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あっちとこっち  作者: rurihari
1 狩人
14/142

1-14 狩りの合間の休日 夕刻 酒場「宴」

 最近10番出口狩人詰所で耳目を集めるパーティーがある。

5人の異法士と1人のポーターで構成された6人組の狩人だ。年若いパーティーってのは珍しくはない。20歳にも満たない女がリーダーで最高年齢が19歳。そんなひよっこばかりのパーティーがジバシリを何頭か狩ったっていうなら極普通だ。

 ところがそのパーティーはたった7日の間に三級ばかりとはいえ、ハガネイノシシを合計3頭、バチカーを1頭を買い取りに出したそうなのだ。特にハガネイノシシは買い取りに出されたものが非常に損傷が少なく、そのため高値がついたことで話題になった。

 3級とは呼べないような巨体だがどうやって倒したのだろうか?

 俺はそのパーティーのリーダーと面識があるがとてもあいつや同じ程度の異法士5人であんなものが倒せるわけないと思っている。調べてみるとここ最近の7日間であることとから探ってみたところ、7日前にそのパーティにポーターが加わったことを知った。




 アマザの狩人パーティーが短期間で好成績を挙げたことで その内容を単なる新人のビギナーズラックと一笑に付すものもいたが、中にはパーティーに加えてもらって分け前に預かろうとするもの、新人ばかりなので恩着せがましく年長者として入ってリーダーとして乗っ取ろうと考えるものもいた。


 そんなのが一昨日あたりから接触してきていたのだがアマザは全く取り合わなかった。自分達の力がまだまだ浅いところで活動する程度の力しかないことを知っていたし、そもそも名を広めたハガネイノシシは狙ったわけでなく偶然なのだ。

 近づいてくる相手に辟易しながら息抜きにカイルとタミーを今月一杯は通うことになるであろう「宴」に誘う念話を送った。





 ホーヅ宅を後にして赤髪亭の自室に戻っていたカイルはこっちの筆記用具の不便さに悪戦苦闘しながら狩りの最中に拾えるかもしれない調達依頼がある素材を書き出していた。


 3時を回って4時近く、涼しくなるにはもう少し経って日没してからか。食堂部でお茶をもらおうと降りてくると食堂を入り口を締め切って油断していたのだろうか?シースルー・・・ではないが似たようなかなーり涼しげな格好のマリアさんと遭遇。まだ仕込み時間前だから休んでいたんだろうか?

ちょっとドギマギしながらご挨拶するとからかわれた。


「あら?わたしみたいなおばさんの体を見ても興奮するの?」


「いえいえ、まだまだお若いですよ♪ マダム」 


なんて言ってみたが


「うふふふっ♪ カイルもそんな冗談言えるのね?」


なんて返されてしまった。さすが余裕だ。


「最近の仕事が楽しいのかうまくいってるのか それとも余裕があるのか。前には絶対そんなことを言わなかったでしょうね。いい傾向だけれどあまり危ないことはしないでね?あの子が悲しむから。」


「アンジェのことですか?俺が怪我したら喜んでつついてきますよ、たぶん。」


「あの子はまだ子供なのよ。でももう15才だし、そろそろ大人になって欲しいものだけどねぇ。」


と意味ありげにこちらを見てくる。いやその格好でこっちを凝視されてもかなり反応に困るんですけど?

それにしても娘を案じる親か、完全放任だったどこぞの親とは大違いだな。


 お茶をもらって一服して今の活動場所の10番出口近隣で取れる、見かけたものにどんなものがあったかホーヅと念話で相談しようとしたらアマザから念話が入った。曰く、聞きたいことがあるから出て来い!だそうだ。今日も外で夕食を取るとアンジェに伝えてから「宴」に向かう。




 その後がこの状況


「なんでや?なんであんなに食べとるのにこんな細マッチョ?」


ウチのリーダーは出来上がっていらっしゃる。今日はヘッドロックをされていないが代わりに腰を掴まれている。


「ど~~う考えてもおかしいやろ?いくらなんでも4人前とか5人前とかホーヅより食べとんのにどこにその分の肉が付いとるゆうねん?その秘密を教えんかい!!」


聞きたいことってそれかよ?


「ごめんねカイル。なんかちょっと気に食わないことがあったから鬱憤を晴らしたいみたいでわたしも誘われたのよ。脱ぎだしたら私が止めるから適当に相手してやって。」


アマザと一緒に既にいたタミーは冷静だ。


「は~~~、まあいいけどね。あ、すいません今日は煮込み肉と果汁酒だけでいいです。」


「な~~に~~~?今日はそんだけなん?ウチが聞いたから抑えとんの?~~~」


「そもそも今日は狩りに出てないから腹も減ってないんだよ。昼はホーヅの家でご馳走になったしな。」


「ホーヅんとこに行っとったんかいな。圧倒されたんとちゃう。」


ようやく脇腹から手を離してくれて会話が続く。


「圧倒というかな。まあ確かに一家で横一列に並んで走ってきたら俺は逃げるわ。」


「あっはっはっは!確かに!」


ちょっと五月蝿いが周りのお客さん申し訳ない。 


するとこの前、この場所で初めて会い、その後デカ過ぎるハガネイノシシのオスを狩った時に指輪での移送に力を貸してもらったモトスが入ってきた。そして俺達の姿を確認すると一直線にやってくる。アマザはまた不機嫌そうな表情に変わった。


