシリをすっぽり余裕を持って覆う水球を作り、その中に閉じ込めて窒息させろというのである。

 

 ホーヅと半分ずつ手分けしても1人15頭、それもただ1頭ずつ水球で覆うのでなく、コントロールと一度に源力を放出する訓練を兼ねて一度に15頭まとめて水球を作れというのである。しかし単に水球に入れたところで閉じ込めることはできない、中で暴れて出てきたら窒息などさせられるわけもない。

 なので水の異法士の力である流体操作、あるものは水球の表面と中で激しい流れを起こして外に出られないように、あるものは水が動かないように固定して中で動くことができないようにしろというのである。


 はっきりいってこれらは俺たちには手が余る。5回の源力枯渇、充足を繰り返したところでおそらく出来なかっただろう。ジバシリが消耗して力尽きてくれたおかげで俺たちの狩りという名の「特訓」も終わりを告げた。


あいつはSだと思う。 アマザとタミーは調教されてしまうんじゃないだろうか? 真面目に心配する。



-*-



カイルとその師である医術士に源力を補う装具でありながら、使用しないときには俺の膝に源力を循環するものを作ってもらった。


おかげで膝外側にくくりつけている間は膝の中心から温かい感じがして鈍痛を感じることが少なくなった。 アマザと相談して決めたことではあるが起伏の激しい北大門近辺の地形は俺の膝にはよくないことはわかってる。 しかし自分の都合で狩り場を選ぶわけはいかない。 症状悪化が心配ではあったのだが新しい狩場に移る前にカイルに装具を作ってもらってよかった。感謝している。


俺にはカイルから指示があった。大森林に入る前に既に水球を展開しておくことだ。それ自体はいい、しかしその大きさが問題で防御に足る水の量を展開しておくべきとのことで直径2メイトもの水球を作っておくべきとのこと。


アッシャーに発破をかけた時にカイルは水を背負って森に入る、しかしボウガンを装備として捨てるのは現実的ではないので事前に水球として集めておくべきだと言っていたとは聞いたがまさかこんな質量をあらかじめ用意しておくとは。

 

 これほどの質量を支配したままで移動するのは中々つらいが、例え源力が尽きてもその場で水が落ちるだけなので源力を装具から充足させればすぐに元の水球に戻せる。苦労して巨大な水球を移動させているとカイルからなぜ水球の表面に水流を発生させないのかといってきた。つまり水球表面を回転させて水球を走らせろというのである。これで更に源力の消費が行われ、まさか大森林に入って巨獣と戦うまでに源力が尽きることになるとは思わなかった。

 

 カイルが俺に言ったのは土の壁でなく、更に奥の手としての水の壁だった。

もちろん水は抵抗があるので板状して縦に展開すれば巨獣の突進を止められるかも知れない。 しかし先月に遭遇したハガネイノシシのような巨躯で突進してこられたがいくら水の壁でもしぶきと共に消えるのでは?と意見した。

 カイルが言った返答は

「単なる四角い水の壁じゃない、丸い形の水の渦だ」

ということだった。

直径2メイトの水を丸く平たく、そしてそれを高速で円状に水流を起こせというのだ。できれば更に水を集めて水流の厚みを持たせろと。

 

 向かってきた巨獣を昏倒させること、更にハガネイノシシのような巨躯には土の異法での足止めでカイルが直接首を捻る代わりにこの水流壁で首を捻るらしいのだ。

 

 今月に入ったばかりでいきなりそれほどの水の量を高速水流として支配することはできてない。しかし他のメンバー同様に狩りと同時に行われる源力の大量消費による異法の特訓はこれまでの異法の使い方よりも巨獣に有効であると思われる。


すべては源力を補うことができるカイルが作った装具のおかげだ。

しかもそれだけでなく、狩りの成果も上々だ。

7月からの狩りを前にして目立たないように、とのことで全員一致していたのだがやはり大きな力を手に入れると使ってみたいもの。

今月に入ってからジバシリのような「小物」以外は毎日3頭の巨獣を買い取りに出している。 そのジバシリにしても一日に30頭と6人のメンバーではありえないような数を狩って帰ったのだが。


 そういえばあの卵はカイルの申し出で全員で分けて持って帰った。

あれほどの大きさの卵を1人2個ずつ持って帰ったのだがみんなは何を作ったのだろう?


ちなみにウチでは巨大な卵焼きとなったが家族が家族なのですぐに食べ終わってしまった。










ホーヅは他人に聞き取りやすく、ということから区切って喋るようになってますが心の中では流暢に喋ることにします。

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