「この前はどうも」


「ああ構わんぜ。なんせ俺達もとんでもなく儲けさせてもらったからな。」


そういやパーティで買い取り金額を半分ずつにしたんだっけ。リーダーのアマザを始めてとしてほかのメンバーが異論を出さないからそれに追従してたんだが。


「ところでカイルっていうんだっけ?お前、医術士なんだろ?前にここでホーヅの傷を治してたよな?  

それにここ最近のアマザのパーティーの買取内容を職員を酔わせて調べてみた。

どう考えても指輪もなしに持って帰るには何度か往復しないと無理なはずだ。だが買い取り時に分けて運ぶために解体されていないときもあったな。ってことはあんなデカい獲物を一回で運べたってことは筋力の強化でもしたと思うんだが? 

つまり若いくせに医術と施術の両方が使えるんじゃねえのか?

まあ施術士は医術士から成ることが殆どだから二つの術士はいわば当然だろうが若さでってのは珍しい。なんせ施術士に成れたやつは年食ってるから外に出ねえから防衛課にしかいねぇからな。」


自分の推論を確認するように長々としゃべる。裏を取って俺のことを調べてきたのか。ヘッドハンティングか?俺が医術士でも施術士でもないことには気付いてないようだ。


「お前の爪は一般人と同じだが源力操作ができることは知ってるぜ。都市のカードシステムの担当課にねじ込んだことがあるらしいじゃねえか?システムに異常がでたことを認めるわけにもいかないから広まってはいないが課の中じゃお前はかなりの有名人だぜ?」


一般人ってことも知ってるのか。秘密にしたわけでもないが担当課に行ったことまで知ってるとは、自分のことを調べられるのはいい気はしない。


「そうかもしらんな。で?何か御用かな?」


敬語で話す気が失せた。なるべく早くお引取り願いたいのでさっさと用件を済ませて欲しいと苛立ってきた。


「物は相談だがよ? アマザんとこみたいな素人パーティーにいねえでこっちに入れや?な? そんでもっと奥に行ってハガネを狩ろうぜ?」


そういうとアマザが椅子を倒して立ち上がる。椅子が倒れて大きな音が出たがモトスは気にした風もなく続ける。


「ウチは成果主義を取ってるからな。リーダーの俺が頑張ってると認めれば働き次第でもっと金はやるぜぇ?ま、働かないやつにはやらんがな。」


立ち上がったアマザに対して、ほかのテーブルの椅子を持ってきて座る。


「いくら童顔の巨乳と元高級娼婦っていっても同じ女ばかり抱いても飽きるだろ?俺のとこなら福利厚生ってことで狩りが成功した日は娼館に連れていってやるぜ?」


そう聞いてアマザとタミーの二人を見るとアマザはモトスを睨み付け、タミーは何も反応がない。


その二人の反応を確認したうえでモトスは続ける。


「こいつは顔は童顔なのに乳と尻はデケーだろ?その体で奉仕してもらってんのか?ん?  でもまあ無理かぁ?アマザはこれまで何回かパーティーを移ってる原因だからな。」


「ふん?」


「狩人なんて明日死ぬこともあるからな?女は抱けるときに抱くってやつも多い。だから狩人同士で寝ることも珍しくねえ。ところがそこのいい年して未通女おぼこなヤツは全部断ったのさ。酔ったら誘うみたいに脱ぐクセしてよ?  それが原因で気まずくなって出ていくってわけさ。何度か繰り返したから有名になってなあ。自分でパーティー立ち上げたのも入れてくれるパーティーが無くなったからじゃねえのかぁ?」

 

 アマザは俯いて下を見ている。


「タミーはそのまんま元娼婦さ。あまりの指名希望者の多さに値段が同じはずの官営娼館はやむを得ずタミーだけ値段を別格にしたんだぜ?俺は長髪は好みじゃないから抱いてないがなぁ?いつでも抱けると思ってこともあるんだが一度買っておけばよかったぜ。 それが今じゃ、死ぬかも知れねえ狩人だ。もったいねえ、もったいねえ!。ひょっとすると今は男じゃなくて巨獣を誘ってイチモツを咥えてんじゃねぇか?」


そう言ったモトスに周りは下卑た笑いを浮かべるもの、露骨に眉を顰めるもの、我関せずを決め込んでいるものと反応は様々だ。

とりあえずはよかった。

全員が笑いを浮かべてたら狩人は今日で失業するところだった。


タミーに対する侮辱にアマザは口をかみ締め震えている


そのアマザに対しても


「そっちの童顔巨乳は父親に捨てられた家族だもんなあ?両親共に他都市からの移民って言ってるが嘘だぜ~~。確かに母親は蒼海都市からの移民だが父親はその時担当した移民課の職員さ。だが邪魔になって捨てられたんだよなあ~~?」


それを聞いて なぜ?といった感じで噛み締めていたアマザの口は開いている。


「父親のぬくもりも知らないから男の欲求にも答えられないんじゃねえの~。女の狩人なんてすぐに止めちまうんだから狩りが終わったら、大人しく股開きゃいいんだよ!どうせ孕んでも母親とガキじゃ都市から援助が出るだし。」


するとアマザがモトスに掴みかかろうとする。しかしモトスに掴もうとした手をあっさりと捻られて動きを封じらえる。


「ハッハー! これでも学校出る前から大森林に出てた異法士だぜ? 少なくともアマザみたいなミスはしねえさ。」


「ホーヅのことか?」


「お?知ってんのか?そうさ、ジバシリを狩ってこいと指示したところへオオヅノジカを誘い込んでやったのさ。狩りなんて確実なもんはないからな。アレくらいは対応してもらわなきゃ話にならんぜ。まあその前日に股開いてりゃ、ちゃんとジバシリを誘ってやったがな?」


俺はそれを聞いてモトスを睨んだ。


「アマザのせいでホーヅは傷を負った。ポンコツになったいらねぇ、だから俺達はパーティーからあいつを追放した。だがこれは当たり前だぜ?」


なるほどそうだろう。大森林での狩りで自分の命を怪我人に預けられるか?ということだ。一方とはいえ相手に信用が置けないならそれは仕方が無いかもしれない。その前の話はとても納得できないが。


「それより折角、異法士でポーター役も期待できたあいつがいなくなったこっちの損失の方がでかいわ。」


シモに関しては年輪都市こっちはその制度上、色々とユルいところがあるとは思うがこの男は人間として下種の部類だな。聞かれたくない個人情報を握って周りにギャラリーがいる中で出してくる辺り、情報の重要さは分かってるようだし、それを元に挑発してるな。


ああ、わかってる、わかってるよ。あいつは態とやってる。煽ってる。


アマザは獲物を持って帰るためにこんなヤツに頭を下げて買い取り額も半額になってまで指輪リングを頼んだのか!?他に指輪リングを持ってるやつはいなかったのかよ!?


「俺は源力操作が出来てもカードを変わらない欠陥医術士な上に、臆病者なんでね。同じく傷を持ってるやつといるほうが安心するんだ。今のパーティーを出るつもりはねぇよ。」


するとアマザは腕を捻られて伏せていた顔を上げてこちらを見る。その両目からは悔しさからなのか涙が伝っていた。


「おいおいおい!ノリが悪ぃなあ! お前だって金が欲しいから危険な大森林に出てるんだろうろぉ~~~、ならウチに来いよぉ~~~!」


アマザの腕を放して俺の肩に腕に回してくる。日本あっちの生活ではキレるっことは一度も経験したことがないがもう限界だ。腹の底というか胃の辺りなのか?上に上がってくる熱い圧力を感じてどうしようもなく暴れたい!


「この手をどけろ!そして出て行け!」


「あ~~?」


「退けと言ってる!」


「ほ~~~?モグリの医術士様はお偉いこって~~~、人様に命令できるほど偉いってか~~?」


「完全な挑発だな乗ってやるよ! 俺に勝てばお前のとこに入ってやる! 一ヶ月間ただ働きもしてやる!!」


「ほ~~~~? どうやる?」


うまい具合に挑発に乗ってきたことが予想通りなのか腹が立つにやけを顔に出しながら言ってくる。


「お前は異法をどれだけ使っても構わん。変わりに俺はこれを使う。」


そういって如意棍を見せる。


「条件はどっちかが負けを認めるまでだ!」


俺がそういうとモトスは真面目な顔になって言う。


「いいだろう! ただ働きの期間は一年だ!経たずに死んだらそれまでってことで勘弁してやる。ここにいるやつら全員が証人だ!」


「こっちからも条件だ。俺が勝ったらアマザとタミーに対する無礼を詫びろ!」


「はっ!! 医術に加えて施術が使えるかどうかしらんが そんなもんで異法士に勝てると思うなよ!!!そんな鉄の棒で俺に勝てたら詫びとして耳を落としてやるぜ! 修練場でやる。ほかのやつらも証人としてついて来い!」


ってことで俺は怒りのままにモトスの挑発に乗った。


二人を見るとアマザは泣き笑いのような顔をしていおり、タミーは驚いた顔をしている。




メンバーが顔を合わせた時にタミーが言ってた「悪目立ち」の件です


アマザが他のPTを連絡を取らなかったのは当然ほかのPTも狩りにでていたため、そして以前に同じPTにいたので休む日を知っていたためってことで。

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